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アニメの作画を語ろう
animator interview
 和田高明(2)
小黒 話は前後しますけど、『姫ちゃんのリボン』で思い出深い話はありますか。
和田 『姫ちゃん』はバレンタインの話が(19話「チョコレートがいっぱい」)。
小黒 やはりそうなりますか。
和田 「TVアニメって、こういうのできるんだ」とか思ったんですよ。
小黒 それはドラマ的な事ですか。
和田 まあ、ドラマ的なものですね。結構、普通にこう、人の気持ちの流れを拾っていくみたいなのができてたかなって。
小黒 それは桜井さんの手柄ですね。
和田 桜井さんの手柄だと思いますよ。桜井さん、ああ見えてロマンチストですから(笑)。
小黒 いや、あの頃はバッチリ、ロマンチストですよ。
和田 そうそう。まだ、ダバ絵もなかったしね。
小黒 非常に乙女チックなものを作っていましたよね。
和田 そうそう。
小黒 桜井さんはその後の『ナースエンジェル りりかSOS』でもバレンタインの話をやって、「バレンタイン演出家」になるわけですけね。
和田 「また、バレンタインが回ってきたね」とかよく話してたんですけどね。「今年もやってきました。俺達は、チョコレートはもらわないけどな」「いいんだよ、人を楽しませるのが仕事なんだから」とか話してた(笑)。
小黒 じゃあ、引き続き『りりか』の話に移りましょう。『りりか』で名前が出ているのは3本みたいですが。実際にこれだけなんですか。
和田 『りりか』は紆余曲折がいろいろあったんです。大地さんが描いた『りりか』1話のコンテで、表紙の作画(監督)のところに「和田」って書いてあったんですよ。大地さんに訊いたら「いや、和田君、やってもらうから」とか言われて。だけど、会社の都合で他の作品をやる事になったんですよ。後で1話のコンテを見たら「和田」のところにバツがしてあった。「終わったら『りりか』に行きますから」と言っていたんだけど、『るろう(に剣心)』の1話をやったり、『チャチャ』のビデオがあったりして、参加がどんどん遅れて。桜井さんから「裏切り者」と言われたりして。いや、裏切ったわけじゃないんだけど(笑)。
小黒 他の仕事が一段落して、ようやく24話に参加したわけですね。
和田 そうそう。大地さんの初監督ですよね。大地さんも楽しそうにやっていて、参加したかったんだけど、できずに横で見ていたみたいな感じなんです。布とか一所懸命切って「これ、エンディングに使うから」とか言っていて、楽しそうで。(自分が)「もう『るろう』はやらないから」と言った時に、制作の人に悲しそうな顔で見られたのは、いまだに忘れないですけど(笑)。
小黒 『りりか』でのお仕事はファンにとっては印象的なお仕事になってると思いますが。
和田 そういう事もあって、前半に参加できなかった分を取り返さなきゃみたいな感じがあったからね。「ゴメン、遅れて」みたいな。
小黒 最初が24話ですね。
和田 24話って、何ですっけ?
小黒 デューイの話ですね。(「デューイ新なる輝き」)
和田 あの辺はなんか、コウモリをいっぱい描かされたような気が。今はどうだから知らないけど、ぎゃろっぷの周りって、コウモリが多くて(笑)。
一同 (笑)。
和田 飛ぶんだよ、夕方からバタバタと。で、外に行って観察したんです。「ああ、コウモリって、こう飛ぶんだ。なるほど」とかって、そんな感じ。自分としては結構リアルに描けたかなあと思って(笑)。
小黒 31話(「花林が渡したチョコレート」)は、終盤をまとめてやってるんじゃないかと思うんですが。
和田 終盤は音地さんと2人で、駅に着いてからは音地さんだと思うんですけどね。(戦闘シーンが終わって)バレンタインデー当日、りりかがウキウキ登校しているあたりから、花林が「ちょっと行ってくる」と言って、自転車乗って走り出すぐらいまでをやったのかな。……あ、そうだ、思い出した。これで「あ、チョコレート。義理チョコ、義理チョコ」とか言いながら楽しく描いてる時にね、大地さんがやってきて、「ほら、最終話のコンテ。(りりかが)死んじゃうよ〜」とかって言われて。「いや、ちょっと待ってくださいよ」と。
一同 (笑)。
和田 「すいません。今、義理チョコとかって言ってる、この娘、死ぬんですか?」「うん」とかね(笑)。ちょっと話は飛ぶけど、次に『りりか』の最終話で「あ、死んじゃうんだー」とか思いながら描いてると、また大地さんがコンテを持ってきて、「ほら、『こどちゃ(こどものおもちゃ)』の1話。楽しいよ〜」とかって。で、「このオヤジは、勝手な事ばっかり言いやがって」と、ちょっと思いましたけどね(笑)。
小黒 それはひどい(苦笑)。31話は終盤だけですか。
和田 31話は終盤だけだと思います。あの話数は巧い人が何人も参加してましたから。
小黒 途中のバトルなんか、どうでもいい話ですよね。
和田 桜井さんがコンテで、相当端折ってましたよね。敵の正体が分かるところも「ダークジョーカーね!」と言うと「バレたか」って、早っ! ……そんな感じでしたね。
小黒 傑作と言われる1本ですよ。
和田 31話は特に音楽がついてからね、面白くなったなった感じがあったから。音楽のつけ方が面白かったですよね。ちょうどいい感じで曲が始まるみたいな。音楽のつけ方によって作品の印象がガラッと変わるっていうのを知ったのが『りりか』あたりからなんです。大地さんも桜井さんも音楽にこだわりだしたような気がする。
小黒 次が、最終回ですね。これが初作監という事になるんでしょうか。
和田 これもですね、なぜ私が作監をやってるかっていうとね、他の人はみんな『こどちゃ』に行っちゃったから。
小黒 それはないでしょ。
和田 はじめさんは『こどちゃ』の1話に入ってて。音地さんも、もう『こどちゃ』で忙しくなっていて。「誰もいないんだよ、和田君」(ポンと肩を叩く仕草)とかって。「分かったッスよ。俺がやりゃあいいんでしょ」みたいな、そんな感じだったんです。
小黒 いやいや。でも、入魂の作画監督で。
和田 入魂の、というか、そもそも大地さんがコンテを持ってきて、「ほら、面白いよ」とか言って見せられたんです。で、その後に今度は曲持ってきたんですよ。「これ、最終回用の曲。聴いて」とかって。そこまでやられちゃったらやるしかないよねって。「しょうがないですね。一所懸命やりますから!」って。実際には話がちょっと端折られてて。もう少し話が続くハズだったんですよ。
小黒 シリーズが短縮されたんですね。
和田 短くなっちゃったので、大地さんが無理矢理最後の話をまとめたというか。ホントは2話ぐらいに分けたい話だったらしいんですけど、それを無理矢理1話に。コンテを見れば分かるけど、欠番がいっぱいあるんですよ。そんな感じなので、結構内容的にも濃ゆかったのかな。
小黒 その後の『こどものおもちゃ』は30話までローテーションで作監ですね。
和田 この辺も作監がいないからやっていたような。
小黒 いやいや。
和田 いや、『こどちゃ』はホントに作画スタッフが足りなかったんですよ。「明日、作打ちですが、原画いないんです」と制作が言った時はどうしてくれようかと。何話だったかな……17話か。これは全部海外に原画を出しているはずなんです。原画がいないので、全部慣れない韓国のスタジオに原画を出すという話をしているのを聞いて、「ちょっと待てよ。これは大事な話だろ。だったら、俺がやる」みたいな。確かそんな流れだったんです。本当は15話か16話をやるはずだったんですけど。この話数は「1人で(1話分の)原画描けるんだ」と思ったなあ(笑)。
小黒 『こどちゃ』は途中から作監でなくなりますね。
和田 うん。原作で一番盛り上がるところが終わったというのもあるし、ずっと同じような感じで仕事してて、なんか変わったところに行きたいと思い始めたのかな。この頃、『(機動戦艦)ナデシコ』とか、『ぶっとび!!(CPU)』とかが入り始めたので。
小黒 この頃から、OLMの仕事が増えますよね。
和田 ちょうど、ぎゃろっぷからOLMに人がいっぱい移って。そのつながりができたので。ちょっと違う方向もやりたいかなと思ったんですよ。17話を1人で1本やって、逆に自分の物足りない部分が見えたかな、みたいな感じで。少し幅を広げないとマズイんでないの、みたいな気がしてきた。ちょうど『ナデシコ』と『ぶっとび』は、それまでやってきたものと全然方向性が違っていたので、そっちの方を手伝い始めた感じなんですけども。
小黒 『ナデシコ』は1回だけですか。
和田 TVシリーズは1本だけかな、桜井さんがやるからという事で。
小黒 19話「明日の「艦長」は君だ!」ですよね。ホウメイガールズは描いてないですか。
和田 ウィンドウが(プロスペクターの)頭に突き刺さったりするところを描きました。
小黒 ああ、あそこか!
和田 コンテにはね、すぐ目の前ウィンドウが現れるって書いてあったんですよ。「桜井さん、頭に刺していい?」と訊いたら「いいよ」って言うから、「じゃあ、刺すね」みたいな。
小黒 歌って踊ってのところはやってないんですか。
和田 やってますよ。ホウメイガールズですよね。あれもカッティングの直前に、やっと曲が上がってきたので、大慌てで描いた憶えが。
小黒 あのキッチンでみんなが踊っているところですよね。
和田 食堂のところは全部やりました(編注:詳述すると彼の担当は、ヒカルのアップ「でさでさ……」から、ホウメイガールズを経て、前述のプロスペクターのカットまで。詳しくはDVD6巻シークエンスチャプター(エ)〜(カ)の解説を参照)。
小黒 あ、なるほど。謎が解けました! あの賑やかなシーンは誰がやっているんだろうとずっと気になっていたんですよ。OLMの仕事の方はいかがですか。その後ずっと続きますが。
和田 やっぱりね、千羽(由利子)さんが凄いと思った。千羽さんが面白かったからね、ずっとOLMの仕事をやっていたというのもある。
小黒 面白いって、それは人柄ですか?
和田 人柄も面白いですよ。チュパカプラについて、1時間話せる人は滅多にいない(笑)。
小黒 え、なんですか。
和田 チュパカプラっているじゃないですか。ブラジルだか、メキシコだかの未確認生物が。チュパカプラの話を始めたらね、「いるんですって!」とか言い出して(笑)。机の中にチュパカプラとかネッシーの玩具がいっぱい入っててね。面白い人だなあと思った。最初に『ぶっとび』で会った時はね、俯いててね、大人しい人だなあと思ったんだけどね。後で絵を見たら、「どこが大人しいんだ!」という絵を描いてたからね。
小黒 あれって、千羽さんの初キャラデに近い作品ですよね。共同でのデザインはそれまでもあったけれど。
和田 らしいですね。その時、音地さんと、ぎゃろっぷの時永(宣幸)さんが一緒に作打ちしたんですけど、後で3人全員で「あの人、面白いよね」という事で一致したから、やっぱり面白い人なんだろうと思います。
小黒 そうですね。僕も面白い人だと思います(編注:千羽さんの素晴らしいお人柄については、「もっとアニメを観よう」の「結城信輝・千羽由利子対談」でも垣間見ることができるぞ)。
和田 うん(笑)。
小黒 『ぶっとび!!CPU』って意外と話題になりませんけど、なかなか作画濃いですよね。
和田 そうそう。作ってる面子は、盛り上がってたんですよ。
小黒 「ここでこんなに動かさなくても」みたいな。
和田 担当制作がぎゃろっぷにいた人で、その伝手で知ってる人が集まっていたので、「いつものノリでやっちゃえ!」みたいな。はじめさんも参加してたしね。
小黒 この頃から仕事の仕方が変わっていきますね。
和田 この時期はね、とにかく、いろんな仕事をやりたいっていう感じでね。えらい手を広げてたから……。
小黒 『(セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!)マサルさん』は?
和田 『マサルさん』はやっぱり大地さんつながりだから、それまでの仕事の延長という感じですよね。『マサルさん』に関しては、撮出しと原画の作業は同時にできないっていうのを身をもって知ったというか(笑)。いや、スケジュールがキツくてね、撮出ししながら原画描かなきゃいけなかったんだよね。撮影さんに「もう撮影終わっちゃったよ、次の素材送って」と言われて「はいはい、今作りますから」とか。そうすると制作さんに「明日送る分がないんですが」言われて、「今、原画描くから」とか。……死ぬかと思った(笑)。この頃だと『ToHeart』がね、自分の中では新鮮だった。『ToHeart』って、日常芝居だけで話を作ってたでしょ。
小黒 はい。
和田 こういうやり方があるんだと思った。それまでやってきた、大地さんとか桜井さんの作品は、バーンと盛り上がる時は盛り上げるみたいな感じだったんだけど、『ToHeart』は非常に低温でずっと続いていく感じで。それが面白かったですけどね。
小黒 1話とか相当濃い仕事をしてるんじゃないかと思うんですけど。
和田 いや、1話はそんなにはやってないですよ。冒頭のところをやっただけですから。
小黒 2人が登校するところですよね。
和田 そうそう。『ToHeart』では4話だっけ、格闘がある話。あの時に、やっぱり馬越(嘉彦)さんは上手いよね、と思いましたね。。
小黒 やっぱり、4話の最後の試合の作画は馬越さんですか。
和田 馬越さんと増永(計介)さんがやっててね。原画を見たけど、「やっぱり上手いよね」と思った。私はその前の、特訓してるところとか、打ち合わせしたりしてるところをネチネチと描いて。
小黒 なるほど。
和田 『ToHeart』の時期は、『アキハバラ電脳組』と『十兵衛ちゃん(―ラブリー眼帯の秘密―)』が重なってて。結構キツかったんですよ。だから三軒茶屋と国分寺と阿佐ヶ谷を行ったり来たり(笑)。午前中に三軒茶屋行って、途中で阿佐ヶ谷に寄って、夜中に国分寺に行くとかね、無茶な事をしてたので、ひとつひとつの仕事はそんなに大量にやってない。
小黒 『ToHeart』映像特典の1話は、和田さんの代表作じゃないですか(編注:2巻以降のビデオ、LDにつけられたSD版の事)。
和田 映像特典の1話ね。本編が非常に淡々としていていたので、本編とは違うカラーでやろうかみたいな事を高橋(ナオヒト)監督と話したんですよ。それをやったのが1話だったから。その後、ゲーム会社サイドから「変にギャグっぽくしないでくれ」と言われて、2話以降は結構抑え気味にしたというのはあるんです。1話は高橋監督に「好きにやっていいよ」みたいに言われて「やっちゃった」みたいな感じがありますけど。
小黒 あれって、キャラ表は誰が描いてるんですか。千羽さんなんですか。
和田 キャラ表はないです。キャラ表なしでやろうとしていたんですけど、「企画書を出すのに設定がないと困る」って言われて、(プロダクション)I.Gで『アキハバラ』やりながら片手間にI.Gのレイアウト用紙にチャカチャカって描いたんてすよ。ムックにそれが載っていますけれど、あれ設定じゃないですね。
小黒 SDにしては絵柄が濃いですよね。髪の毛もグニングニンと描いてあるし。
和田 本編で千羽さんがグニングニン描いてるから。販売形式としては本編があって、最後におまけがつくという形だから、絵柄はあんまり変えない方がいいかなと思って。2頭身にするというのはあったんですけど。
小黒 3.5頭身ぐらいですよね。そんなに縮んでない。
和田 ギュっと、頭でっかくしましたみたいな感じ。
小黒 『ToHeart』はオープニングはやってないんですね。
和田 オープニングはやってないですね。この頃は、あっちこっちで少しずつ、つまみ食いっぽい感じでね。この中ではね、『アキバ』が一番重かったような気が。
小黒 劇場版ですね。どこら辺をやったんでしょう?
和田 劇場はね、デパートで買い物してるとこです(笑)。これが重くって。
小黒 モブがあって、追っかけとかしてるとこですね。
和田 これが重くてね。まあ、「デパートの中を全作画にするのはよくない」と思った(笑)。『アキハバラ電脳組』はね、Aパートのレイアウトをやってるんです。レイアウトを描いててね、「コレ、自分で描かないとマズイよな」と思って、原画をやる事になったんです。レイアウトで、壁だけが背景で他は全部作画でやるから、みたいにしてしまって。
小黒 Aパートのレイアウトは全部やっているんですか。
和田 3人ぐらいでやっているので、全部じゃないですね。本当はCパートの作監をやらないかと言われたんだけど、『ToHeart』の映像特典があるのでできなかった。
小黒 劇場『アキハバラ』はラッシュビデオを当時見る機会がありましたが、デパートのシーンは、もの凄く原撮が凝っていて見応えがあった記憶が。
和田 フカン気味の構図で、人が大勢ウロウロしているカットがあるんですよ(編注:すずめとつばめが水着売り場にいる場面で、買い物客がウロウロしているカット)。Aパートの演出が音地さんで、(自分と)机並べて仕事をしていたんです。それで、俺が何を描いてるのか横目で見てたらしいんです。それで「音地さん、原画上がったから」と言ってカットを渡したら、「ハイ」と言ってね、そのまま中も開けずにチェックマークをつけて流そうとしたから、「音地さん、あの、見てもらいたいんですけど」と言ったら、「見ても分からないから」と(笑)。
一同 (笑)。
和田 まあ、確かにアレは……何セルまで使ったんだったかな。SセルかTセルまで使ったような気がする。
小黒 セル画なのにそんなに重ねて(編注:「Sセルまで使った」とは「19枚セルを重ねた」の意味)。
和田 いや、その1カットだけデジタル撮影なの。セルでは不可能だから(笑)。……あ、そうだ。デジタルと言えば、あの時、(うずらが)「森進一です」というところで使う桜井さんの描いた絵を、そのまま3Dにしてほしいんです、と(自分が)お願いしにいったんですよ。I.Gさんがちゃんと3Dにして、映り込みまでやったので、「さすがI.Gの3Dはスゴイよね」と思った(笑)。
小黒 桜井さんが「3Dにしよう」と言って、和田さんがデジタルのスタッフにお願いしに行ったんですね。
和田 うん。桜井さんが「ここは3Dだよね。周りのピカピカも3Dなんだよ」って。「え、クロス透過光じゃないんですか」と思ったんですけど、ちゃんとI.Gさんが、クロス透過光まで立体にしてくれて。おかしかったですね。
小黒 その後の作品としては『おじゃる丸』があり、『だぁ!だぁ!だぁ!』があり。
和田 『アキハバラ』をやった時にちょっと、息抜きでなんか軽いのをやりたいかなと思って、『おじゃる』をやらせてもらう事になったんです。前から『おじゃる』には誘われてたんだけど、なんやかや忙しくて、結局1期と2期は参加してないんだよなあ。3期から参加したような気がする。「『おじゃる』で楽をするぞ」と言ってやったのに、後で制作に「和田さん、楽してやるって言いながら、楽してないじゃないですか」っていじめられたけどね。
小黒 なるほど。『フィギュア17(つばさ&ヒカル)』もずっと参加なさっていますよね。
和田 ずっとやっていると言えばそうなんだけど、これもスケジュールがなかったので、実質的には2日でラフ原(画)を描いてね、一週間で原画というようなパターンで。いつも20カットぐらいをチョロチョロとやっていた、という感じだから。
小黒 その頃から近年までで、印象的な作品はありますか。
和田 この辺だとね、『遊☆戯☆王(デュエルモンスターズ)』の絵が面白かった。
小黒 珍しく男の子ものですね。
和田 ゆめ太(カンパニー)の班で参加してたけど、作監の加々美(高浩)さんの原画が濃くて。「お、久々になんか三段影だぜ」みたいな感じ。最近の作品って影は、サラッとつけるものが多いから。その前にやった『(QUEEN)EMERALDAS』の増永さんの絵も濃かったなあ。そういう濃い絵もなんか久々で、楽しかったんだけど。
小黒 『(アニメーション制作進行)くろみちゃん』も参加していますよね。
和田 『くろみちゃん』作り方自体が特殊というのもあって(編注:ゆめ太カンパニーの自主制作作品。作品が成功した場合にスタッフにも利益が還元されるという企画だった)、「仲間内で楽しくやろうよ」みたいな感じがありましたね。この時も「みんながずっと動いています」みたいなカットをやる事になって。確かQセルかPセルまで使ったような気がするけど。
一同 (笑)。
和田 制作進行表が、あと20カットぐらいで全部上がりますという状況で、確かその時に6000枚か7000枚だったんです。でも、私が残りの20カット出したら、一気に1万枚ぐらいになって(笑)。「ごめん」「1人で3000枚使うんじゃねえ、ボケェ!」と言われて。それで、大地さんや渡辺(はじめ)さんに支払う予定だった制作費を使ってしまったらしいんですよ。「和田君のせいで、ギャラが入ってこないんだよ」と言われ続けて(笑)。確かに、1カット600枚はマズイよなって。
小黒 どんなところを描いたんですか。
和田 「こんな活気のあるスタジオ久しぶりに見ました」と社長が言う場面で、スタッフみんなでワイワイ、ワイワイやってるとこかな。それから社長室のシーンで、壁だけBGで、他を全部セルにしたり。『アキハバラ』と同じ方式ですね。そこのシーンも美術設定はなかったんですよ。『おじゃる』の洞口の部屋の様子とか、設定がなくてお任せでやらせてもらった。「じゃ、好きに描いていいね」と言って、好き勝手にネチネチと描いて。(『くろみ』の)針生の部屋も設定ないから、「じゃあ、好きに描いてやれ」(笑)。「針生の家なんか、きっとこんなだよね」みたいな感じで作ったけど。洞口も「きっとこの子は穴あきの手袋してるよ」と思ってそこで適当に設定を作ったらね、「おかげで全部合わせなきゃいけなくなった!」と後で怒られた。「きっとね、この子はサボテンを育ててるよね」みたいにいろいろ想像しながら、小物を置いていくんですよ。

●「animator interview 和田高明(3)」へ続く

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