もっとアニメを観よう2011

第15回 平松禎史が選んだ
「演出のわかるアニメーターになるためのアニメ5本」

5本しかないですが、技術的な関心や影響で選んでみました。

●『いじわる家族といたずらドッグ』

ブラッド・バード脚本・演出。キャラデザインはティム・バートン。前回も挙げたと思う。キャラクターのデフォルメされた表情や動きが楽しい。演出と作画、作画的ボリュームのバランス感覚が絶妙。犬のキャラはその表情芝居などが『レミーのおいしいレストラン』にも引き継がれてると思う。 (編註:DVD-BOX「世にも不思議なアメージング・ストーリー 2ndシーズン」所収。収録タイトルは「ワンワン騒動記」)

●『レミーのおいしいレストラン』

ブラッド・バード監督。キャラクターと舞台の生かし方が巧い。例えば殺陣のシーンなどで安直に「流背」にしてしまうのではなく、キャラと場所の個性を生かして戦いを表現したら面白いはず……ということを、このアニメでは厨房を舞台に軽妙にやっている。レミーが下水道からパリを一望する屋根の上へと駆け上がっていくシーンが特に好き。

●『シャーロットのおくりもの』

ハンナ・バーベラ・プロダクション。自分もよく覚えていないんだけど心のどこかに引っかかってる。もう一度観たい映画。

●『未来少年コナン』

宮崎駿監督。若い人は意外と観てないかも……? ということで。『カリ城』同様、少ない時間(手数)でいかに効果的に見せるか? の実例。

●『ルパン三世 カリオストロの城』

宮崎駿監督。おそらくボクが「作画」に目覚めた最初の作品。中学後半からパラパラマンガに明け暮れるのですが、これ観て爆発的に仕事量が増えました。フィアット500が走りまわる、屋根を駆け下りる一連のカット、オリジナルなアクション等々。それまで棒人間のアクションやヤマトの好きなシーン再現ばかりだった自分にキャラクターを動かす楽しみを教えてくれた作品。


番外(アニメじゃないんですが……)

●「鳥」

アルフレッド・ヒッチコック監督。アニメだと思って観ると別な意味でおもしろい。絵コンテを描いて綿密に計算し、現場では素材撮り的な演出を断行してたヒッチコックの作品は、アニメ的演出が多い(とボクが勝手に思ってる)んですが、この映画は他のと比較しても非常にアニメっぽい。おそらく「鳥」との絡みで特撮的な演出を要求されたからだと思われます。BG・BOOK・セル・鳥素材とレイヤー構造に分解できる個所が多々あります。しかも、鳥がCGで処理できるなら、それほど枚数かかってません(笑)。無駄がないんですね。

●PROFILE
平松禎史 アニメーター、イラストレーター、演出家。『フリクリ』『天元突破 グレンラガン』など、ガイナックス作品を中心に活動。代表作にキャラクターデザインを手がけた『彼氏彼女の事情』『アベノ橋魔法☆商店街』『Re:キューティーハニー』などがある。公式サイトは Tempo Primo 。Twitterのアカウントは @Hiramatz

(10.12.21)