アニメ様365日[小黒祐一郎]

第4回 スタジオ見学

 前回触れた「TVアニメの世界」の中に、東映動画のスタジオ見学についての情報があった。そこで初めて、アニメスタジオの見学ができるという事実に気がついた。それまではアニメを作っている現場に行くなんて思いつきもしなかった。「TVアニメの世界」を手にしてから数ヶ月後のある日、東映動画のある大泉学園が、電車で数駅分の場所だと気がつき、その日のうちにフラフラと東映動画に行った。
 道に迷ってしまった。というかロクに場所も調べずに行ったので、着いたのは夕方で、見学のできる時間ではなかった。その日は、東映動画の建物の外観だけを見て帰ったはずだ。それだけの事だったのだけど、アニメの制作現場に接近できた事でワクワクした。数日後に改めて東映動画を訪れた。その日は見学日ではなかったが、当時の東映動画はファンのためにスタジオの一部にショップを設けており、撮影に使ったセル画、台本、絵ハガキ等を販売してした。そのショップでセル画を買って帰った。どういうわけか、売っていたセル画は放送中の新作のものではなく、『タイガーマスク』や『ひみつのアッコちゃん』といった、当時としても古い作品のものだった。その時に買ったセル画は「『魔法使いサリー』のカブが、魔法でサイボーグ009に変身した姿」という超レアなものだった。我ながらセレクトが渋い。そのセルは今でも持っている。
 詳しくは憶えていないが、東映動画のスタジオ見学に参加したのは、そのひと月後くらいだったと思う。当時は、見学日を設けているアニメスタジオは他にもあり、東映に行ったのをきっかけに、他のスタジオを訪れた。大きなプロダクションだけではなく、作画スタジオにも行った。職業別電話帳で映画製作のページを見て、地元に作画スタジオがあるのを調べたのだ。職業別電話帳には有名アニメーターの名前もあり、電話をしてご自宅にうかがった事もある。うかがったと言っても、挨拶してサインをもらってきただけだ。それも中学生の時の話。今思うと、色んな方にお世話になったり、迷惑をかけたりしている。皆さま、すいません。
 アニメショップにも通った。当時は東映動画以外にも、セル画を販売するショップが都内にいくつもあった。高校時代の日曜は、毎週のようにそういった店に足を運んでいた。いや、都内の高校に通っていたので、帰りにも途中下車して顔を出していた。アニメショップで友達もできた。当時のセル画コレクターの知り合いで、アニメーターや演出家になった人は多い。今も付き合いのある人もいる。江古田に、まんが画廊というマンガ好きが集まる喫茶店があり、そういったところにも顔を出していた。その頃は、アニメ関連、マンガ関連の場所に行くのが楽しくて仕方なかった。

第5回へつづく

(08.11.07)