アニメ様365日[小黒祐一郎]

第330回 『GALLFORCE ETERNAL STORY』

 『GALLFORCE ETERNAL STORY』は1986年7月26日に発表された作品。劇場公開とビデオリリースが同日だったようだ。したがって劇場作品としてカウントする事もできるのだが、印象としては、これもOVA初期を代表するタイトルだ。
 原作とメカデザインを、アートミックの柿沼秀樹が担当。僕は目にした事がないが、模型誌に連載していた企画が原作だそうだ。キャラクターデザインは同じく、アートミックの園田健一。監督はこの後に、多くのOVAシリーズを手がける秋山勝仁。作画監督は、北島信幸、田中正弘。メカ作画監督は仲盛文。制作として、アートミック、AIC、アニメイトフィルムがクレジットされている。86分の長編だ。
 宇宙を舞台に、女性だけで構成された軍隊の活躍を描くSFメカアクションである。若手女性声優が集結した作品でもあるので、その名前も挙げておこう。主要登場人物は、エルザ(声は川村万梨阿)、ラビィ(松井菜桜子)、ラミィ(山本百合子)、ルフィー(鶴ひろみ)、ポニー(富沢美智恵)、パティ(原えりこ)、キャティ(渡辺菜生子)の7人。彼女達は見た目は少女だが、人間ではなくソルノイドと呼ばれる単一生殖の種族である。ソルノイドとパラノイドの宇宙戦争を背景にして、物語は進む。
 話題として大きかったのが、やはり「女性だけの軍隊」という設定だった。今のアニメファンからすれば、それほどのインパクトはないだろうけれど、当時としては相当、思い切ったコンセプトだった。アニメ史的に考えれば、同年に公開された『プロジェクトA子』と並んで、コアな層をターゲットにすえたアニメの元祖と位置づけられるはずだ。
 僕はこの作品もレンタルで観たはずだ。観る前は、こってりとした濃厚な作品に違いないと思っていた。例えば、同性愛的な人間関係があったりするのだろうな、と思っていた。あるいは、戦争ものなのに女の子達がキャピキャビしているような、ふざけた作品じゃないかと予想していた。ところがフタをあけたら、まるで違っていた。
 これははっきりと覚えているのだけれど、初見時に「意外とマジメな作品だな」と思った。アクションもあるし、メインキャラクターが死んだりもするのだが、ドラマは淡々としていた。キャピキャビした女の子もいたけれど、全体のトーンは、シリアス寄りだった。女の子だけで戦争をやっている事の異常さも、あまり感じなかった。裸になる場面もあったのだけれど、エロティックだとは思わなかった。『GALLFORCE ETERNAL STORY』のキャラクター作画はあっさりした感じだった。エロティックに感じないのは、そういった作画テイストのためでもあったのだろう。メカ作画に関しては、ド派手なところは少ないのだが、丁寧に動かしており、見応えがあった。
 当時は「オタクアニメ」なんて言葉を使ってはいなかったが、超オタク的なアニメを予想していたら、意外と普通のアニメに近かった。そういった印象だった。勿論、作品に対する印象なんて個人差があるから、『GALLFORCE ETERNAL STORY』を観て、濃い作品だと思ったアニメファンがいてもおかしくない。
 「女性だけの軍隊」と設定は、どうしても『超時空要塞マクロス』シリーズのメルトランディとダブってしまう。長くなるので設定的な説明は省略するが、途中で7人の内の1人が、男の子を出産する。男の子はすぐに成長してしまうのだが、彼に対する少女達の反応が、妙に幼い感じになっているところがあり、やたらと照れくさかった。最後は意外な結末を迎えるのだが、それも沢山のSFアニメやSFマンガに触れてきた身としては、あまり新鮮なものではなかった。悪い作品だとは思わなかったけれど、全体に物足りなさを感じた。
 しかし、『GALLFORCE ETERNAL STORY』は人気作となった。OVAとして続編が次々と作られた。第2作『GALLFORCE 2 DESTRUCTION』(1987年)、第3作『GALLFORCE 3 STARDUST WAR』(1988年)までが「宇宙章」。その後『RHEA・GALLFORCE』(1989年)、『地球章』(全3巻・1989〜1990年)、『新世紀編』(全2巻・1991〜1992年)、『GALLFORCE THE REVOLUTION』(全4巻・1996〜1997年)と続いた。それらと別に、キャラクターをデフォルメした番外編『TEN LITTLE GALL FORCE』(1988年)がある。
 と、さも知ったような書き方になってしまったが、僕がリリース時にきちんと観たのは『GALLFORCE 3』まで。その後も数本は観ているはずだが、どれとどれを観たのかも覚えていない体たらくだ。いまいちノレないでいたので、新しいタイトルがリリースされるたびに、このシリーズの人気に驚かされた。多分、僕よりも下の世代のファンが、このシリーズを支持したのだろうと思っている。

第331回へつづく

ガルフォース エターナル・ストーリー

カラー/88分/スタンダード
価格/3990円(税込)
発売元/ソニー・ミュージックエンタテインメント
販売元/SME・ビジュアルワークス
[Amazon]

(10.03.19)