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REVIEW

CD NAVIGATION[早川優]

第31回
「山本正之電影ワールド 逆転イッパツマン オリジナル・サウンドトラック」
タイムボカン・シリーズ完結! 記録的完全収録盤にボーナス・ディスクを加え、怒濤の全191曲収録!!


 昨年からリリースを続けてきた「山本正之電影ワールド」の「タイムボカン・シリーズ」編が、今回発売された『逆転イッパツマン』で完結を迎えた。『タイムボカン』のリリースから、丸1年が経過している。そもそも、「タイムボカン・シリーズ」の音楽が商品化されること自体、夢のまた夢だったのだから、こうしてシリーズの完結にたどり着けたことは、スタッフの末席に加えさせてもらった者として本当に嬉しい。
 テレビ・アニメとしての「タイムボカン・シリーズ」には、本作以降に『イタダキマン』と『タイムボカン2000 怪盗きらめきマン』が存在するが、両作とも単独のサントラ音楽集が本放映時にリリースされていることもあって、当初から本作『イッパツマン』でひとつの区切りをつけることが決定していた。
 2枚組のボリュームもシリーズ最終盤ということで、当初からの予定どおり。特典の方から紹介してしまうと、ボーナス・ディスクには、これまでキャパの関係で収録漏れしていた『タイムボカン』『ヤッターマン』等の未使用曲がすべて網羅されている他、『ヤットデタマン』のドンファンファン伯爵の登場時の歌など、山本正之による未収録の挿入歌も多数収められている。さらには上記のシリーズ第7作『イタダキマン』については、オリジナル音楽集未収録の楽曲がスペシャル・ボーナス扱いで収録されている。さらに、初回盤の限定特典としてシリーズ全作品の総音楽リストも封入されている。
 さて、『イッパツマン』の音楽である。シリーズを通してコミカルな三のセンでナレーションを務めた富山敬が、本来の持ち味である二枚目路線で主役を張った本作は、「待ちに待ってた出番が来たぜ」という前口上を紹介するまでもなく、ルーティーンの面白さで人気を高めてきたボカン・シリーズが、次なる地平を目指した大逆転を狙っての采配。背水の陣を敷くというほどではないにしろ、ある意味でタイムボカン・シリーズの総決算として挑んだ本気感は音楽にも満ちている。『ヤットデタマン』から顕著になったタツノコ単独ヒーロー路線と、ボカン・シリーズの趣向の合流は、音楽面でも本作で一気に頂点へ達している。ヒロイックな描写用の音楽の充実振りは壮観だ。主人公・豪速九の疾走、イッパツマンの基地・ホームベーサーの全貌、トランペットがヒロイックに歌う弾丸ヘッドへの乗り込みシーン、そして軽快な弾丸ブースターの発進テーマと、一連のシークエンスの要素ごとに別の楽曲があてがわれているのは圧巻である。もちろん、巨大ロボット・逆転王の合体からアクション・シーンに流れる定番の音楽群が聴きどころなのは言うまでもない。
 また、本作は仮題のひとつに『サラリーマン』というものが用意されていたように、タイムリース社とシャレコーベリース社とのタイムトラベルでサービスを提供する2社の鞘当て合戦は毎回の見せ場。音楽による両社の性格の描き分けは、今聴いても存分に楽しめる
 さて、番組のリアルタイムに発売された前作『ヤットデタマン』の音楽集アルバムでは、通常の主題歌・挿入歌に加え、組曲という形で劇中音楽を収録するという試みが行われた。これが音楽の製作状況に何らかの影響を及ぼしたことは想像に難くなく、本作の音楽は全曲ステレオで録音されている。当時は残念ながらサントラ音楽集はおろか、挿入歌集アルバムのリリースもなかった本作品ではあったが、24年の歳月を経て、ここに究極の形でサントラが世に送り出されることになったのである。いつでもサントラ盤を組めるよう、高品質な形で録音を済ませていた音楽スタッフの慧眼に感謝したい。
 山本正之とコンビで本作の音楽を作曲した神保正明は、イッパツマンが空を飛ぶスタイルから、自然と『スーパーマン』を意識したサウンド作りを行なった、と述懐している。奇しくもこの夏、『スーパーマンリターンズ』でスーパーマンが銀幕に復活を遂げた。その時期に音楽的に『スーパーマン』のフライング・サウンドの趣向を受け継いだ我が国のヒーロー音楽のひとつが甦るというのは愉快な偶然だ。
 はじめ「『山本正之電影ワールド』の『タイムボカン・シリーズ編』は完結」と書いた。すでにリリース情報がちらほら出ているように、「電影ワールド」は次なるシリーズへ突入する。次回リリースは『闘士ゴーディアン』! 筆者も音楽を単独で聴いてみて、そのカッコイイ出来映えに感動した。とにかく、山本正之の歌作りのひとつの源流となっているウェスタン・ミュージックがたっぷり染み込んだヒーロー音楽なのだ。発売は9月13日を予定。まずは『イッパツマン』でタイムボカン・シリーズを総まくりした上で、『ゴーディアン』到来の衝撃に備えてほしい!!
(文中敬称略。執筆/早川優)

■DATA
「山本正之電影ワールド 逆転イッパツマン オリジナル・サウンドトラック」
DISC 1 全98トラック 収録時間:74分37秒
DISC 2 全93トラック 収録時間:65分15秒
販売:キングレコード株式会社 発売元:株式会社ビー!スマイル
KICA 1409/10
2006年7月5日発売 定価4800円(税込)
[Amazon]

■執筆者から一言
 最近、新譜を聴く時間が充分に取れない。再発や発掘された過去の音源についつい先に手が伸びてしまうということもあるが、手持ちの昔の音源を聴く機会に押され、新作の方は開封待ちの山に積み上げられた状態に陥りがちだ。ついつい、昔の音楽はいいねぇという方向に走りがちな今日この頃。これも年をとってきた証拠なのかもしれない。それにしても、音楽がこれだけ豊富に周囲に溢れている現在、皆さんはどのように音楽を楽しまれているのだろう?
 

●第32回へ続く

(06.08.14)

 
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編集・著作:スタジオ雄  協力: スタイル
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