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COLUMN
アニメ様の七転八倒[小黒祐一郎]

第79回 ドキ!「初恋同志の 露天風呂」

 僕は『The・かぼちゃワイン』を、本放送でほぼ全話を観ているはずだ。当時、アニメ以外に目をやれば、お色気を売りにしたTV番組は結構あったと記憶している。まだ「ウィークエンダー」を放映していた頃だ。だから、『かぼちゃワイン』のお色気を、そんなに変わったものだと思ってはいなかった。それでも「これはやり過ぎだろう」と思ったエピソードがふたつある。73話「初恋同志の 露天風呂」と91話「おれとエルとが 失神寸前!」だ。
 特に「初恋同志の 露天風呂」は、あまりにもエッチだった。大袈裟に言えば衝撃的だった。「え〜、今の話、なに? あんなの放送していいの?」と思ったのを覚えている。僕は『かぼちゃワイン』を録画しておらず、再放送で観る機会もなかった。ストーリー等の細部は忘れてしまったが、『かぼちゃワイン』が話題になるたびに「『かぼちゃワイン』と言えば『初恋同志の 露天風呂』だよ」と力説してきた。実は今回DVD-BOXの仕事をお手伝いする事になったのも、その2本を再見したかったからだ。

 東映アニメーションさんからDVD-BOX2巻分のサンプルビデオをいただき、早速「初恋同志の 露天風呂」を観た。本放送以来、22年ぶりだ。これがね、やっぱり凄かった。露天風呂でエルともう1人の美少女が、レイプされそうになる話なのだ。春助とエル、そして寮の連中は、春助の故郷に泊まりがけで遊びに行く。故郷には春助の初恋の相手がいる。アッキーというニックネームの少女で、前回紹介した57話「エルが胸キュン! タイムカプセル」ですでに1度登場している。
 前半ではエルの初恋の相手の事で、春助がヘソを曲げるという展開。後半はアッキーが、エルを誘って露天風呂に行く。エルにも初恋の相手がいて、アッキーは春助の初恋の相手だった。サブタイトルの「初恋同志」は、その2人が露天風呂に入るという意味だ。1980年代のアニメなので、入浴時にバスタオルを巻いたりはしない。オールヌードである。エル達が春助の話をしていると、そこに村の不良2人が登場。「たっぷり可愛がってやるぜ」とか言いながら近づく不良に、アッキーが一糸もまとわぬ姿で空中回し蹴り。不良の1人がナイフを出したところで、春助がその場に駆けつける。不良相手に健闘するが、背後から大きな石で頭をどつかれて、春助は気絶。エルの悲鳴に彼が目を覚ますと、エルとアッキーが手ごめにされそうになっているところだった! 春助の拳が炸裂し、不良2人を叩きのめす。喜んだエルとアッキーは裸のまま春助に抱きつくが、2人のヌードを直視した春助は、興奮のあまり失神してしまうのだった。その後にエピローグがあって、この話はオシマイ。エピローグもこれまた照れくさい。
 エルとアッキーが、ずっとオールヌードなのも強烈だが、やはり驚かされたのは、2人がレイプされそうになる部分だ。具体的に描写されているのは2カット。岩の向こうに抵抗するエルのジタバタした足が見えるカットと、春助の目線の構図で、不良2人に襲われているエルとアッキーのカットだ。両方とも相当にヤバい。ゴールデンタイムにやるファミリー向けアニメとしては限界。というか、限界を越えちゃっている。凄いぞ、ザ・東映動画。『タイガーマスク』や『北斗の拳』のような過激な作品を作った会社だけあって、やる事が大胆だ。
 DVD-BOXの仕事をやるにあたって、原作も1セット揃えたのだが、チェックしてみると、この露天風呂のシーンは、ほぼ原作に沿った内容だった。原作では相当長い話で、57話のタイムカプセルの話と73話の露天風呂の話がひとつのエピソードとなっている。アニメではそれにオリジナル部分を足して、ふたつのエピソードにしたわけだ。73話で言えば、前半で描かれているエルの初恋の人に関する部分がオリジナルなのだ。両者を比べると、原作の方が裸は多いのだけれど、アニメの方が過激なものになっている印象だ。動きや音がつくとこんなにも違うものなのか。曲でシリアスな雰囲気を強調しているのも、アニメの方のインパクトが強くなっている理由かもしれない。

 もう1本の「おれとエルとが 失神寸前!」は、エルと春助が、テッキンの愛車の中に閉じ込められてしまう話。テッキンというのは、2人の担任である鬼教師のニックネームだ。春助達は、車の中で夜明かしをする事になった。春助が気づくと、いつの間にかエルが下着姿になっている。エルはブラの肩紐を外して春助にせまる。苦しいから胸にさわってほしいと言って、エルは自分の胸に彼の手を導く……というのは春助が見た夢だった。ところが、春助が目が覚めた後、今度は、現実のエルがブラを外しはじめたので彼は驚く。それは単に車内の酸素が薄くなり、苦しかった彼女が下着を外しただけというのがオチ。二段オチのエッチギャグである。お色気の高まりは瞬間風速的なものだが、そのパワーはかなりのもの。これも、22年前に19歳の自分が驚くのも無理はない。

 こんなにサービス精神にあふれた『かぼちゃワイン』だが、当時、アニメファンの大人気作品にはならなかった。その理由については次回に。


[DVD情報]
「The・かぼちゃワイン DVD-BOX1」
XT-2330-7 /カラー/約1200分(48話収録)/8枚組/ドルビー・デジタル(モノラル)/片面2層/スタンダード
価格:37485円(税込み)
封入特典:16頁ブックレット
発売日:2006年9月27日(「DVD-BOX2」11月29日発売予定)
発売元:東映アニメーション・コロムビアミュージックエンタテインメント
販売元:コロムビアミュージックエンタテインメント
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■第80回に続く


(06.10.31)

 
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