アニメ様365日[小黒祐一郎]

第316回 年齢とアニメを観る目線(番外編10)

 『めぞん一刻』についての話題は、前回で終了。読み返してみると、文章的に粗いところもあるのだけれど、手直しはしない。『めぞん一刻』については、機会を見つけてまた書きたいと思う。今日からの数回は、久しぶりに番外編。ここまでの時系列から外れた話題だ。

 第31回「『赤毛のアン』その後」でも書いたように、僕は本放映の『赤毛のアン』では、アンの目線からドラマを追っていた。本放映時、僕は中学生だった。それが20代半ばに観返したら、マリラやマシュウの目線で、アンの物語を観る事になった。他作品でも、似た経験をした事がある。『アルプスの少女 ハイジ』も、子どもの頃は、ハイジに気持ちを重ねて観ていたのに、20歳くらいの年齢で観たら、アルムおんじやロッテンマイヤーの立場で、ハイジやクララを観ていた。自分が年齢を重ねたために、作品の見え方が変わったのだ。
 劇場版『エースをねらえ!』も、初見時は岡ひろみに感情移入していたが、30代後半からは、宗方の立場でひろみを観るようになった。つまり、最初は「テニスの選手に選ばれたんだから、頑張らなくては」という気持ちで観て、自分が中年になってからは「素質があると思って選手に選んだんだから、途中で辞めるとか言うなよ」なんて思いながら観たわけだ。続編のOVA『エースをねらえ!2』はリリース時には、正直言ってよくわからないところがあったのだけれど、宗方の目線で観たら、よく分かった。終盤の展開が泣けた。年齢を重ねた事で、まるで印象が変わった例だ。
 「アニメ様365日」で原稿を書くために、先日、久しぶりに『DRAGON BALL』を観返した。当時は悟空の目線で観ていたのに、今回はなんと亀仙人の目線で、悟空とクリリンの成長を眺めてしまった。これはちょっとショックだった。亀仙人は、フライパン山の火を消すのを頼まれたのに対して、「火を消すかわりに、ブルマの乳をつつかせろ」という条件を出す。当時はギャグに思えたけれど、亀仙人の目線で観ていただけに、情けなくて涙が出そうになった。
 複雑なのは『未来少年コナン』だ。初見時からコナンの活躍に一喜一憂していたが、どこかコナンに感情移入しきれず、ダイスやジムシィの目線で観ているところがあった。今になって観返すと、もっとダイスやジムシィ寄りになってしまうかもしれない。
 どんな作品でも、年齢を重ねると目線が変わるというわけではないようだ。年をとっても同じ目線で観られる作品もある。また、色々な目線が入った作品でないと、見え方が変わるという現象は起きないようだ。自分が老人と呼ばれる年齢まで生きられたら(こういう書き方をすると、早死にしそうだが)、また見え方が変わるかもしれない。それが少し楽しみだ。

第317回へつづく

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(10.03.01)