色彩設計おぼえがき[辻田邦夫]

第42回 水木しげる原作つながりでちょっと思い出した『悪魔くん』のこと

今週は原稿落とさずがんばってます!(爆)

いやあ、3月! 一気に暖かくなってきましたよ、東京。さすがにまだ夜中〜朝方は結構冷えるのですが、日中はもうぽっかぽか。通勤途中、思わず公園のベンチでひなたぼっこしたくなっちゃいます(笑)。

いよいよ本日から羽毛のコートは“さようなら”にしました。クリーニングに出して、来シーズンまでクローゼットの奥に仕舞い込みます(笑)。

そんな3月。

絶賛大好評放送中の『墓場鬼太郎』ですが、先週すべてのキャラクターの色味を作り終えまして、ほぼ僕の作業は終わりました。あとはそれぞれ#10、#11の色指定さんにお願いしてる分のチェックと、本編のラッシュチェックです。

放送の方も関東地区で今週木曜深夜に第9話「霧の中のジョニー」ということで、残り3話であります。

さてさて。

最近ネットで『墓場鬼太郎』関係の感想とか見てまわってますと、必ず行き当たるのが「このスタッフで『悪魔くん』やってくれないかな?」っていうご意見。残念ながら今のところそういう予定はないのですが(苦笑)、あれ? 『悪魔くん』? これって以前やりましたよ、僕。

というわけで、『悪魔くん』のお話。

シリーズ構成/小山高生、シリーズディレクター/佐藤順一、キャラクターデザイン/鈴木欽一郎、美術デザイン/椋尾篁。1984年の4月放送開始、『聖闘士星矢』の後番組でありました。

ああ、そうなんですよねえ、そういえばこれも水木しげる氏原作でありました。やっぱり妖怪モノは水木さん原作って感じですよね。まあ、作ってる僕らは(少なくとも僕は……!)、あんまり原作を意識してなかったような……。

『悪魔くん』と言えば、僕がまだ子供の頃、TVで実写版があったのです。まだ白黒だったのかな? それがやたらと怖くて(笑)、でも、毎回欠かさず観ていたのです。悪魔くんがオカリナ吹くとメフィストの頭から煙が上がるのが、なんかヘンにリアルな感じで、それがどうにも怖かった気が。アニメ版を僕がやらせてもらえることになって、その怖かったTVがずっと僕の中にあったのを憶えてます。

アニメ版の『悪魔くん』は、メフィストが「二世」ってことでころころした感じの子供キャラになり、全体に子供向けな可愛いキャラデザインになってました。百目も可愛かったし(笑)。その分、各話のゲストとして登場する悪魔たちは、結構シッカリとしたキャラだったような……。

結局この『悪魔くん』のシリーズでは、メインキャラと各話のメインゲストの悪魔たちの彩色設定関係とオープニング、エンディングの色指定と検査、本編の色指定もシリーズ開始直後の数本を担当させていただきました。ああ、あと1本目の劇場版も参加させていただきました。

劇中「十二使徒」という悪魔くんの仲間たちがいて、そいつらがぞろぞろとよく一緒に画面に登場してきまして、それが結構大変だったのですね。当然そのころはまだ仕上げはアナログ。アニメセルとセル絵の具での仕上げでしたから、1枚の動画に描き込みになってくるともう大変。結構多かったんですよね、そういうカット。なんせ枚数制限の東映でしたから(苦笑)。動画枚数減らすため、同じ動画に描き込みにされちゃうんですよ。仕上げはいい迷惑でした。ま、そういうのは今でもあるんですがね(苦笑)。

で、そいつらがまた、一斉にハイコンやら夕景の色変えとかになるんですな。一つの色変えで12体分全部作らなきゃならなくて結構閉口したものでした。

この十二使徒、悪魔くんがオカリナ吹いて魔法陣から呼び出すのですが、この時、光る魔法陣からの光源のフットライト系の影つけの特殊彩色になるんですが、これがいいんですよ。ピンク〜ムラサキ系のハイコン調で、BGとセルがぴったり僕の大好きな色遣いに仕上がって、とっても嬉しかったです、と自画自賛(笑)。

また、本編中登場するタロットカード。これの色指定もさせてもらいました。自腹で本物のタロットカードを買ってきまして、一所懸命お勉強したのも懐かしい(笑)。

それまでず〜っと『聖闘士星矢』やってきた僕。実は『星矢』って、もの凄く狭いところで展開していくお話で、登場するキャラたちも実は限定されてて少なかったんですね。だいたいにおいて、1対1で闘ってるばっかだったし(笑)。その点、『悪魔くん』は、基本的には現代の日本の日常のなかで展開していくお話だったので、実にいろんなモノたちが登場しまして、とっても勉強になった作品です。

とにかく、色指定するってことは、いろんなモノを知らなきゃできないんだな! と痛感させられたのです。現実に実在するものはもとより、想像を膨らませてなにかを作り出していくという作業も、まずは世の中に実際にあって、触れられるモノをシッカリと理解しておかないと、想像を積み重ねていって作った“色”に説得力が持たせられない(苦笑)。

それは今も僕の考え方の根底に流れているんですが、そんなことを教えられた作品だったのでした。

そうそう、余談ですが、この『悪魔くん』のオープニング曲、これカラオケで歌うと盛り上がるんですよ! もうね、大合唱ですよ!(笑)

そんな『悪魔くん』、これDVDとか発売されてなかったんですね? 今回『墓場鬼太郎』をきっかけに、この『悪魔くん』もDVDにならないかなぁ、と期待してる僕であります(笑)。

■第43回へ続く

(08.03.04)