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「編集長のコラム」 小黒祐一郎

 第16回「『ルパン三世』の話(6) 『風魔一族』のルパン7変化」

 押井守版の代わりに、劇場第3作として作られたのが『ルパン三世 バビロンの黄金伝説』です。スタッフは『新ルパン』と『PARTIII』のスタッフが中心で、内容は全編スラップスティック。ルパンのジャケットは『PARTIII』と同じピンク。キャラクターのルックスも含めて、『PARTIII』の劇場版という印象の作品となっています。
 1987年に『ルパン三世 風魔一族の陰謀』が公開されました。これは元々はOVAとして製作されたものですが、ビデオリリースよりも先に劇場公開されました。こういった作品を劇場作品として扱うかOVAとして扱うかというのは、ちょっと難しい問題ですが、このコラムでは『風魔一族』を劇場第4作として扱う事にします。
 『風魔一族』は、『カリ城』と同じくテレコム・アニメーションフィルムが制作の中心となっており、監修として大塚康生さんが、作画監督として友永和秀さんが参加。ジャケットの色は『旧ルパン』『カリ城』と同じ青で、キャラデザインも『旧ルパン』系。内容はアクションが主体で、肩の凝らない軽いノリの作品に仕上がっています。細かい遊びが多いのも本作の特徴です。『マモー編』でカットされた、ルパンが死んだと思い込んだ銭形が警察を辞めて仏門に入る(『マモー編』では山寺の寺男になるはずでした。予告編にそのカットが残っています)という導入部を復活させたり、『旧ルパン』最終話を思わせる回想シーンを入れたり。
 最も強烈なのが、映画後半の幻覚を見せるガスのために、ルパンの姿が怪物のようになってしまうカット。怪物になるまでの過程でルパンの顔が、歴代『ルパン三世』のルパンにメタモルフォーゼするのです。その順番は、絵コンテでは、

●『風魔一族』のルパン → 「パイロット」 → 『新ルパン』初期 → 『新ルパン』 → 「アルバトロス」 → 『バビロン』 → 怪物

 となっていますが、実際の画面を見ると5番目の顔は「死の翼アルバトロス」(『新ルパン』145話。テレコムの制作による傑作)ではなくて、『マモー編』のルパンのようです。絵コンテの後、作画までの段階で変更されたのでしょう。『新ルパン』を初期と中期以降に分けたのも見事で、この1カットでここまでの「ルパンの主な顔」をほぼ全て網羅しています。これは前に書いた、青いジャケットを着たルパンが着替えとして赤いジャケットを持っていたというのと似たお遊びで、今回は『旧ルパン』『カリ城』系の顔のルパンを出しているけれど、他の『ルパン三世』を否定しているわけではないよ、というスタッフの意思表示と受け取る事もできます。  『ルパン三世』ヒストリーにおいて、『風魔一族』において最も特筆すべき点はキャストと音楽です。この作品は、大胆にも『新ルパン』以降、不動だった山田康雄以下のお馴染みの声優陣と音楽家を入れかえました。『風魔一族』のキャストは以下のとおりです。

ルパン三世/古川登志夫
次元大介/銀河万丈
石川五右衛門/塩沢兼人
峰不二子/小山茉美
銭形警部/加藤精三

 それぞれの好みもあるでしょうし、山田康雄のルパン以外は認めぬというファンも多いでしょうが、私は、このキャストに関して「これも、あり」だったかな、と思っています。特に小山茉美の不二子は『旧ルパン』風のキャラデザインによく合っていました。『風魔一族』は『旧ルパン』や『カリ城』を志向し、それまでの『ルパン三世』シリーズをネタにしたお遊びをやりつつ、その一方で、キャストや音楽で新味を出そうとした。つまり、それまでの『ルパン三世』を肯定しつつ、新しい『ルパン三世』を模索した作品だったわけです。

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