色彩設計おぼえがき[辻田邦夫]

第40回 またしても『色指定』のことはちょっと置いておいて『墓場鬼太郎』の話

え〜、2週間? 3週間? ぶりのご無沙汰でございます(汗)。

前回の原稿に「ああ、雪みたいなあ」とか書いたら、なんとまあ翌日いきなり雪になりまして(苦笑)、その後も毎週雪が降る、というステキな天候の東京です。

そんな雪を「わ〜いわ〜い(嬉)」と喜んでいたところ、『墓場鬼太郎』の色指定をお願いしてる秋元さんに「え〜? 信じられないッ!」と思いっきり引かれてしまいまして……(苦笑)。彼女、青森の人だったんですな。

僕ら東京生まれ東京育ちの人間は、雪が降ることを「冬のイベント」として喜んで、歓迎さえしてる部分があります。「すぐに溶けてなくなっちゃうんだし、ひと冬に2〜3度くらい『イベント』があってもいいよね」と、そんなふうに思ってるのですね。

しかしまあ、建物の陰が多い東京のこと、中途半端に降られると、翌朝路面が凍って「魔王アイスバーン」が降臨しますから要注意ですが(苦笑)。

さてさて。

『色指定』のクレジットのお話の続き……とは思ってるんですが、『墓場』を始めとする本業の方がまだまだ忙しくてちゃんと時間取って原稿書けません(泣)。ゴメンナサイです。なのでまた『墓場』のお話を少し。

寒い冬のまっただ中、『墓場鬼太郎』は絶好調。おかげさまで関東地方での視聴率、なんと5%を越えちゃいましたです! いやあ、みなさんありがとうございます。これってなかなか凄い数字だったりします。5%っていう数字だけだと一見少ないような気もするんですけど、そもそも、あんまりTV観てる人が少ない深夜帯。占拠率っていうデータによれば、この時間帯にテレビつけてた人の5人に1人が『墓場』観てたことになるそうです。

ま、視聴率のことばっか言ってるのもナンですが、僕らスタッフはとにかく多くの人に観てもらえてるのがとっても嬉しいです。せいいっぱい、自信持って作ったものは、やっぱりたくさんの人に観てもらいたい。なので、もっともっと放送地域増えてくれないかなあ、と、そう思ってます。

ところで、この『墓場』、なにげに業界内視聴率(笑)も高めなようで、つき合いのある他社のプロダクションの方々からも「観ましたよ。いいねえ!」と、よく声をかけられます。

が、まあこれは、僕がいろんなとこで宣伝して廻ってるので、半ばリップ・サービスもあるんでしょうがね(笑)。

今週の放送が第6話。いよいよ折り返し、後半戦へと向かいます。

この『墓場鬼太郎』、基本1話完結なつくりでありまして、毎話そこそこの数の新キャラが出てきます。この設定作業、色の決め込みが結構たいへん。キャラクターによっては、原作に色刷があったり、水木先生の画集に色つきがあったりするんですが、ほとんどは白黒刷の原作が参考。なので、まず僕が色をつけて、それをシリーズディレクターの地岡氏、キャラクターデザインの山室氏、そしてその話の演出さんとで、う〜んう〜ん唸りながら決め込んでいってます。

で、この作品、前にも書きましたが、画面効果のため撮影時にテクスチャーとフィルター効果が足されるため、彩色時の色味と実際の画面の色味が「ど〜ん!」と変わっちゃいます。なので、その分も考えて逆算しつつの色の決め込みなのですね。

どんな風に変わっちゃうかって言うと、まず「青」はほぼ「灰色」になります(笑)。なので、第1話では冒頭、ブルートーン風な夜色をやって失敗しました(爆)。ノーマルなシーンの色味でも、ネズミ男の服(っていうか布)は、画面では黄色っぽく見えてますが、塗ってる色はかなり派手めな蛍光系の黄緑です。トランプ重井の着てた紅いジャケットは、どっか〜ん! とショッキング・ピンクに塗ってありました。

そんな感じなので、ちょっとキャラ立ちをよくしようとして、ジャケットとかシャツとかに派手めな色を置こうとしても、思ったようなバランスになかなかならなくて苦労しちゃってるのですね。

それくらい発色が出ないので、たとえば鬼太郎のちゃんちゃんこの黄色や、寝子のスカートの赤い色は、撮影時にフィルターの上からもう一度その部分を重ねて撮ってもらっているのです。

あ、ちなみに鬼太郎と目玉オヤジは、実はあんまりフィルターの影響受けてないですね。塗ってる色も、おおむねあんな印象です。

そんなことも想像しつつ『墓場鬼太郎』を楽しんでいただければ、と思います(笑)。

■第41回へ続く

(08.02.12)