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「東池袋アニメ積読録」 小川びい

2004年8月
葉月は声優本三昧の日々

 今回は、声優本を集中的に取り上げましょう。7月から9月にかけて、珍しく声優の本が立て続けに出版されました。最近は、声優本が出版されることがさほど多くないだけに、嬉しい限りです。声優本ってアニメ関連本なの? という本質的なギモンには、ここでは立ち入らないことにしましょう。
 声優本は、書き手によって一人称、二人称、三人称の3種類に分けられます。つまり、声優自身が語る(執筆する)本、インタビュアーが声優に訊く本、第三者が声優について記す本です(と、書くともっともらしいですが、これはタレント本全般に言える事)。
 声優が自分の名前で出す本が一人称の本。僕は……とか、私は……というのが主語になります。写真集も大きく見れば、この範疇に入るでしょう。二人称の本は、取材者が声優に話を訊いて文章にまとめるというもの。雑誌記事なども含め、最もスタンダードな形式です。三人称の本の典型は、事典やタレント名鑑といった本でしょうか。
 普通のタレント本と大きく違うのは読者層です。通常のタレント本は、そのタレントへの興味関心から購入する読者がほとんどでしょうが、声優本の場合は少し違います。声優になりたい人と、声優について知りたい人の、ふたつがあるのです。もちろん、このふたつは明快に分かれるものではなく、渾然一体としているわけですが。
 この2軸を整理すると、次のようになります。
 このマトリックスの中に、あらゆる声優本がプロットできるのです。
 8月に出た「林原めぐみの愛たくて逢いたくて…ファイナルシーズン(生声CD付き)」(角川書店)は、このマトリックスの中で、Aゾーンの本といえるでしょう。林原めぐみと、斯界の専門家やタレントとの対談が主で、そこに林原の写真が挟まれるという構成。Newtype誌の連載をまとめたもので、これが3冊目になります。連載ではさほど感じなかったのですが、まとめて読むと、林原の関心の広さやトーク(文章)の巧みさに、改めて感心させられます。本の造りも上品。巻末のプロモーション関係者達の鼎談も興味深いです。ただ残念なのは、これまでの2冊が上製本だったのに、今回は並製本であった事。本棚に並べたとき、ちょっと寂しい。これは揃えてほしかった。
 久しぶりにスタンダードな声優本が出た、と嬉しくなったのが「声優バイブル」(宙出版)。マトリックスで言えば、C&Dゾーンに向けて作られています。A5判というコンパクトな体裁の中に、インタビューを中心とした記事が多数収録。野沢那智、野沢雅子、肝付兼太らベテランのインタビューあり、野川さくら、岸尾大輔ら、今が旬の若手声優の取材や座談会あり、さらに声優学校の紹介や声優事務所のリストあり、と盛りだくさん。全編2色というのも、最近のカラーグラビア中心の声優雑誌を見慣れた目には新鮮で、かえっていい感じです。特に、水野愛日の、バブル期を懐かしむような妙に大人びたコメントが印象的でした。全体に第3次声優ブーム期華やかなりし頃の本に印象が近く、妙に親近感を覚えます(笑)。
 圧倒的だったのが「別冊映画秘宝Vol.3 とり・みきの映画吹替王」(洋泉社)。タイトルどおり、漫画家にして吹替洋画研究の第一人者であるとり・みきが、これまで行ってきたベテラン声優へのインタビューを1冊にまとめたもの。大平透、中村正、矢島正明といった斯界の第一人者から、アニメでもなじみ深い、玄田哲章、江原正士、山寺宏一まで、22人の方々が登場。と書くとCゾーンの作りですが、豊かで読ませる前説、詳細な脚注、充実したコラムからすれば、Eゾーンの本と言っていい……というか、これはすでに研究書の域でしょう。さすが路上観察学会の一員と言うべきか。さりげないところで特撮やアニメへの出演にも目配せが利いていて、痒いところに手が届いているも素晴らしい。
 特に、本書用に行われた(他はCS番組などの再構成)という若山弦蔵インタビューの濃密さは圧巻。若山が使用した台本をチェックしたうえで、脚本直しのテクニックにまで話が及びます。インタビューするだけでも畏れ多い若輩者には、とても真似できません……。
 面白いのは、アニメになじみ深い方々にはむしろアニメの話題はほとんど訊かず、ベテラン陣にはアニメ番組の話をうかがっているところ。阪脩が“『攻殻機動隊』の荒巻には、惚れ込んでやっている”と語っているのにはちょっと驚かされますが、TVシリーズの熱演を思えば納得。
 「ルパン三世 ジャズノート&DVD」(講談社)は、作曲家・大野雄二の語り下ろし回顧録。『ルパン』以外に、NHK連続テレビ小説や「犬神家の一族」の話もあり。DVDには『ルパン』始め、代表作の音源が収められています。山田康雄の思い出にかなりの頁を割いている点から、これも声優関連の本として、強引に取り上げておきましょう。
 9月になっての刊行ですが、「HEKIRU FILE」(音楽専科社)は、椎名へきるの函入り最新写真集。タイトルどおり、本の大半は、雑誌「hm3」に掲載された彼女の表紙・グラビア・記事を掲載時そのままの形でファイルしたもの。それに撮り下ろしとロングインタビューが追加されています。中身を見ずに買ったので、バックナンバーを揃えている身としては、記事の再録にはいささか面食らいました。あと、撮り下ろしに比べ、再録は写真の粒子が粗いような……? インタビューはボリューム満点です。
 声優関連本では他に「基礎から始める声優トレーニングブック」(雷鳴社)が出ていますが、これはさすがにアニメ関連本として扱いづらいのでパスしましょう。
 声優本以外で紹介しておきたいのが、おかだえみこ文、鈴木伸一絵「ひとりから始めるアニメのつくり方」(洋泉社)。同じ2人には「アニメージュ」で連載し、「僕らの実戦アニメ塾」(徳間書店)として単行本にまとめられた本がありますが、これはそのアップトゥデイト版。簡単なアニメの歴史と、作り方の基礎を図解つきで楽しく見せていく構成はそのまま。必ずしも実践向きとは言いがたいところもありますが、アニメーション入門としては値段も手頃でコンパクトなよい本ではないでしょうか。
 また、アニメ初のパートワーク「GUNDAM HISTORICA」(講談社)が全10号で完結。時を置かず、9月からは「週刊ガンダム・ファクトファイル」(デアゴスティーニ・ジャパン)が全100冊を目標に刊行開始しました。
 パートワークと言えば、編集長がヒトコトで触れていましたが、「ぼく、ドラえもん」(小学館)13号には、創刊号に続き、DVDが付録として付いています。目玉はなんと言っても、米たにヨシトモ監督のイベント用アニメ。これをさる上映会で初めて見たとき、ドラえもんのメカニカルな解釈に本当に驚愕しました。手に入らないレア映像と思っていただけに感慨もひとしお。お見逃しなく。
(04.10.01)

▼書名・誌名[著者]  発行・発売元/判型/価格[税別]/発売時期)
※発売日・価格等はあくまで目安。店頭にて要確認の事。すでに発売中のものには発売時期はつけていません。順序は大体の発売順です。

●2004年8月の既刊

▼林原めぐみの愛たくて逢いたくて…ファイナルシーズン(生声CD付き)[林原めぐみ]
 角川書店/四六判/1500

▼パンダーZ研究序説 オフィシャル研究ブック
 アスキー/B5/1200

▼NARUTO オフィシャルアニメーションBOOK 秘伝・疾風絵巻
 集英社/新書/781

▼アニメーションの現在 Japanese Animation Horizon
 プチグラパブリッシング/B5/1800

▼スチームボーイ メカニカルブック
 講談社/A4変/2667

▼カレイドスター新たなる翼 天使の技編
 エムディエヌコーポレーション発行・インプレスコミュニケーションズ発売/B5/2300

▼GUNDAM HISTORICA 10
 講談社/A4変/543

▼ルパン三世 ジャズノート&DVD[大野雄二]
 講談社/A5/2400

▼別冊映画秘宝Vol.3 とり・みきの映画吹替王[とり・みき]
 洋泉社/A5/1600

▼THIS IS ANIMATION 劇場版 ポケットモンスター アドバンス ジェネレーション
 小学館/AB/933

▼アニメと思春期のこころ[西村則昭]
 四六/創元社/2000 ※アニメを素材にして揺れる思春期に臨床家がせまる

▼大人のガンダム
 日経BP社/A4変/933

▼宮崎アニメの暗号[青井汎]
 新潮社/新書/680

▼ロミオの青い空脚本集 増補版(上・下)[島田満]
 ブッキング/四六/各1800

▼ひとりから始めるアニメのつくり方[おかだえみこ文、鈴木伸一絵]
 洋泉社/A5/1500

▼スチームボーイ絵コンテ集
 講談社/A5/3800

▼二次元美少女論[吉田正高]
 二見書房/B6/1500

▼TVアニメ鋼の錬金術師オフィシャルファンブック VOL.4
 スクウェア・エニックス/A4/476


●9月以降の新刊

▼十兵衛ちゃん2〜シベリア柳生の逆襲〜 公式ビジュアルブック
 メディアワークス/A5/1500

▼基礎から始める声優トレーニングブック[松濤アクターズギムナジウム監修]
 雷鳴社/B5/1400

▼押井守・映像機械論 メカフィリア[押井守著、竹内敦志画]
 大日本絵画/A4変/2800

▼ナイトメアー・ビフォア・クリスマス・フィルムブック[フランク・トンプソン著、品川四郎訳]
 河出書房新社/A4変/3200

▼週刊ガンダム・ファクトファイル
 デアゴスティーニ・ジャパン/A4変/276 ※以降毎週火曜日発売

▼TVアニメ鋼の錬金術師 シナリオブック Vol.1
 スクウェアエニックス/B6変/933

▼HEKIRU FILE
 音楽専科社/A4/4762

▼ほんとうのたからもの
 メディアファクトリー/B5/1500

▼ガンダムSEED DESTINY 公式最速ガイド
 角川書店/A4変/457

▼ふたりはプリキュア大百科2
 ジャイブ/B6/700

▼おねがい*ツインズ オフィシャルファンブック Lien
 メディアワークス/B5/2700/9月30日

▼アニメ作画のしくみ[尾澤直志]
 ワークスコーポレーション/AB/2838/9月下旬

▼アニメーションの宝箱[五味洋子]
 ふゅーじょんぷろだくと/A5/1600/10月5日

▼TVアニメ tactics スターターブック
 マッグガーデン/未定/819/10月6日

▼宮崎駿の「深み」へ[村瀬学]
 平凡社新書/新書/780/10月8日

▼マクロスゼロ ミッシングメモリーズ
 メディアックス/未定/1143/10月15日

▼TVアニメ 鋼の錬金術師 キャラクターコレクション(仮)
 スクウェア・エニックス/未定/1333/10月21日

▼TVアニメ鋼の錬金術師 シナリオブック Vol.2
 スクウェアエニックス/B6変/933/10月29日

▼勇者シリーズメモリアルブック 超勇者伝承
 新紀元社/未定/2600/10月下旬

▼MOEOHセレクション 木村貴宏画集
 メディアワークス/未定/未定/10月30日

▼TVアニメ鋼の錬金術師オフィシャルファンブック VOL.5
 スクウェア・エニックス/A4/476/10月30日

▼別冊ぱふ 声優インタビュー2004
 雑草社/A5/未定/今秋

▼カレイドスター ビジュアルファンブック
 ジャイブ/B5/2800/未定

▼ヤミと帽子と本の旅人 ビジュアルコレクション
 学習研究社/A4/2400/未定

▼新世紀エヴァンゲリオン完全補完計画(仮題)
 角川書店/未定/2000/未定

▼超解!ギャラクシーエンジェル
 富士見書房発行・角川書店発売/B6/1100/未定
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