web animation magazine WEBアニメスタイル

 
『かみちゅ!』倉田英之×舛成孝二インタビュー(1)
「神様は中学生」ではなく「神様で中学生」


 『かみちゅ!』は、ごく普通の女子中学生が、ある日突然「神様」になってしまった事から始まる、純日本的ファンタジー。倉田英之(脚本)×舛成孝二(監督)の『R.O.D』コンビの最新作だ。淡々とした日常描写が中心で、舛成孝二監督がその本領を発揮。現在のところ作画も高水準で、丁寧な芝居を楽しむ事ができる作品だ。
 今回は、倉田英之、舛成孝二に、『かみちゅ!』についての話をたっぷりとうかがう事にしよう。プロデューサーの落越友則も同席しているぞ。


●2005年7月22日
取材場所/東京・アオイスタジオ
取材・構成/小黒祐一郎



PROFILE
舛成孝二(Masunari Kouji)

アニメーション監督。1965年1月1日生まれ、島根県出身。監督作品に『フォトン』『アンドロイド・アナ MAICO2010』『臣士魔法劇場リスキー☆セフティ』『コ・コ・ロ・図・書・館』『R.O.D(OVA・TV)』がある。

PROFILE
倉田英之(Kurata Hideyuki)

脚本家&小説家。1968年7月9日生まれ、岡山県出身。代表作に『バトルアスリーテス 大運動会(OVA・TV)』『アンドロイド・アナ MAICO2010』『へっぽこ実験アニメーション エクセル・サーガ』『R.O.D(OVA・TV)』等がある。

▲ 1話「青春のいじわる」より

―― 
『かみちゅ!』の企画の成り立ちについてから、お話をうかがえますか。
倉田 舛成さんが、だらだらと家で引きこもっていたので。
一同 (笑)。
―― そうなんですか。
舛成 ええ。『R.O.D』が終わってから、ちょっと引きこもっていました(笑)。別に、引きこもりたくて引きこもったわけじゃなくて。やる予定だった仕事が、なくなりましてね。無職になって、そのまま、ずっと遊んでたんですけどね。何かやんなきゃ、と思ったら「じゃあ、何か企画持ってこい」と言われたので。
倉田 前の『R.O.D』の面子(倉田、舛成、落越)で、それぞれがひとつずつ企画を持ち寄って、その中から次のやつを決めよう。そういうプレゼンみたいなのをやって、通ったのが、舛成さんが出した「女子中学生が神様になる話」でした。それが汎用性も高いし、舛成さんが一番真剣に働くんじゃないだろうかと思って、全員一致で決めたんですが。大間違いでしたね。
一同 (爆笑)。
倉田 いや、真剣にはやってるんですよ、勿論。
―― (手を挙げて)はいはいはい、はーい! 今回の記事は、こういうフランクなノリで行っちゃって大丈夫ですか。
倉田 何か問題があるんですか(笑)。
―― いや、楽しくていいですけど。
倉田 「アニメスタイル」は見てますけど、みんな、真面目すぎますよ!
―― 了解です。それでは、今回はこのノリで。企画の話の続きを行きましょう。
舛成 まあ、仕事をしろと言われて始めて。
倉田 どうせやるなら、楽しい仕事をしたい。
舛成 楽しい仕事がいいなあ、という事で。
倉田 舛成さんの好きな女子中学生を。
舛成 そうそう。
―― テレコが回る前から「女子中学生」という言葉が連呼されていますが、そんなに女子中学生が好きなんですか。
舛成 いや、女子中学生に限らないんですけどね。まあ『R.O.D』の時にも言ったんだけど、読子が男だったら仕事を受けてねえと。
倉田 基本的に女の人が好きだという。
舛成 ええ、そうなんですよ。男が主人公の仕事を持ってこられても、全くやる気起きないんですよ。ていうか、男って、演技づけしても面白くないんですよ。
倉田 男なんて、自分達の周りにいっぱいいますからね。
舛成 そう。
倉田 女子中学生って、あまりいませんからね。
舛成 うん。やっぱり、妄想が膨らむっていう事ですかね。
―― あけすけですなあ(笑)。
一同 (笑)。
倉田 女子中学生の可愛い仕草というものを、最高のクオリティで残しておけないだろうかというね。
落越 「今、この瞬間」を。
倉田 「今」でもないけどね。妄想の中の人間だから。
舛成 それを若手の巧いアニメーターを使って、やらせてみる。
倉田 それでお金がもらえる、夢のような仕事じゃないかと。
―― 1話オープニング前の教室のシーンがあるじゃないですか。あそこは、正しく夢アニメでしたよね。素晴らしい仕上がりでした。
舛成 あそこの原画やってくれたのは、2話の作監の子(藪野浩二)なんですけどね。頑張ってくれたんですよ。カット1は、ゆりえが卵焼きを食べるカットだったんですけど、コンテでは15秒だったんです。顔のアップ15秒がファーストカットというのも冒険だったんだけど、原画が上がったら、30秒になってて(笑)。
一同 (笑)。
舛成 いや、ちょっと待て。30秒はちょっとまずい。妥協案としては20秒か22秒ぐらいかな、と言って。それであのカットになったんです。あれは原画の段階で撮影して、タイミングを全部見てから、OKを出したんですよ。

▲ これが話題の1話のファーストカット。卵焼きを食べるカットだ

―― 1話冒頭のシーンは、コンテ的にもバッチリでしたよ。あのクオリティで、少女描写が90分続いたら映画になりますよ。
舛成 (笑)。
倉田 だけど、90分間もあったら誰が観るんだろう。「櫻の園」みたいだな。
舛成 「櫻の園」か、ええなあ。
倉田 そもそも舛成さんは、そういった日常描写が好きな人なんですよ。今までずっとアクションとかをやってきておりますが、できれば、そういう日常描写を延々とやってみたいという人で。俺が説明してどうすんだ(笑)。
一同 (笑)。
―― いや、でもそうなんでしょうね。
舛成 まあ、アクションをやってもいいんですけどね。アクションは巧い人達がいるじゃないですか。被るのも嫌だしと思って、日常描写をきっちりやったら(視聴者に)「ジブリみたいだ」と言われましてね(笑)。
倉田 しかも、(今期の新番組は)被りまくりですよね。田舎が舞台で、女の子がいて、みたいな。
―― どういうわけか、似た作品が同時に始まりましたよね。
倉田 何でなんだろうなあ。みんな、今までみたいなものに疲れたって事なんですかね。
舛成 ねえ。
倉田 不思議でしたけど、まあその中でも、目立ってる作品になってるんじゃないかと、勝手に思っていますけど。
舛成 ウチは、フライング気味に始まりましたからね。先行した分だけ、ちょっと得をしているかな。
倉田 7月スタートの新番の中で、なぜか6月末に先陣を切って始まって。だけど、「やってる事を知らなかった」とか言われて(笑)。「7月からだと思ってました」とか。
舛成 でも、遅れて始まったら(ネットで感想を書いている人に)「他のやつと同じ。視聴中止」みたいな感じに言われて、終わるんだろうな。
倉田 そうですね。今でも「『ぺとぺとさん』にそっくりだ」と言われていますけどね。何週か遅れたら危ないところでした。
舛成 うん。
―― どうして、神様になる話になったんですか。
舛成 まあ、企画はまずキャッチーでなければいけないというね(笑)。それくらいなんですけどね。あと、ただの「中学生日記」を作っても、やっぱり誰も観てくれないじゃないですか。だったら、中学生が中学生のまま、どうやったらおかしい事になっていくか。というのが、僕の中でのスタートだったんですよ。で、魔法使いについては、ぴえろさんが老舗としてありますからね。そういうのはそっちに任しといて。神様というのはちょっとなかったかな、そのくらいのノリですかね。
倉田 『ああっ女神さまっ』を忘れてますよ。
舛成 いや、だってあれは中学生じゃないよ。ベルダンディがセーラー服を着たら気持ち悪いじゃない。
一同 (笑)。
倉田 魔法にしていたら、今度は『奥さまは魔法少女』と被っていたかも。恐ろしい。
舛成 恐いですね。で、それでこの作品は、神様をモチーフにしているんですけど、目的は中学生を描きたいというところですね。
倉田 神様というのはオマケです。
舛成 (雑誌やネットで)「神様は中学生」と風に書かれているんですけど、本当は「は」はNGなんですよ。「神様で中学生」が実は正しくて。でも「は」で定着したら、定着してもいいかなあ。
倉田 いや、DVDには「神様で中学生」と表記されてますから。
―― それ、キャッチコピーですか。
舛成 キャッチコピーというわけでもないですよね。
―― ネットとかで、そう書かれているんですか。
舛成 ああ、ネットでは「は」で通ってるねえ。
倉田 タイトルとしては『かみちゅ!』しか出してないんだよ。だけど、みんなが「神様は中学生」「神様は中学生」って。
―― 『おくさまは女子高生』とか『奥さまは魔法少女』とか。
倉田 「○○は○○」みたいな。
―― それが今期の流行か(笑)。
舛成 まあ、結果的に流行に乗ったのかもしれないけど。実は僕らちょっと変えてて、「で」だったんですよ(笑)。
倉田 神様で中学生。「ロバート・デ・ニーロ」みたいな(笑)。
舛成 そうそう(笑)。そういうのがやりたくて。まあ、で、本分はやっぱり中学生なんだよ、というところで。そこに他のお友達とかキャラクターを配置して。神様って何? どんな事をやってんだろうとか、神様ってなんかお願いされてばっかりよね、みたいな話を繰り返していくと、なんとなしにこんな作品ができると(笑)。
倉田 前に『R.O.D』をやった時に、やっぱり主人公が中学生だったんですけど、中学校を舞台にした話の評判がちょっとよかったので。そちらの線を追求してみようか、みたいな。
舛成 そうだよね。
倉田 ただ、僕も舛成さんも、もう年なんで、自分の記憶の中での中学校しかできないんです。今の中学校がどうなってるのか全く知らないんで。しかも、調べようとも思いませんでしたもん。
―― 劇中では言ってないけれど、1980年代半ばが舞台なんですよね。
倉田 そうですね。劇中では言ってないですけど、80年代半ばの尾道とかを舞台にした、それこそ「僕達の心の中にある中学校」にチャレンジしてみたというか。意外にアニメでは、尾道とかやってなかったなあ。
舛成 そうだよね。
倉田 僕の記憶では、うたたねひろゆきさん(原作)の『誘惑 COUNT DOWN』の1話が尾道を舞台にしているんですが、それだけですね。それ以外に尾道はないでしょう。
―― 『かみちゅ!』は尾道アニメ第2弾。
舛成 『誘惑 COUNT DOWN』に続き(笑)。
倉田 まあ、『誘惑 COUNT DOWN』も頭だけなんですけど。
舛成 なるほど。
倉田 中盤以降は、部屋の中に入ってエロい事をするだけなので、どこでも同じやん、という(笑)。
―― でも、舞台が80年代半ばと言ったら、お2人も20歳ぐらい。
倉田 いや、僕は高校生で、舛成さんが……。
舛成 20歳に届かないぐらいかな。
倉田 その時代に、僕らも中学生ではないんですけど。主人公を高校生にすると、ちょっと生臭いよなあという事で。
舛成 中学生にしても、ちょっと幼く描いてる感じなんですけどね。
倉田 そうですよね。中学生なんだけど、やってる事はませた小学生ぐらいで。そんな位置がちょうどいいかしらと思ってね。だって、ゆりえと綾波(レイ)って同じ歳ですよ、14歳だから。
舛成 あ、そうなんだ。
倉田 そうですよ。髪型も似てるし。
舛成 眼帯してないけど。
倉田 (笑)。綾波がいつも眼帯してると思ったら、大間違いですよ。
舛成 その画しか観た事がない。
―― (笑)。
倉田 まあ、色んな中学生があって、いいんじゃないかしらという。
舛成 うーん、あとはね、可愛い事をやるのがいいなと。
倉田 ああ、そうですよね。可愛いというのは正義ですね。
舛成 『ストロベリーなんとか』に似てますね(笑)。というか、向こうが先に言ったんだけど。
一同 (笑)。
倉田 みんな、可愛い女が好きだろうと思うんですよ。あんまり嫌いな人はいないだろう。
―― でも、今回の作品は、特にてらいがなくて。
舛成&倉田 ああー。
―― 俺達はこんな事をやってていいのか、というような迷いが、かけらも感じられないところが。
倉田 そんな事は、かけらも感じた事ないですよね。
舛成 うん。
一同 (笑)。
倉田 今、言われて、初めて「あれ? どっか、おかしかったのか」と思ったくらいで。こんな事しかやっていたくない(笑)。
―― 潔いですね。素晴らしい。

●『かみちゅ!』倉田英之×舛成孝二インタビュー(2)に続く


●公式HP
http://www.aniplex.co.jp/kamichu/

●TV放送情報
テレビ朝日/毎週火曜日26:40〜
朝日放送/毎週木曜日27:01〜
名古屋テレビ/毎週水曜日27:08〜

●DVD情報
「かみちゅ!1」
ANSB-1031/カラー/本編約50分/リニアPCM(本編)、ドルビーデジタル(コメンタリー)/片面1層/16:9
※本編は、TV放映+追加カットも収録された「ディレクターズカット版」とも言うべき内容になっている
価格:5250円(税込)
発売日:2005年8月24日(全8巻・毎月リリース)
収録内容:1話「青春のいじわる」、2話「神様お願い」
音声特典:全話オーディオコメンタリー
初回特典:羽音たらく描き下ろし特製ピンナップ
発売元:アニプレックス
[Amazon]

(05.08.02)

 
 
  ←BACK ↑PAGE TOP
 
   

編集・著作:スタジオ雄  協力: スタイル
Copyright(C) 2000 STUDIO YOU. All rights reserved.