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REVIEW

CD NAVIGATION[早川優]

第25回
「エターナルエディション2006 大空魔竜ガイキング」
DVDBOXリリースに合わせて、完全音楽集を発売!


 今回は通常とはパターンを変えて、現在制作に関わっているアニメのサントラCDについてご紹介させていただきたい。6月のDVDBOXのリリースに合わせて、コロムビアミュージックエンタテインメントさんより発売される『大空魔竜ガイキング』である。東映アニメーションのオリジナル作品ということもあり、松本零士、永井豪と原作者寄りにラインナップが組まれた「ETERNAL EDITION」に組み込むこともできず(『ゲッターロボ』はなぜ出ていないのか、という話はここでは置いておく)、ほぞを噛むことしきりだった『ガイキング』だったが、新作『ガイキング LEGEND OF DAIKU-MARYU』の放映とDVD化の流れの中でついに完全版音楽集を作らせていただけることになった。
 『ガイキング』の世界観と音楽に当時とことん惚れ込み、菊池俊輔が生み出した超クールなBGMを口ずさみつつデラックス超合金の大空魔竜をいじり倒した筆者としては、『ガイキング』音楽がすべて解放される日が訪れることを心底から幸せに感じている。
 菊池俊輔の映像音楽の肝はあくまで歌曲メロディにあると考える筆者だが、歌曲とは趣向の異なる鋭角的フォルムの情景音楽(主に戦闘関連曲)をBGMラインナップにさり気なく盛り込むことに菊池サウンドの真骨頂があるのも事実。中でもこの『ガイキング』は、保富康午のロマンティシズムあふれる詩を得て美しく完成したヴォーカル曲と、メカニカル・アクション動画に最高のマッチングを見せたアクション系スコアとが、高レベルで共存している好例の1作といえるのではないか。コンバット・フォース出動のヒロイズムあふれるファンファーレ、暗黒ホラー四天王登場時のストリングスとギターのユニゾンによる異国感あふれるテーマ、そしてストラビンスキー風の変拍子を用いた冷徹なムードに満ちた戦闘音楽(後に『惑星ロボ ダンガードA』でも再び任務を得て活躍する)の数々……。SF作品ということを意識してか、オルガニスト・小島策朗演奏のコンボオルガンによる電子的音響を随所に織り込むアレンジをはじめ、中編成のオーケストラを背景音楽として最大限に鳴らすテクニックも最高潮である。大空魔竜の戦闘曲のリズム部でブラスとドラムを重ねて絶妙のアタック感を表現するあたりは、実に小気味よい。はたまた、それらのイケイケ曲の狭間に咲く一輪の花のごときリリカルな心情描写曲の可憐さよ。
 さて、『ガイキング』の音楽は、1982年の2月にコロムビアから「テレビオリジナルBGMコレクション」としてLPで発売されている。当時としては音楽が待望の商品化を果たしたことに喝采したものだったが、今から思えば初放映からたった6年後のことだったことに驚く。ライターの故・富沢雅彦の構成によるこのアルバムは、『ガイキング』の主要な音楽はほぼカバーされていたものの、正副主題歌のメロオケが未収録だったことはロボットアニメ小僧だった筆者にとっては大いに不満であり、TVサイズ主題歌がレコード用を編集したもので代用されていたのも残念だった。当時のコロムビアの担当ディレクターの心中には、番組の主題歌・挿入歌に関してはレコード用に発売された歌が最終的な完成型であり、モノラルのTVサイズ版やカラオケにメロディを重ねた簡易インストたる“メロオケ”は商品化すべきでない邪道な存在である、との考えがあっての構成だったということは後から知った。できうる限り高品質の音源をリリースしたいというディレクターの姿勢は理解できるが、やはり映像に流れた音楽であれば、演奏や音質に多少の問題があろうとも可能な限り無修正で商品化するのが、“サントラ魂”的視点からは正義であろう。このアルバムの高精密度はやはり高く、ここでの収録曲順で聴き慣れている方も多いことと思うが、現在ではANIMEX1200シリーズ中でCD化されている。
 上記のような事情もあり、今回の「エターナルエディション2006 大空魔竜ガイキング」はまったくの新構成とした。CD2枚組のキャパシティに、『ガイキング』のために録音された全背景音楽はもとより、歌曲についてもメロオケ・カラオケ・TVサイズと、現存するバリエーションを漏らさず収録する予定。もちろん、音質的にも最善の注意を払ってデジタル化を行っていただいている。東映ビデオのLDに音声特典があったよなぁ、などと不埒なダークサイド的思考に陥ることなく、すべての菊池サウンド・ファン、スーパーロボット愛好者、サントラ・コレクターの諸氏に置かれては、是非ともご購入いただきたく切に願っている。
 思い返してみると、1982年に『ガイキング』のLPが発売された日って、『ゲッターロボ』のBGMコレクションも同時発売だったのね……。菊池ミュージックのゴールド・ラッシュだったわけだ。やはり『ゲッター』完全版サントラも1日も早く欲しいっ!!
(文中敬称略。執筆/早川優)

■DATA
「エターナルエディション2006 大空魔竜ガイキング」(CD2枚組)
発売元 コロムビアミュージックエンタテインメント
2006年6月21日発売予定 定価3990円(税込)

■執筆者から一言
 同時にリリースに関与させていただいているのが、今月末についに映像ソフト化が実現する東宝特撮「緯度0大作戦」のサウンドトラック。やはりDVDに合わせてサントラの再発企画が通った。音楽は逝去から早くも2ヶ月近くが経過する伊福部昭の手によるもの。日米合作ということで製作がスタートした同作品は、全編英語で撮影から仕上げまでが行われ、これを短縮編集・日本語に吹替えたプリントが国内で劇場公開された。そういった経緯もあり、コレクターズ・ボックス仕様のDVDでは、国際版(商品では海外版と呼称、米国ではこれを別途に短縮編集されたものが公開され、海賊版ソフトも存在しているため紛らわしい)、日本公開版、東宝チャンピオンまつり用短縮版の3バージョンを収録している。CDの方もこれにあやかって2枚組とし、ディスク1には国際版の編集で録音されたオリジナル音楽を、ディスク2には短縮された形に合わせて編集を施された細工済み音楽を、それぞれ中心に収録する形になった。こちらは、東宝ミュージックのネットショップでの通販のみで5月15日に発売予定(近々、予約受付)。
 

●第26回へ続く

(06.04.10)

 
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