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『ANIMATRIX』を語ろう

第7回 カッコいいANIMATRIX
    佐藤竜雄(アニメーション演出家)

 昔(と言ってもほんの数年前)、日本のアニメってばイイカンジですね、などど普段アニメを見たことのない人たちまで妙に持ち上げ始めた頃、エライ人たちが決まって言うことが「日本のアニメもエログロで俗悪なモノばかりでなく、素晴らしい作品もあるのですよ〜」というものでした。しかし、忘れちゃいけないのが日本のアニメがウケてる理由がその俗悪さでもあるところ。いわゆるカートゥーンやら長編アニメにはない魅力、というヤツですね。実際、アメリカのファンと話をすると「私たちは日本のアニメが好きなのであって、あんまり世界とか意識されても……」という声も聞かれたりもするのです。

 で、ANIMATRIX。

 DVDの国内売り上げは80万本行ったとか行かないとか。これはホントは凄いことなんだけど普通に売れちゃった分、普通にスルーされてしまったようで。似たようなコンセプトの作品としては映画『ヘビーメタル』(1981)がありますが、ヘビーメタルという漫画雑誌自体が一般的ではなかったためイマイチふるわなかった印象があります。今回は映画マトリックスをお題に“アニメ”を作ろうという企画です。「マトリックス」のアニメ版というより「マトリックス」というコンテンツの一部としての『ANIMATRIX』という売り方が良かったのでしょう。おまけに各話エピソードもさりげなくカッコイイ。よく見ればすごいことをやってたりするのだけれど、サラッと見れてしまう。この手のヤツだと、作り手達の自意識というか……この作品で俺っちすごいことしてやるもんね的な気負いはそこにはなく、何時もやってることをキッチリと、予算と時間をかけてやっているような(その辺りは何ともうらやましい(笑))淡々さが感じられます。日本のアニメ──この場合、TVアニメから発展してきた日本の商業アニメのことを指しますが──は、明らかにマンガの影響下にあります。絵柄がどんどんリアルに、或いはスタイリッシュに進化してきた日本のマンガ。これをTVアニメ化するという“仕事上の”目的を果たすために、無いスケジュールと予算の中、日々研鑽してきた技術の成果が『ANIMATRIX』にはあります(「FINAL FLIGHT OF THE OSIRIS」はそういう意味ではちょっと異色)。インディペンデンス系やアート系のアニメをお好みの方達の中には「頑張ってはいるけど所詮はマンガじゃん」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、その通り。マンガだからいいのであって、マンガが動いているように見えるからすごい──だからヒトはアニメを見るのかもしれません。

 で、更にANIMATRIX。

 本編もさることながら一番印象的だったのはメイキング等のスタッフ映像が実にカッコよく撮れているところ。小池健さんなんて実にいい男ぶりではないですか。この辺り、日本のメーカーさんはよく参考にするように。インタビュー音声先行で適切な資料映像が次々に流れる、複数のインタビューを適切に組み合わせて“文脈”を作り上げていく、語っている対象をきちんとキマった構図で撮る──実に初歩的なことですが、日本のアニメだとこういうキチンと作ったメイキングはあまりお目にかかったことが無いですね。どうしてもバラエティ方面に逃げがちというかお手軽というか……何はともあれ、特典映像まで含めて『ANIMATRIX』DVDという商品のイメージをきちんと統一して作ってあるところに感心した次第です。ま、「マトリックス」だからそんなことが出来たことは重々承知していますが、でもねえ。

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