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REVIEW
CD NAVIGATION[早川優]

第10回
「山本正之 電影ワールド タイムボカン オリジナル・サウンドトラック」
待ちに待った待望のサントラが登場!!
〜30年お待たせしました!!〜

 いゃ〜本当にめでたい。「30年お待たせしました!!」の帯コピーを見て、「本当だよな!」と相槌を打ってしまうリスナーの方は少なくないと信じる。『タイムボカン』の正真正銘のサントラの初リリースが、ついに実現したのだから。
 これで、ピッコロが可愛く旋律を奏する時間旅行のマーチや、サックスが怪しくむせぶマージョの(そして、後の妖婦キャラたちへ受け継がれる)セクシー・テーマ、そして、時代劇の「必殺」サウンドばりのハードな音色がシビレるメカ戦の音楽まで、すべては君のものだ!!
 誰言うとなく、古くからのアニメ・ファンには“アニメ音楽の至宝”として共通認識されてきた作品群がある。その殿堂には『宇宙戦艦ヤマト』『ルパン三世』『海のトリトン』らが入っており、それらが何らかの形で商品化された後も『タイムボカン』の音楽は「欲しいけれど手に入らない」ものとして、リストの上位に名前を残し続けてきた。
 それが、ついに解禁! 拍手。
 アニメ・ファン外にも広く一般に浸透するタツノコプロの看板シリーズでありながら、『タイムボカン』の音楽だけを収めた純サントラはこれまで発売されなかった。『ボカン』が人気を博し、次作『ヤッターマン』が大ヒットを放ってシリーズが順調に数を重ねていった後も、音楽集の初めてリリースが実現したのは第7作『イタダキマン』になってからだった。
 『タイムボカン』がこれだけ有名な作品であり、シリーズ的にもすぐに三悪が歌う挿入歌をはじめとしていくつものメロディが思い浮かぶほどに音楽的でありながら、これまでサントラがリリースされなかった理由はいくつかある。ひとつには『タイムボカン』の音楽アイテムは当初、ワーナー・パイオニア(現・ワーナーミュージック・ジャパン)からリリースされ、『ヤッターマン』を機会に発売元がビクターに移ったという変則的な事情。また、このシリーズを通してアニメは山本正之という無二の才能を獲得したわけだが、そのユニークな魅力は圧倒的に自作自演の歌曲において発揮され、ヴォーカルの伴わない背景音楽は普段以上に縁の下の力持ちの立場へ回ることになった部分も否めない。大多数のファンにとって「タイムボカン シリーズ」の音楽は山本正之の歌とイコールで結ばれていた。
 が、それでも、山本正之の生み出す圧倒的に独創的なインストが、いかに僕らのハートをつかんでいたかは、ここでくだくだと繰り返し述べる必要はないだろう。さらに、この記念すべきシリーズ第1作『タイムボカン』では、歌曲の編曲を担当した武市昌久が山本と分担して劇中音楽の作曲を行っており、両者の音楽的な方向性の違いが音楽メニューをより豊かにする効果につながっている。乱暴に分けるなら、山本が歌心による作曲をする作家だとすれば、一方の武市はサウンド系の作家と言える。これは僕自身が当盤のライナーで書かせていただいたことと重複するのだが、山本のメロディが『タイムボカン』のソフトなSFコメディの部分を、武市のサウンドがちょっとハードなメカニック・アクションの部分を、それぞれ代弁してしたのだなあ、と今さらにして気づいた次第。
 『タイムボカン』を、そして後々のシリーズ作品の名場面を彩った音楽が満載のサントラ盤。初放映から30年目にして発売されたアニメ音楽の至宝を、生きててよかった〜としみじみ感じながら聴いてほしい!!(文中敬称略)
(執筆/早川 優)

■DATA
山本正之 電影ワールド タイムボカン オリジナル・サウンドトラック
全97トラック 収録時間:78分27秒
キングレコード(販売)・ビー!スマイル(発売) KICA 1377
2005年8月3日発売 定価2600円 (税込)
[Amazon]

■執筆者からの一言
 ついに発売に至った『タイムボカン』。筆者自身も山本・武市両氏の取材およびライナー原稿に関わらせていただいた。実は「タイムボカン シリーズ」のサントラ化企画については、別ルートを通して8年前に提出させていただいたことがあり、その時はあえなく撃沈。個人的にはそういう二重の意味で感慨深いリリースになった。
 改めて、今回のリリースを情熱をもって実現に導いた企画総括の貴日ワタリさん、発売元のビー!スマイル、販売元のキングレコード、リリースの許諾を下さったビクターエンタテインメントならびにワーナーミュージック・ジャパンの関係各位には感謝を捧げたい。何よりも「タイムボカン シリーズ」を1作品1枚のCDとしてサントラ・リリースしていこうという今回の企画に対して、全面的な協力をいただいている山本正之先生には最大限の御礼申し上げる。
 というわけで、本シリーズの次なるリリースは10月26日、もちろん『ヤッターマン』を予定。
 この度は、ヤッターマン2号に20数年来の愛を捧げる不肖・筆者が担当構成を命ぜられ、現在、作業の真っ最中である。誰もが鼻歌で歌えるゾロ・メカの行進曲、その大奮戦シーンのハチャメチャ・アクション曲、ガンちゃん&アイちゃんVSボヤッキー&トンズラーの等身大アクション場面を彩った「ヤッターマンロック」のアレンジ曲、そして、毎回のエンディングを優しく飾った山本節炸裂の「よかったね」テーマまで、貴方が気になっている『ヤッターマン』の音楽はすべて網羅されるはず!! 合わせて買ってねー(ハート)
 

●第11回へ続く

(05.08.29)

 
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