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「東池袋アニメ積読録」 小川びい

2003年8月
葉月は思わぬ出費に財布の中身を見る日々編

 今回は価格の話です。
 前回紹介した、「コメットさん☆ メモワール・ド・エトワール」もそうでしたが、ここのところ、アニメ関連書籍に高額なものが目立ってきました。「コメットさん☆」本はまだ3000円台でしたが、8月に出た「聖闘士星矢 冥王ハーデス十二宮編」はなんと、4000円強。『冥王ハーデス十二宮編』のDVDが1枚買えてしまうお値段です。2分冊にビニール装と、つくりは豪華なのですが、熱心なファン以外にはおいそれと手を出せる価格ではありません。充実したスタッフインタビューや描き下ろしのイラストなど、中身は手堅くとも、簡単には人に勧められないのが残念です。
 ファン向けのアニメ関連書が高騰する一方で、「別冊宝島」に代表されるような、コンビニ売りも考えられた、1000円前後のアニメ関連出版には、すでに触れた事ではありますが、各社が陸続と参入しています。例えば、双葉社の「未来少年コナンオフィシャルガイド」は、「今、なぜ『コナン』なのか」という疑問は浮かぶものの、既存の情報をコンパクトにまとめた、かっこうの入門書でした。さらに、これは9月になりますが、河出書房新社も「タイガーマスク」でこの分野に参入。本家本元の「別冊宝島」の矢継ぎ早の出版は言わずもがな。これはもうブームと言っていいようです。
 このように、3000円以上の高額のマニア向け書籍と、1000円前後の低額のライトユーザー向け書籍とに、アニメ関連出版は二極分化が進んでいるのです。その中にあって、1000円台から2000円ぐらいの、従来のファン向けの書籍は埋没しつつあるように思えます。その原因は色々考えられるでしょうが、端的に言って、以前ほどアニメ関連書が売れなくなっているという事なのでしょう。それが出版不況によるものなのか、アニメファンが拡散しているためなのかはともかく、小部数でコアターゲットに向けた本を作るか、コンビニを中心にライトユーザー向けの本を作るか、現状では、どちらかの選択肢を選ばざるをえなくなっているようです。
 さて、今回、コア層向けのアニメ関連書として外せないのが、「映画ドラえもん『のび太とふしぎ風使い』絵コンテ集」。お値段は3300円です。
 記憶に間違いがなければ、1999年刊行の「映画ドラえもん のび太の宇宙漂流記 Maiking Book」「映画ドラえもん 感動名作選」あたりから、大人向けを意識した劇場『ドラえもん』出版物が発行されるようになりました。特に、昨年出版された「芝山努と映画ドラえもん『のび太とロボット王国』の世界」は、芝山努のイメージボードを中心にした、実にマニアックな作りで、度肝を抜かれたファンも多いでしょう。
 「映画ドラえもん『のび太とふしぎ風使い』絵コンテ集」は、タイトルどおり、芝山努による『のび太とふしぎ風使い』の絵コンテを全て収録。昨年のムックでは少ししか見る事のできなかった芝山のコンテを存分に堪能する事ができます。さらに渡辺歩の作監修正集や、藤森雅也のオープニング絵コンテ、芝山監督が描いたイメージボード、また「芝山努と映画ドラえもん『のび太とロボット王国』の世界」でも掲載されていた、芝山監督によるお遊びの制作ノートと盛りだくさんの内容です。作画マニアには、原画マンの香盤表の掲載も嬉しいところでしょう。加えて、同書に収録された芝山努監督のインタビューは、「なぜ現在の地球が舞台なのか」「フー子のデザインについて」等、短いながらも今回の劇場版で気になった点をクリアにしてくれる、簡にして要を得たすぐれものの内容。個人的にはこのインタビューがいちばん嬉しかったかもしれません。さすがに高いけれど、値段分の充実感は得られる書籍だと思います。
 ところで、埋没しつつあると言った、1000〜2000円ぐらいの価格帯ではどんな本が出ているのでしょうか。実は、この価格帯で今いちばん元気なのはアートアニメーション関連の出版物なのです。8月出た「アニメーターズ1 カレル・ゼマン」もそのひとつ。値段は1500円。こうした手頃な価格で、書籍が刊行されている事自体がアートアニメーション関連出版の活況を物語っていると言えるでしょう。「アニメーターズ1」とついているように、これからシリーズとして刊行する予定があるそうです。同書は、チェコ小史、作品解説、各種寄稿と、コンパクトにまとまっており、なかなか読みやすい作りです。中でも「山村浩二、ゼマンを語る」は同業者ならではの技術論まで含めた、作家論・作品論として、非常に興味深い。自作への言及もあるので、山村ファンも買いでしょう。もっとも「アニメーション作家」を「アニメーター」と呼びたいという巻頭言は、無用な用語の混乱を招きかねない点で、やや疑問。それを除けば、手頃な入門書のシリーズとして期待したいところです。

●2003年8月以降のアニメ関連本リスト

▼書名・誌名[著者]  発行・発売元/判型/価格[税別]/発売時期)
※発売日・価格等はあくまで目安。店頭にて要確認の事。すでに発売中のものには発売時期はつけていません。順序は大体の発売順です。

▼未来少年コナンオフィシャルガイド
 双葉社/B5/933

▼聖闘士星矢 冥王ハーデス十二宮編
 集英社/A4/4571 ※2分冊、ビニール装

▼別冊宝島851 ヤッターマン Perfect Book
 宝島社/B5/1200

▼別冊宝島852 ルパン三世 PERFECT BOOK TV版パート2 ストーリー解析編
 宝島社/B5/933

▼別冊宝島853 僕たちの好きなマジンガーZ
 宝島社/B5/1200

▼別冊宝島854 僕たちの好きなあしたのジョー
 宝島社/B5/952

▼別冊宝島860 僕たちの好きな巨大ロボット
 宝島社/B5/952

▼別冊宝島862 シティーハンター最強読本
 宝島社/B5/952

▼妄想科学シリーズワンダバスタイル 〜indies〜
 ワンダーファーム/A4/1500

▼アニメコミックス 茄子 アンダルシアの夏[黒田硫黄、高坂希太郎]
 講談社/A5/1300

▼別冊ぱふ 声優コレクション2003
 雑草社/A5/900

▼キャラクターデザイナー(1号)
 ワークスコーポレーション/A4/933

▼安野モヨコ対談集 ロンパースルーム
 ロッキング・オン/A5変/1300 ※庵野秀明との対談あり

▼アニメーターズ1 カレル・ゼマン
 オムロ発行、日本出版社発売/A5/1500

▼少年サンデービジュアルセレクション 金色のガッシュベル!!(1)
 小学館/A5/838

▼映画ドラえもん『のび太とふしぎ風使い』絵コンテ集
 小学館/A5/3300

▼サクラ大戦OVA BOOK
 学研/AB/1810

▼ホラー映画の魅力[小中千昭]
 岩波アクティブ新書/新書/760

▼タイガーマスク 虎だ! お前は虎になるのだ!!
 河出書房新社/B5/1000

▼KAWADE夢ムック 文藝別冊 安野モヨコ
 河出書房新社/A5/1143 ※庵野秀明のインタビューあり

▼まほろまてぃっく〜もっと美しいもの〜 VISUAL BOOK
 ワニブックス/A4/1800

▼グレートメカニック(10号)
 双葉社/A5/933

▼戦後ヒーローの肖像[佐々木守]
 岩波書店/四六/2300/9月25日

▼別冊ジュノン 声優アーチスト Special Book  
 主婦と生活社/A4変/1200/10月3日

▼大人は判ってくれない[野火ノビタ]
 日本評論社/四六/1700/10月上旬 ※庵野秀明との対談あり

▼ザンボット3 ダイターン3大全
 双葉社/A5/2200/10月上旬

▼後藤圭二画集 Kinetic Girls
 角川書店/A4/2500/10月27日
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