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COLUMN
リスト制作委員会通信[リスト制作委員会]

第11回 2005年後半回想 その4

 数日後、米谷さんから返事があった。
 まずネガフィルムに関しては、現存しているのは本編部分のみだった。オープニング、エンディングのネガは別に保管されていて然るべきだが、その所在は不明だという。一方、放映プリントの内容も、すでにワークテープで判明していたものと変わりはなく、新たな発見はなかった。全話のクレジットをこの眼で確認したい、という私の夢は叶わなかったわけだ。正直、これはショックだった。
 ただし、わずかに収穫もあった。ポジのフィルム箱のいくつかには、放映当時のキューシートと、次回予告用のナレーション原稿が入っていたというのだ。
 転んでも、ただでは起きたくない、というのがそのときの私の本心だった。本放映当時を知ることができる資料なら、たった1枚の紙であっても掘り起こし、歴史の闇から光の下へと送り届けるべきではないのか。
 そのキューシートと予告原稿を、全部コピーしてくれませんか……喉まで出かかった言葉を、私は飲み込んだ。米谷さんだけに負担をかけるのはもうやめよう。コピーは自らの手で、納得のいく形でやろう。それに、自分自身が本当に諦めるためにも、フィルム箱の現物を直接この眼で見て、中身を確認することにしよう。
 かくして私は、日帰りの大阪旅行に出かけた。8月17日(水)のことだ。
 毎日放送の本社は1990年に千里丘から移転、現在は北区茶屋町にある。新幹線の新大阪駅から大阪市営御堂筋線に乗って梅田駅で下車したのはお昼ごろ。待ち合わせのホテルのロビーで米谷さんと合流、一緒にお食事をした後、社の会議室へと案内された。
 ドーナツ型のテープルが印象的な部屋には、すでに千里丘のライブラリーから搬入されたフィルムが積み上げられていた。私は米谷さんたち数人と協力し、次々とフィルム箱を開け、なかに入っている書類袋を調べていった。
 次回予告原稿については、第2〜4、8〜13、15〜26回のそれぞれの終わりで使用されたもの、計21種が見つかった。その多くが手書きの直筆原稿であり、貴重この上ないものだった。エンディングの次回予告部分には音楽だけが流れていることから、放映当時、局のアナウンサーがこの原稿をリアルタイムで読み上げていたと想像される。また、原稿を収めた書類袋には、次回予告用の2枚のテロップカードも一緒に入っていた。この原稿の内容はすべて書き起こし、解説書に掲載している。
 キューシートは、第3回と第4回のものが2枚残っていた。キューシートとは、放送局のスタッフがオン・エアの際に使用する進行表のことである。そこには、何時何分何秒からフィルムを回し始め、何分何秒になったらコマーシャルを流したらいいのか、あるいはどのタイミングで画面に提供や予告のテロップをかぶせたらいいのか、などの細かな指示がすべて記入されている。本放映時のフォーマットを知る資料としては、極めて貴重な存在と言える。これにより、オープニング開始1分05秒目(19時31分05秒)から8秒間、画面に「雪印乳業」の提供テロップがかぶせられたこと、オープニングの後はそのまま前CF(30秒)へと続き、19時32分15秒から本編が始まったことなどが読みとれた。気になったのは、エンディングの尺が1分12秒と記載されていることだ。発見されたエンディング(第30回以降の13本分)は、全体の尺が42秒しかなかったからだ。シリーズ前半と後半とで、エンディングの長さが改訂されたということか。あるいは、13本のエンディングがすでに冒頭をカットされたものであり、本当は手前に30秒分のフィルムがあった可能性も否定できない。『ピッカリ★ビー』のエンディングは「ピッカリ・ビーはいいな」という曲なのだが、クレジットには「うた 真理ヨシコ」と表示されるにもかかわらず、そこに歌詞はなく、インストゥルメンタルとなっていたからだ。手前の30秒が歌唱部分であり、そこを除いた後奏部分のみがフィルムとして現存しているのだとしたら? 私は不勉強のため真相を知らない。本放映のご記憶をお持ちの方、ご存知のことがあればお知らせいただけませんか。
 余談だが、コピー機をお借りした10階の編成局で、小松さんという方にお会いした。毎日放送には、アニメやTVドラマにものすごく造詣の深い社員がいて、実はSF作家・小松左京氏のご子息なのだ、という噂は以前から聞いていた。その御本人と、思いがけなくもお話ができたのだ。しかも、『ファイトだ!!ピュー太』のDVD解説書についてお褒めの言葉もいただいてしまった。嬉しいプレゼントもついた大阪旅行だった。

[DVD情報]
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■第12回へ続く

(06.04.06)

 
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