もっとアニメを観よう2011

第17回 本郷みつるが選んだ
「自分のルーツであり、お気に入りの10本」

 今回のセレクトは今考える僕のアニメのルーツであり、お気に入りで、比較的今まで出てきた作品と被らないものを選んでみました。順番は年代順です。

●『狼とシンデレラ(swingshift cinderella)』(1945)

赤ずきんの狼がひょんな事からシンデレラの世界に入りこむが、魔法使いのおばあさんが狼にひと目ぼれして、というあらすじを説明するのもバカバカしいお話で、一番古いアニメですが、一番ぶっ飛んでいます。子供の特にこれを観ていたのは後々への影響が大だったと思います(笑)。他に『田舎狼と都会狼(little rural riding hood)』『おかしな赤頭巾(Red Hot Riding Hood)』も大体同じ中身で同じくらい好きです。

●『わんぱく王子の大蛇退治』(1963)

小学3年生の時にこの映画を観ていなかったら、今の仕事はしていなかったはずです。日本初の作画監督システムで作られた映画で、メインキャラクターもデザインしたアニメーター・森やすじの仕事が素晴らしいですし、それを支えた当時の若きスタッフ達の熱気が今観てもまったく色あせません。

●『王様の剣』(1963)

自分はリバイバルで見たのだと思いますが、ディズニーが大好きになりました。アーサー王の物語で、僕が好きだったのは少年が魔法修行でリスになったら雌のリスが言い寄ってくるところです(笑)。

●『赤胴鈴之助』(1972)

Aプロ作品は『ど根性ガエル』『ギャートルズ』『ガンバの冒険』と、どれも好きなのですが、これは有名な少年活劇のアニメ化で普通にチャンバラアニメが堪能できます。出崎統、宮崎駿、近藤喜文が各話のスタッフとしていい仕事をしています。

●『まんが日本昔ばなし』(1975〜1994)

約20年に渡って作られた作品で、1本ごとにキャラクターや美術が違っていて、アニメーターの自由度が大きいのが魅力でした。特に子供の時は大好きでした。ちなみに僕が最初にやった演出の仕事はこの作品の撮出しでした。

●『母をたずねて三千里』(1976)

演出の仕事をして大分たちましたが、もし演出志望の人がいたら、とりあえずこれは観とけ! と言いたいです。高畑勲演出、宮崎駿レイアウト、小田部羊一作画監督で全52本。凄いです。普通に何気なく、面白い。僕が特に好きなのは「ひこう船のとぶ日」。

●『ルパン三世 カリオストロの城』(1979)

今さら説明の必要はありませんが、東京にアニメの仕事をしようと思い出てきて新聞奨学生をしていた僕をひと時、幸せにしてくれました。そしてそのきっかけは前作の『未来少年コナン』だったりして……。今見ても、本当に惹きこまれます。

●『グランパ すてきなおじいちゃん』(1989)

ジョン・バーニンガムの絵本をアニメにしたものです。監督はダイアン・ジャクソン。27分の作品です。絵本の色彩がそのまま動くのが気持ちいいです。

●『METAL SKIN PANIC MADOX-01』(1988)

実は、SFが好きでパワード・スーツが大好きな自分です。当時のOVAは若いスタッフがそれまでにないアニメを作り始めていたと思います。今作がその象徴的な作品だと思います。メカと美少女は男の夢です。

●『NARUTO』(2002〜)

最近のTVアニメに対する興味が薄れがちな僕ですが、若林厚史、演出・絵コンテ・作画監督回だけは要チェックをしています(30話、71話、133話、387話)。とりあえず、動いとけっ! という内容には圧倒されます。


番外編・自分の関わった奴もオマケで(笑)

●『KAKKUN CAFE』(1984)

実は僕の初めての演出作がこの映画の中の2作だったりします。ビデオになった時には再編集版だったり、劇場公開時に一番面白かった一本がなかったりする、幻の作品なのでここに記しておきます。

●『映画 クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』(1996)

4年半やった『クレヨンしんちゃん』の自分の集大成の仕事だったのではと思いますし、何もないところからお話やキャラ配置を作ったのも楽しかったし、苦しかったり、思い出深い仕事です。

●『星方武侠 OUTLAW STAR.』(1998)

SFのTVシリーズと勢いこんで取り組みました。アニメーターの齋藤卓也、大久保宏、小野学、山口晋が本当に八面六臂の活躍でした。今ではその内2人が監督になり、商売敵に(笑)。オススメは20話「猫と少女と宇宙船」監督、脚本、絵コンテ、演出をやっています。

●『おまえうまそうだな』(2010)

これは何の関係もありませんが、僕が以前所属していた亜細亜堂が現場作業を受けて作った作品で監督、作画監督が知り合いです。だから余計に辛口批評になるのですが、面白かった! アニメのよさが堪能できます。

●PROFILE
本郷みつる アニメーション演出者。代表作は『クレヨンしんちゃん』『The Spirit of Wonder チャイナさんの憂鬱』『カスミン』『IGPX』『デルトラクエスト』『毎日かあさん』など多数。WEBアニメスタイルにてコラム「ふかかいクロネコのラクガキ帳」も連載中。ブログ「本郷みつる通信」も運営。Twitterアカウントは @megatenhongo

(10.12.24)