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アニメの作画を語ろう
animator interview
 中村豊(2)
小黒 『超者ライディーン』は、どんなとこをやられたか全然分かんないんですが。第18話「激突! ANGEL対ザ・ハーツ」と最終回の「超者降臨!」ですね。
中村 あんまり覚えてないですね。最終回は多分、数カットで。18話は、主人公達が飛行形態になって、ドッグファイト風になるところで、1カットだけ望遠な画を入れてみた記憶があります。あと、とどめを刺す所までだったかなあ。
小黒 じゃあ、18話は割とたっぷりやってるんですね。
中村 いや、10か20カット位だったと思うんですけど。僕は、40とか50とか持てる人じゃないんで。
小黒 『少女革命ウテナ』は1話ですね。当時、長谷川君に「あそこ誰?」と訊いた覚えがありますよ。
中村 ああ、そうなんですか。
小黒 螺旋階段ですよね。1コマでリピートするカット。
中村 僕は初め、あれを2コマにしてたんですよ。
小黒 あ、そうなんですか。
中村 だけど、幾原さんが原画チェックの段階で1コマにしちゃった。
小黒 そうなんですか。それは幾原さんらしいな。
中村 打ち合わせ段階では1コマでという話だったのですが、螺旋階段って、奥の方になると(原画と原画の線の間が)ミリ単位じゃないですか。その数ミリの間を中割するわけですから、ブレないようにするためには4コマぐらいにしないといけないんです。「でも、仕方ない」と思って2コマにしたのを、幾原さんが1コマにしたんです。
小黒 昔のアニメみたいなアジが出てましたよね。
中村 ですよね(笑)。
小黒 あれは階段を上る所から決闘場に着くまで、ですか。
中村 着くまでですね。30カットぐらいですかね。
小黒 これも、長谷川君に声をかけられての参加になるんですか。
中村 そうですね。「今、こんなキャラデをやってるんだけど、どうですか?」と言われて。「もちろんやります!」とか応えて(笑)。
小黒 ええ!? でも、美少女ものじゃないですか。
中村 いや、僕は、長谷川さんの仕事だからという理由で取りました。いろいろお世話にもなってるし。
小黒 その後、『ビバップ』までにも幾つかありますけど、この辺で印象的なものというのは?
中村 印象的ですか。『JaJa馬カルテット』かな。1本目の方で、発電所の破壊シーンをまかされて、確か、打ち合わせ時に実写っぽくやって下さいということで。2本目でも、これは大失敗してるんですけど、当時上映されていた「インディペンデンス・デイ」を参考に、と。ま、これは特撮映画なんですけど……。この頃から実写などと、アニメを混ぜるということを意識するようになりました。
小黒 なるほど。それは、具体的にはどうするんですか。実写を観て、それを覚えて描くんですか。
中村 実際のバクハツとか、自然現象って考えられない動きをするじゃないですか。ミサイルが飛んでいくにしても、真っ直ぐ飛んでいくわけじゃなく、傾いて飛んでいったり。そんなところを上手く拾って、アニメと足して、嘘リアル、リアル風に作って。
小黒 で、次の大きなお仕事が『ビバップ』になるわけですね。
中村 そうですね。
小黒 『ビバップ』でこう、人物アクションアニメーターとして、花開くわけですけれども。
中村 開いたんですかねえ(苦笑)。
小黒 これも準備期間長いですよね。
中村 企画から考えると、5年?
 南 5年って事はないだろう。
中村 3年ぐらいでしたっけ。作画を開始したのは放映の半年前位からですよね。
 南 それでも『エスカ』よりは短いよ。
小黒 でも、放映が始まってからが長いんですね?
中村 長いですね。
小黒 WOWOWの放映中まで描いてたわけですからね。
 南 2クールの作品を丸々1年かけてやった感じですね。
中村 ええ。あれまた南さんマジックというか。
小黒 ああ、なるほど。南さんの作品で、よく放映の休みが入るのは、南さんが使っている魔法なんですね(笑)。
 南 アイタタタタ(笑)。
中村 (笑)。みんなが使いたい魔法が。
小黒 裏技があるんでしょうかねえ。
 南 ないです(笑)。
小黒 『ビバップ』での中村さんのアクションは、1話でいきなり完成してると思うんですが。
中村 とんでもないです。監督から「スパイクは、ジークンドーを使うブルース・リーファン。ま、そんな感じでアクションよろしく」と言われて。
小黒 なるほど、具体的に「ブルース・リーで」と指示があったんですね。
中村 オープニングで、蹴りのカットがあるじゃないですか。あれも実際のブルース・リーのアクションを監督がビデオから1コマ1コマ取り出して、それを参考にして作画さんに描かせたんですよ。
小黒 そうだったんですか。
中村 だからすごく、キレのいい動きになっていますよね。で、そのオープニングを見て「あ、こういう感じなんだ」と思ってやったんですね。
小黒 1話は、勿論あのオープンカフェの前のアクションですよね。どこからですか。
中村 男と女が車を降りた後、スパイクがポンチョを着て現れる所からですね。
小黒 どこまでですか。男とのアクションが終わった後で、スパイクが車の上でチンピラに蹴りを入れたりしますよね。
中村 僕がやったのはオープンカフェで暴れてる所までですね。
小黒 すごいパースの付いたカットが2カットほどありますけど、あれはコンテだとどうなってるんですか。
中村 コンテだと、平面だった。
小黒 あ、なるほど(笑)。手前に銃をナメたカットとか、ちょっと手カメラみたいな感じですよね。
中村 あれもコンテにはない所ですね。でも、監督の方から「動くようだったらカメラワークを付けてくれ」と言われたんで。あの時から、PANの目盛りを使ってプルプルと動かすカメラワークを始めたんですよね。
小黒 それから中村さんの作画の特徴である、ヒラヒラした服とか。
中村 (笑)。
小黒 既にここで登場していますよね。
中村 基本的にアクションって、シルエットじゃないですか。だから、使える所は使って、と思っているので。もう無理矢理ヒラヒラさせたりするんです。スパイクのアフロなんて、特に、その手の素材として最高でした(笑)。
小黒 余計に動いてるように見えるわけですね。
中村 そうです。視聴者の眼がいろんなとこに行くじゃないですか。それで、アクションの本筋を誤魔化せるというか(笑)。「あ、何となくすごい」という感じになりますよね。
小黒 多分、『ビバップ』の中で、中村さんがやったとこが一番リアルじゃないと言うか。リアルに形をとっていて、リアル風ではあるけれど、動き的には奇抜なものが入っていますよね。
中村 ええ、そうですね。基本的にはリアルにしたいんだけど、できないっていう(笑)。
小黒 『ビバップ』の作画では、リアクションも多いですよね。
中村 リアクションですか。
小黒 「リアクション」という言葉だと違うかもしれませんけど、動きの中に普通なら入れないような原画を入れたり。
中村 ああ、はいはい、そうですね。ある程度の運動曲線を守ってれば、どんな画を入れても動いて見えるんですよね。『エスカ』まで、ずーっとメカをやってきて、初めてキャラアクションをやる事になって、アクション映画での、人の動きを注意して見るよう心がけるようになりました。香港映画での殴られ役の大きなリアクションや、時代劇での斬られ役のリアクションとか。甘いリアクションでは主役の動きが生きてこない。時代劇を見ながら「甘いなあー。画面に残りすぎだよ」ってTVに向かって呟いてみたり(笑)。
小黒 それで、そういうアクションにハマったわけですね。
中村 ハマっちゃったんですねえ。
小黒 『ビバップ』ではかなりの本数に参加してますよね。
中村 (笑)。

TV『カウボーイビバップ』 中村豊参加エピソード
第1話「Session#1 アステロイド・ブルース」
第5話「Session#5 堕天使たちのバラッド」
第9話「Session#9 ジャミング・ウィズ・エドワード」
第12話「Session#12 ジュピター・ジャズ」
第15話「Session#15 マイ・ファニー・ヴァレンタイン」
第18話「Session#18 スピーク・ライク・ア・チャイルド」
第19話「Session#19 ワイルド・ホーセス」
第20話「Session#20 道化師の鎮魂歌」
第22話「Session#22 カウボーイ・ファンク」
第24話「Session#24 ハード・ラック・ウーマン」
第25話「Session#25 ザ・リアル・フォークブルース(前編)」
第26話「Session#26 ザ・リアル・フォークブルース(後編)」

小黒 主には人物アクションを?
中村 そうですね、人物アクションですね。
小黒 メカはやってないんですか。
中村 メカ、何話だったかな。エドが初めて出てきた話(第9話「ジャミング・ウィズ・エドワード」)で。数カットなんですけど衛星から攻撃受けてるあたりです。それぐらいですね、メカは。
小黒 人物アクションに関して、御自身で自信があるものとか、印象深いものはどれでしょうか。
中村 自信があるわけではないけれど、印象深かったのは、やっぱり24話ですかねえ。
小黒 24話は、エドの父ちゃんとスパイクが殴り合うところですね。あれはイカしてましたよね。
中村 カット数は少ないんですが、ずっとやってきた中で一番思ったようなアクションができたのが、これかなと思います。
小黒 どこまでが中村さんの原画なんですか。
中村 僕がやったのは闘い始めて、船がドバーッと落ちて来るところまで。その後が、堀川(耕一)さんですね。
小黒 カメラを引いた画で、船が来るカットまでですね。スパイクがセル画3枚ぐらいで、ツゥーッと奥に行くカットがありましたよね(笑)。
中村 そうそう(笑)。あれは、ちょっと速いけど、描いた時は、普通に奥に行く感覚だったんです。他の人に聞いたら「ちょっとあれは……」。
小黒 「やりすぎ」ですか。
中村 「やりすぎだよー」とか言われて(笑)。
小黒 あれ、走ってないですね。足、動いてないですよね。
中村 動いてないですね。
小黒 あれはトバしてましたね。
中村 トバしてました(笑)。
小黒 多分、ファンが一番印象的なのが22話「カウボーイ・ファンク」だと思うんですけど。偽物のカウボーイが登場する話。
中村 ああ、はいはい。
小黒 これはビルの上の対決ですよね。
中村 ええ。あれも楽しかったですね(笑)。
小黒 あれも大嘘アクションで。
中村 そうそう。あれは「ギャグにしていいから」という感じが、コンテから伝わってきたんで。
小黒 カット数も多いんじゃないですか?
中村 そうですね。ビルが爆発した直後から僕の担当なんです。殴り合いが終わった後、下に落ちたスパイクが机をボンと叩くところからは鴨川(浩)さんがやってくれてるんです。その手前までですね。
小黒 『ビバップ』で中村さんの担当が分からないのが、第20話「道化師の鎮魂歌」なんですよ。最初の道路でスパイクとピエロが闘うとこは違いますよね。
中村 違うんです。そこは宮田忠明さんです。あの話は担当したのが二つ分かれていて。最初はマッドピエロがどっかのボスを撃ち殺して、それをスパイクが見かけるところ。宮田さんの前です。
小黒 あ、なるほど。
中村 もうひとつは、スパイクが遊園地の中でマッドピエロに追っかけられて、逃げながらとある部屋に入って。そこに天使みたいなのがポンと出てきて、「ここは危ないよ、ここは危ないよ」と言ったり。
小黒 そんなところやってるんですか(笑)。
中村 ええ。その後、氷上でペンギンたちがダァーッて滑ってきたり、シーンラスト、スパイクが爆発で吹っ飛ぶところまでです。
小黒 あの話は、普段の『ビバップ』とも随分違ってましたけど、全体にテンションが高かったですよね。
中村 高いですねえ。宮田さんのところなんて本当に「ああー、これだよなあー」という。それから「やっばりタッチはモーションブラじゃなくて、実線で入れなきゃダメだなあ」と思いましたね。
小黒 モーションブラって、ブラシっぽい処理の事ですか。
中村 ええ。動いてる被写体から生ずる、画像のボケをデジタルで残像処理を加えるんです。宮田さんのところは、作画タッチでプラスアルファされてて。
小黒 鉛筆の線で?
中村 鉛筆線で表現してたんで。イカしてましたよ。ちなみに劇場版では、なぜかモーションブラが使えなかったので、宮田方式を使わせていただきました。
小黒 第12話「ジュピター・ジャズ」も多いんじゃないですか?
中村 「ジュピター・ジャズ」ですか。「ジュピター・ジャズ」は、どこだったかな。
小黒 道で顔を隠した連中とスパイクが闘う所では?
中村 あ、そうです。
小黒 その後に、フェイがやっぱり同じようなシチュエーションで連中と闘うところがありますが。
中村 そこは伊藤嘉之さんですよ。僕はスパイクのところだけです。あのアクションシーンでひとつ解説しておきたいのですが、スパイクのあの異常なジャンプ力は、やりすぎのバカアクションではなく、一応、金星の重力なんで、あれぐらいジャンプできるだろうという事で。
小黒 ああ、なるほど(笑)。
中村 ……本当は後付けですけど(笑)。
小黒 せっかくだから『ビバップ』の他の話も聞いていいですか。
中村 ええ。
小黒 第19話「スピーク・ライク・ア・チャイルド」は、昔のフェイのビデオが出てくる話ですが。
中村 どこだったかなあ。ああ、これは数カットです。ビデオデッキを探するためにビルに潜入して、物が落ちてきたり、身体を挟まれたりするところです。
小黒 第5話「堕天使たちのバラッド」は、ビシャスが初登場した話ですよね。
中村 ですね。これは小森(高博)さんと担当が交ざってるんですけど。剣と銃で闘うシーン。僕は途中からです。
小黒 チャンバラのところですか。
中村 そうです。堀川さんが前半をやっていて、僕は後半。スパイクが落下して爆発するところまでです。
小黒 第15話「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」は何の話でしたっけ。
中村 あれですよ。軟派野郎の詐欺師に引っ掛かって、お金を盗られちゃう。これも戦闘シーンですね。その詐欺師っていうのが、前はほっそりしてたんですけど、かなりふくよかになっていて。フェイがそいつを逃がそうとして、フェイ機に乗せようとするんですけど、肥ってて入らないんですよ。
小黒 ああ、ありましたね。
中村 それで、ガンガンっとやってるところで。それから発進して、ちょっとドッグファイトがあって。そのドックファイトの前半辺りを描いています。
小黒 「ワイルド・ホーセス」は、お爺ちゃんの整備士が出てくる話ですよね。
中村 これはスペースシャトルが、地上から発進する所ですね。
小黒 じゃあ、第9話以外でもメカを描いてるんですね。
中村 あ、そうですね。描いてますね。戦車でスペースシャトルを引っ張ってる辺りは、斉藤恒徳君が描いていて。僕がやったのはその後ですね。発進して、上昇していくまでですね。
小黒 カット数は少ないんですね。
中村 少ないです。でも、きつかったんですよ(笑)。
小黒 きつかったというのは、描くのが?
中村 基本的に煙作画が苦手なので、何十枚も描くのが単純にしんどかったんです。
小黒 そうなんですか。ラストの2本はどこを?
中村 25話はビンセントが3人の長老たちを殺すシーンですね。もう、ほとんどそこで力尽きてたんですけど。26話で、また剣と銃の闘いの所を、富岡君と半分ずつ描いています。
小黒 それは、前半ですか後半ですか。
中村 交ざってますね。主には前半ですかね。
小黒 『ビバップ』を振り返ってみていかがですか。
中村 うーん、なんでしょうねえ。振り返ってみると。そうですねえ、パッと浮かぶのは、「アフロのブルース・リー」って感じですね(笑)。

●「animator interview 中村豊(3)」へ続く

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