色彩設計おぼえがき[辻田邦夫]

第44回 もう1回だけ『墓場鬼太郎』のこと——画像解像度のお話

怒濤の確定申告もなんとか乗り切り、ようやく時間に余裕ができてきました。この冬は『墓場鬼太郎』でずっと多忙だったので、友達との鍋の約束や、呑み会のお誘いもず〜っと後回しにしてきちゃったんですが、さあ、これからドンドンやりますよお!

ただ、これだけ暖かくなっちゃうと、鍋はどうなのかな? 微妙ですかね?(苦笑)

ところで昨日、おいしいと評判のジンギスカンのお店に行きました。これがね、もう予想以上においしかったんですよ。ラム肉も北海道の某有名店っぽい美味しさでグッド! ガンガン食べちゃいまして、いい気分で帰宅しました。

でね、ジンギスカンって焼き肉とおんなじで、服から髪からみんなニオイがついちゃうじゃないですか。ラム肉なので焼き肉以上ですね。なので今日は、出がけにシャワーで念入りにごしごしくまなく洗いまして、当然服もしっかり着替えてスタジオに来たんです。ところが、あれ? なんだかほのかに美味しいニオイが……。

あっ! しまった!(汗)

上半身はシッカリ完璧だったんですが、実はジーンズ、おんなじの履いてきちゃいました(汗)。自分の席で椅子にすわったら、太ももあたりから、ほのかに……。

ううむ、油断した! 恐るべしジンギスカン。でもまた食べに行っちゃいます!

さてさて。

絶賛大好評放送中の『墓場鬼太郎』ですが、先週放送の第10話、関東地区での視聴率が5.8%だったそうです。いやあ5.8%! しかも最大瞬間視聴率7.3%だったとのこと。日頃あんまり視聴率と縁のない作品ばかりやってるもので、なんかちょっと興奮しますね(笑)。

ちなみに、それがどれくらいすごい数字かっていうと、キムタク主演のドラマがとる視聴率くらいすごいです(笑)。

あんな時間帯にもかかわらず、そんなにも多くの方に観ていただけて、ホントに嬉しいです。前にも書きましたけど、僕ら制作スタッフは実際の作品を観てもらえるのがなにより嬉しいのです。みなさん、ありがとうございます。

そんな『墓場鬼太郎』も製作は全話すべて終了しておりまして、残るはDVDジャケットの作業くらいになりました。

で、今日は画面の画像解像度のお話。

『墓場鬼太郎』に限らず東映アニメーションの作品は、基本144dpiの解像度で作っています。基本の原画のサイズ(スタンダードな動画用紙)がA4の紙に収まるサイズで、データ的にどのくらいの大きさかって言いますと、『墓場鬼太郎』の場合、基本の彩色用データは「1596ピクセル×898ピクセル」、撮影用のフレームよりひと回り大きくしています。背景画も同じです。やはり144dpiでデータ化されます。これらを組み合わせて、フィルターかけたりテクスチャー載せたり線に強弱つけたりと、いろんなことをして撮影しまして、ああいう画面にしてるわけです。

144dpiってのは業界的には高めの設定のようです。東映はデジタル彩色が始まった当初からこの解像度だったのですが、他のプロダクションさんの作品では120とか105とか95とか結構まちまちだったりします。解像度が大きいと当然データの大きさも大きくなるわけで、作業に使うコンピュータのスペック如何で作業効率が落ちちゃうわけですね。とくに撮影さんは、画面効果の指定が増えれば増えるほど、1カット撮る(合成する)のにめちゃくちゃ時間がかかっちゃうそうです。

でもまあ、最近は基本のマシンスペックが格段に向上してきましたし、地上波デジタル対応のHD製作の作品が増えてきたこともあって、だいたいにおいて144dpiというのが業界主流になりつつあるようですね。

この144dpi、標準のフレームのカットとかならば十分な解像度なのですが、ぐぐっ! と小さく寄ったフレームを使うカメラワークのカットでは、さすがの144dpiも画が荒れてしまうのです。で、そういうカットの場合は、さらに大きな解像度での作業ってことになるのですが、そうなると彩色は大変です。あまりデータが大きくなると彩色用のソフトがサクサクとは動いてくれません。さらには撮影さんも同様に大変です。

たまに、フレームの縮小比率で単純計算して288とか300なんて指示入れてくる演出さん、助手さんもいますね。1枚やそこいらならまあなんとかですけど、連番で30枚も40枚もそんな高解像度にされちゃうと、まず作業にならないです。っていうか、実際そんな高解像度にしなくても十分きれいな画面になるんですがね(苦笑)。

ただし、これがポスターやスチール画となると話は別です。動いてる画面用のデータと印刷物などになる静止画像とでは、考え方が違うのです。

動きのある映像用と違い、ポスターやジャケットは静止状態で手にとってじっくり見られちゃうってこともあるので、やはり高解像度で仕上げて、線にジャギとかが出ないように気を配ります。

また、この手の版権関係の画は、どういう使われ方をするかわからなかったりするのです。たとえば、ホントにDVDジャケット限定の素材であれば、実は本編用より大きめくらい、それこそ288dpiとかでも全然大丈夫なのですが、いきなり大伸ばしされて店頭に販促ポスターとかで使われちゃったりして、「あちゃー!(泣)」なんてことも往々にしてあるのですね。なので、この手の版権ブツは大きめに作ることにしているのです(苦笑)。

『墓場鬼太郎』最初のキービジュアルとなった、土から赤ん坊の鬼太郎が出てくるあのポスターですが、A3判の大きさの用紙の原画でさらに400dpiで画面作業をしています。“しょこたん”のCDジャケット用のスチール2点も、それぞれB4サイズの用紙の原画でこれも400dpiでの作業。そしてDVDのジャケットも同じくB4サイズで400dpi。どれも彩色して、背景と組んで、本編画像と同様の撮影処理をかけてます。ちなみにすべて、キャラデの山室さんの描き下ろしです。

本編カットのデータに比べてとんでもなく大きな画像データのため、撮影処理かけるときテクスチャーの大きさがまるで足りなくて、ずいぶん大変だったそうであります。

ようやくWeb上とかでDVD1巻のジャケット画像も見かけられるようになりました。ぺったりとした昔の印刷物のようなあの画は、実は外ジャケットのデザインで、ソフトビニールのパッケージ本体の方のジャケットは、あの絵柄をもとに本編のまんまの彩色と撮影処理で作ったモノになります。なかなか怪しい(妖しい)仕上がりになってます。乞うご期待です。

■第45回へ続く

(08.03.18)