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「編集長のコラム」 小黒祐一郎

 第14回「『ルパン三世』の話(4) 『旧ルパン』のその後の物語」

 『新ルパン』の放映中に制作されたもう1本の劇場作品が、『マモー編』の翌年に公開された『ルパン三世 カリオストロの城』(通称『カリ城』)です。
 これは『旧ルパン』の後半にも演出として参加している宮崎駿さんが、初めて監督した劇場作品です。作画監督は『旧ルパン』と同じ、大塚康生さん。西洋の古城を舞台に囚われの姫君を救い出すという、かつて大塚さんと宮崎さんが参加した東映動画の長編漫画映画の傑作『長靴をはいた猫』を思わせる古典的な筋立てで、作品テイストも東映動画系の色が濃いものとなっています。凝った舞台設定、盛り沢山のアイデア、可憐な姫君クラリスの存在等、見所満載。アニメーションとしても非常に完成度の高い、娯楽作です。
 若いファンにはちょっと意外かもしれませんが、『カリ城』は公開時の興行成績は芳しくなかったんですね。後に徐々に評価が高まり、やがて名作として認知されるようになったわけです。『カリ城』が公開時にヒットしなかった理由はいくつか考えられます。当時は、『宇宙戦艦ヤマト』に始まり『機動戦士ガンダム』で頂点を迎えたアニメブームの最盛期であり、「スター・ウォーズ」に代表されるSFブームの真っ只中。『カリ城』のテイストは、そういった当時の流行とはかけ離れていました。また、ヒロインのクラリス姫に「おじさま」と呼ばれる、マイルドな中年男としてのルパン像が、当時のファンにはピンとこなかったのかもしれません。
 『カリ城』のルパンのジャケットの色は『旧ルパン』と同じ青です。キャラクターデザインも『新ルパン』や『マモー編』に比べれば、はるかに『旧ルパン』的でした。『マモー編』のルパンが「旧ルパン・前半路線」のベンツSSKに乗っているのに対して、『カリ城』のルパンは「旧ルパン・後半路線」のフィアット500に乗っています。全体にアダルトな『マモー編』に対して、『カリ城』は明朗な漫画映画タッチですから、『マモー編』を「旧ルパン・前半路線」の劇場版、『カリ城』を「旧ルパン・後半路線」の劇場版と考える事もできます。
 それでは『カリオストロの城』が『旧ルパン』がそのまま劇場作品になった作品なのかというと、これが難しい。前述のように『カリ城』のルパンは、『旧ルパン』の若いルパンではなく、角がとれて優しくなった中年ルパンです。
 「ルパン三世ヒストリー」の中での『カリ城』の位置について考えるなら、クライマックス前の回想シーンが非常に重要です。「もう10年以上も昔だ……。俺は1人で売り出そうと躍起になっている青二才だった」というルパンのセリフで始まる彼の回想で、若き日のルパンはベンツSSKに乗ってワルサーを派手にぶっ放し、カジノで美女をはべらしています。また、この回想シーンには『旧ルパン』オープニングの、サーチライトの光の中を疾走するルパンをリメイクしたカットもあります。要するに、このシーンは非常に『旧ルパン』的なんですね。おそらく作り手もそれを意識していたはずです。『カリ城』のルパンの過去が、『旧ルパン』のルパンであるならば、『カリ城』は「『旧ルパン』のその後の物語」なのでしょう。
 『カリオストロの城』はルパンに青いジャケットを着せ、回想シーン等で『旧ルパン』との関係を示唆した上で、あえて中年ルパンの物語を描いたわけです。『ルパン三世』シリーズにおける位置づけを、作品自身が示しているわけで、その意味でも濃い作品と言えましょう。
 ルパンマニアの私は、フィアットに乗ったルパンがベンツに乗っていた頃を回想するという事が、非常に面白いと思っています。「旧ルパン・後半路線」のルパンが、「前半路線」を懐かしんでいるようにも見えるんですよね。

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