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REVIEW
CD NAVIGATION[早川優]

第4回 
「NHKアニメーション『ツバサ・クロニクル』ORIGINAL SOUNDTRACK Future Soundscape I」
監督・真下耕一×音楽・梶浦由記、 最高のコラボによる最新作が登場!


▲初回限定盤はワイドブックケース仕様
 意識したわけではないが、前回に続いて今回も現在の日本のアニメ・シーンを代表する女性作曲家の作品をご紹介する運びとなった。NHKで放映中の『ツバサ・クロニクル』のサウンドトラック第1弾である。CLAMPが生み出したキャラクターたちが役割を変えて登場する人気コミック「ツバサ ―RESERVoir CHRoNiCLE―」をアニメ化した本作の音楽担当は梶浦由記。本サイトをご覧の皆さんには特別に紹介する必要はないと思われるが、簡単におさらいしておくと、梶浦は90年代初頭にユニットSee-Sawとしてプロ・デビュー、ソロに転じた後はゲームやアニメに楽曲を提供。やがてSee-Sawとしての活動も再開、『EAT-MAN』『NOIR』の音楽や、『機動戦士ガンダムSEED』の挿入歌等の作品を通してアニメ・ファンから高い支持を集める。つい先日にはアメリカ先行で初のソロ名義のアルバム「Fiction」をリリース。今年4月の新番でも、本作の他、『エレメンタルジェレイド』(音楽)、『LOVELESS』(歌曲)を担当。まさに絶好調の極みという印象がある。
 その梶原の最新のサントラ・リリースが本作。前述の『NOIR』をはじめ、『.hack//SIGN』『MADLAX』で名コンビぶりを発揮した真下耕一監督作品ということで期待は高まる。両者がこれまで手がけた3作は音楽と映像の抜群のコンビネーションにより、作品はもとよりサントラ・アルバムとしても高評価を得てきた。
 今回も梶原ならではのアプローチで、失われた記憶(こころ)の羽根を諸世界に捜し求めるサクラたちの物語が彩られる。サウンド・メイキング的には、豊かな生楽器の音色を主体にグルーヴ感の創出のためのシンセやリズム楽器を随時取り入れる手法が取られている。梶浦によるスコアでメインテーマとなるのは、アルバム3曲目の「believe」。一度耳にしたら忘れられない印象的なメロディ・ラインを弦楽器群が奏で、シンセの音色がファンタジックに浮揚感を演出する。異世界の描写音楽ではシタールなどの民族楽器が地域を越えて汎アジア的な合奏を響かせ、二ホン国の忍者・黒鋼や次元の魔女・侑子のテーマとなる「black sword」「witch」では和楽的な響きにリズム隊を加え、雅楽ロックとでも呼称できそうなユニークな音楽空間を展開する。
 梶原の音楽はアーティスト系の作曲家らしく、それぞれのナンバーが極めて歌心に満ちていることに特徴がある。ハリウッドの映画音楽のトレンドに影響され、とかく大掛かりなオーケストラ・サウンドが最善と持てはやされ、音響的・音色面に偏向した音楽ばかりが耳につく昨今のアニメ音楽にあって、筋の通った旋律を重視する梶原の音楽が多くのファンの心を掴んでいるのは、当然の流れだろう。
 アルバムにはそれらインスト曲の他、梶浦由記の最新ソロ・プロジェクト“FictionJunction”が16歳の新人歌手・織田かおりを迎えて録音した「tsubasa」や、劇団四季出身のシンガー・伊東恵里をフィーチャーした挿入歌を4曲収録。さらに、オープニング曲「BLAZE」、エンディング曲「ループ」もそれぞれTVサイズにて収録というサービスぶり。初回限定盤はサクラの記憶の羽根ペン封入、ワイドブックケース仕様とのこと。
 なお、アルバム・タイトルにある「Soundscape」は、Sound(音響)とScape(羽根)を続けてLandscape(景色)と韻を踏んだ造語のようだが、唯一無二の梶浦の音楽世界を的確に表現しているように思う。
(執筆/早川 優)

■DATA
NHKアニメーション『ツバサ・クロニクル』ORIGINAL SOUNDTRACK Future Soundscape I
全20トラック 収録時間:55分3秒

初回限定盤(10000セット完全限定生産)
ビクターエンタテインメント VICL-137
定価2830円(税込)
2005年7月6日発売
[Amazon]

通常盤
ビクターエンタテインメント VICL-61661
定価2625円(税込)
2005年7月6日発売
[Amazon]

■執筆者からの一言
 米国のTV映画「ナイトライダー」(KNIGHT RIDER)の公式サントラが発売になった。あの、つとに楽曲な“テケテケ”テーマ音楽を、24トラックのマルチ・マスター・テープからステレオでCD用にトラック・ダウン。さらに、パイロット版を含めて、計5話分のエピソード用楽曲(米国のTVシリーズは基本的に音楽を1話ごとに作曲・録音する)からのセレクションも収録されているのだ。嬉しいねぇ。
 今回のサントラは、その有名なテーマ音楽を手掛けたスチュ・フィリップス(「宇宙空母ギャラクティカ」等)の作曲作品を集めたもの。実は「ナイトライダー」の劇中音楽の作曲家には他にドン・ピークという人もいて、彼が担当したエピソードの音楽は「ナイトライダー」ファンの米国のコンベンション“KNIGHT CON”などで販売される同人CDとして複数枚リリースされている。それとは被らない形で公式盤を出すあたり、絶妙な間隙狙い感があってお見事。というのも発売元はアメリカのサントラ専門誌「Film Score Monthly」(月刊でサントラの専門誌が成立しているあたりもスゴイ)で、この版元は毎月ゴールデンとシルバーのふたつの時代に区分されたサントラをそれぞれ1タイトル、計2枚を継続してリリースしている。こうした状況を見るにつけ、日本でも未発売のサントラを定期的に発売できるようなシステムは作れないものか、と真剣に考えてしまう。例えば、今月は山下毅雄の『佐武と市捕物控』の完全盤と菊池俊輔の「ザ・ウーマン」の復刻盤、来月は越部信義の『ジェッターマルス』に団伊玖磨の『太平洋奇跡の作戦 キスカ』です……なんてラインナップが発表されていったら楽しいと思うのは筆者だけ?
 妄想はさて置いて、今回の「ナイトライダー」。繰り返し流れる単純明快なテーマ音楽というのは、洋の東西を問わずファンに訴えかけるものがあることを再確認。思えば、その昔、キングレコードで大月俊倫プロデューサーの企画で「ナイトライダー」と「エアーウルフ」のカバー音楽集を作るお手伝いをさせていただいてから早18年。「サンダーバード」のTVサントラの発売を30年以上待ったのに較べれば可愛いものだが、サントラ・ファンたるもの日頃から健康に気をつけて長生きしなければならないとの思いを、また実感した今日この頃であった。
 

●第5回へ続く

(05.06.30)

 
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