アニメ様365日[小黒祐一郎]

第236回 劇場版『GU-GUガンモ』

 劇場版『GU-GUガンモ』は45分の中編で、1985年3月16日に「東映まんがまつり」の1本として公開された。同まんがまつりの他のプログラムは『キン肉マン 正義超人VS古代超人』『とんがり帽子のメモル』「電撃戦隊チェンジマン」の3本。『メモル』はTVシリーズの再編集で、15分の短編だった。データをチェックするまで、TVシリーズの『GU-GUガンモ』放映終了後に劇場版を公開したのだと勘違いしていたが、TVシリーズの最終回の放映は3月17日。劇場版は、最終回の直前に公開されたわけだ(ちなみにこの映画の予告編の映像は、予告用の新作カットが使われており、スタジオジャイアンツが作画を担当している)。
 内容としては番外編であり、半平太やガンモをはじめとするTVシリーズのレギュラーキャラが、桃太郎、竜宮城の乙姫、牛若丸等になって登場するおとぎ話のパロディだった。監督は『Dr.SLUMP』も手がけた永丘昭典で、作画監督はTVシリーズで大活躍をしていた井上俊之。当然、僕はこの映画に期待した。『Dr.SLUMP』のような、TVシリーズをスケールアップさせた、そして、ちょっとマニアックな作品になるだろうと思ったのだ。
 公開当時、僕は同人誌でこの作品について文章を書いているはずだが、どう書いたかを覚えていない。ひょっとしたら、以下に書くのは、当時書いたのとは正反対の内容かもしれない。期待に胸を膨らませて劇場に行ったのだけれど、期待したほどには面白くなかった。当時はどうして面白いと感じられないのかがよく分からなかった。子ども向きの内容だから、自分は楽しめなかったのかな、と思ったはずだ。再見すると、楽しめなかった理由が分かる。単純に話が練られていないのだ。キャラクターを活かすストーリーにもなっていない。改めて観ると、演出もノっていないように感じる。
 本作の売りは、ドタバタアクションである。おそらく、TVシリーズで若手アニメーター達が、張り切った仕事をしていたので、プロデューサーか監督が、彼らが思う存分に暴れられる作品にしようと思ったのだろう。クレジットされている原画マンは、


山口正幸、高橋直人、志田正博、新岡浩美、深沢幸司、入吉さとる(クレジットママ)、安藤信悦、北原健雄、梶島正樹、毛利和昭、伊藤浩二、伊東誠、北久保弘之、福島喜晴、下田正美、中山勝一、星野絵美、後藤隆幸


 の18人。『GU-GUガンモ』のTVシリーズに参加していないアニメーターの名前もある。摩砂雪は、山口正幸の名前でクレジットされている。映画の後半では、ガンモと半平太が、TVシリーズにも登場したスペースシャトルに乗り込んで、鬼の戦闘機と宇宙バトルを繰り広げる(いかにも1980年代前半のアニメらしい展開だ)。このメカ戦の作画は、僕の記憶が正しければ、前半が伊藤浩二で、後半が毛利和昭。無駄に格好いいばあやのパワードスーツ登場の作画は、梶島正樹。摩砂雪は、地面を砕いて鬼が出現するイメージカット、あゆみのテニス、つくねの玉砕き、最後の戦車軍団と、ピンポイント的に作画を担当して、全体のクオリティ向上に貢献。他にも、背動を使った恐竜メカと自転車の追っかけなど、動きの見せ場は多い。井上俊之は、作監作業に集中したのか、原画担当は少ない。冒頭でパパが竹藪で巨大タケノコを発見するあたりだけのはずだ。
 TVシリーズにあったリミテッドな動きの心地よさがないのと、井上俊之らしさが薄かったのは残念だったが、全体に枚数をたっぷり使っているし、よく動いている。実際には暴走しているわけではなく、プロデューサーや監督が狙ったとおりの仕上がりであるはずだが、アニメマニアから観ると「若手アニメーター暴走作品」だった。その意味では、『PROJECT“A”KO』や、『くりぃむレモン』シリーズの『POP CHASER』と同じカテゴリーの作品だ。
 期待したほどは面白くなかったなんて思ったわりには、僕はこの作品にちょっと執着があった。だから、ビデオソフトが発売された時に、VHSのソフトを買った。当時のビデオソフトは高額だったので、学生の身としては、それを購入するのは大事件だった。劇場版『GU-GUガンモ』は、僕が買った2本目のビデオソフトだった。1本目は『とんがり帽子のメモル マリエルの宝石箱』だ。

第237回へつづく

(09.10.26)