『毎日映画コンクール　大藤信郎賞受賞　短編アニメーション全集』は2000年の春に発売されたＤＶＤソフト。話題としてはいささか旧聞に属するが、是非とも紹介しておきたいタイトルだ。
　念のため、大藤信郎賞について説明しておこう。大藤信郎は戦前より活躍し、特に海外で高い評価を受けた、日本のアニメーションの先駆者の１人である。彼の功績を讃え、1962年に設けられたのが大藤賞だ。主に、芸術性や新規性のある短編映画（の制作者）に対して与えられるもので、その歴代受賞作を選りすぐったのが、このソフトだ。
　ＤＶＤ８枚組で、価格は24万円（税別）。価格が高いのは、基本的に図書館など公共施設での閲覧を目的に制作されたソフトであるためだ。勿論、凄いのは価格だけではない。比較的手に入りやすい長編を除き、なかなか見る機会のない作品を一挙に集めたとあって、ラインナップもかなりのものだ。以下に、収録されている作品を列挙してみよう。数字は収録されている巻数である。

　１）手塚治虫『ある街角の物語』
　　　和田誠『殺人　ＭＵＲＤＥＲ』

　２）久里洋二『人間動物園』
　　　同『ＬＯＶＥ』
　　　同『椅子』
　　　同『アオス』
　　　手塚治虫『展覧会の絵』

　３）岡本忠成『ふしぎなくすり』
　　　久里洋二『二匹のサンマ』
　　　同『部屋　Ｔｈｅ　Ｒｏｏｍ』
　　　やなせたかし『やさしいライオン』

　４）渡辺和彦『みにくいあひるの子』
　　　岡本忠成『花ともぐら』
　　　同『ホーム・マイホーム』
　　　河野秋和・中村武雄『てんまのとらやん』

　５）川本喜八郎『鬼』
　　　岡本忠成『南無一病息災』
　　　川本喜八郎『詩人の生涯』
　　　岡本忠成『水のたね』

　６）川本喜八郎『道成寺』
　　　岡本忠成『虹に向かって』
　　　古川タク『スピード』
　　　岡本忠成『おこんじょうるり』

　７）手塚治虫『森の伝説』
　　　川本喜八郎『いばら姫またはねむり姫』
　　　岡本忠成『注文の多い料理店』

　８）たむらしげる『銀河の魚』
　　　長崎希『るすばん』
　　　大藤信郎『くじら』
　　　同『幽霊船』

　このセットだけで、インディペンデント系を中心とする日本の歴史的なアニメーション作品が概観できる、と言っても過言ではないだろう。
　勿論、収録されているのは作品ばかりではない。ＤＶＤの特性を活かし、貴重な資料やスタッフインタビューも大量に収録されている。さらに、制作者のプロフィールや、作品解説等も充実している等、痒いところに手が届く作りとなっている。また、第８巻に特別収録されている、大藤信郎の『くじら』『幽霊船』の２本は、これが初めてのソフト化である。セロファンを使った影絵という独特の手法で作られており、一見の価値がある作品だ。
　実際に、閲覧用にこのソフトを置いている図書館もあるようだ。地元の図書館のソフトコーナーをチェックしてみてはいかがだろうか。また、個人での購入も可能。注文すれば、全国の書店で購入できるそうだ。
　ぜひ、アニメーションの多様な可能性に触れてみて欲しい。

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