色彩設計おぼえがき[辻田邦夫]

第12回 番外編……窓口と、戸籍をめぐる冒険

お久しぶりです。

実は今月はじめに父が永眠しまして、その関係のあれこれと、さらにそのしわ寄せで仕事がどばぁ〜! っとなってまして、よってしばらくお休みいただいてました。まあ、仕事の方はまだまだ、どばぁ〜! っという状況が続いてますが、まぁなんとか……(遠い目)。

ということで、また始めます。

さてさて。

で、いきなりなんですが、実はなんかまだ調子上がらないので、今回は番外編です(苦笑)。しかも、全然アニメの話ぢゃないです……(汗)

アニメの中では、実は割と人ってよく死んだりしますが、人がね、1人死ぬって、実はめちゃくちゃ大変なことなんですよ(苦笑)。死ぬこと自体、そりゃ大変なことなんだけど、そのね、死んだあとがまたいろいろ大変なんですよ。

父は病院で亡くなったんですが、まずそこで「死亡判定」ってのをやるのです。医師が生体反応(脈、心音、呼吸、瞳孔の反射)がないのを確認して、そこで初めて「死」が確定します。何時何分、死亡、ってヤツですね。その判定をもとに病院が「死亡診断書」ってのを出します。それを役所に出して受理された時点で、日本国民である父は日本国の社会上「死亡」となり、戸籍から「除籍」されるわけです。

病院から手配してもらった葬儀社のお迎えで、一旦家に帰りいろいろ段取り等相談しまして、通夜、告別式ってことになります。我が家は母がすでに他界してたので、長男である僕が「喪主」を務めることになりました。

もうね、葬式なんて15年ぶりで、前回は父が喪主としてすべて取り仕切ってたので僕は正直よく憶えてないのですね。しかもその時は『劇場版ドラゴンボールZ 極限バトル!三大超サイヤ人』の制作追い込みのまっただ中で、通夜・告別式以外はずっと仕事に出てたのですね……って、ああ、そのヘンは今回もまったく一緒だったですね(苦笑)。

葬儀の関係の段取り等は葬儀社にお任せなのでOKなんですが、自分で手配、連絡しなくちゃならないのがお寺関係。菩提寺の住職に来てもらわなくちゃならないし、戒名だとかお布施だとか、もうね、ドキドキですよ。だからもう、死んでる父を叩き起こして相談したいくらい(笑)。

それでもなんとか難関をクリアして、通夜・告別式と進みます。

告別式の後、火葬にするんですが、その際にも許可が要ります。「火葬許可書」を役所からもらっておかねばならないのです。で、お骨になったら、今度は埋葬の許可が要ります。「埋葬許可書」。これがないと、いくら墓の準備があっても、お寺では埋葬ができないのですよ。

そんなこんなの許可書責め(苦笑)。ですが、これらはすべて葬儀社の方で代行して申請、受理をしてくれてたので問題なかったのですが、大変だったのはその後なのです。

父が営んでた社会生活の諸々の手続きを、停止したり変更したり、あるいは相続したりしなくてはなりません。

役所関係だけで国民年金、健康保険、老人保健、介護保険……。それから銀行口座の停止、各種公共料金の引き落としの停止と名義変更などなど。あ、それから、保険金の受け取りとか。しかも、いくつかは「死後14日以内」とか、ただし書きが……。

で、窓口まわりをすることになります。とにかくね、違うんですよ窓口が、ぜんぶ(苦笑)。しかも、それぞれ申請とか手続きするために戸籍謄本とったり、住民票とったり。

まずは国民年金。これは社会保険事務所。受給停止手続きのためには、年金証書のほか「死亡届け記載証明書」と、除籍された本人の戸籍謄本が要ります。年金は死亡した月までは支払われることになるのだそうで、それはいいんですが、父の口座は停止にしちゃうので、遺族相続続人の代表者である僕が受け取ることになります。そのための審査っていうか、身元確認っていうか、そのために僕と父の続柄がわかる戸籍謄本と住民票が必要。

国民健康保険、老人保健、介護保険は市役所が管轄。ただし、健康保険は健康保険課、老人保健は福祉課、介護保険は老人介護課、ってな具合に担当部署、窓口が別でそれぞれ個別に手続きが必要。

銀行口座の停止の方は、まずは本人の戸籍謄本を「生まれてから死んで除籍になるまで全部」必要とのこと。さらに今度はその預金を「相続」するっていうことになるので、相続する僕ら兄弟の戸籍謄本、住民票、印鑑証明などなど。

公共料金関係は片っ端から電話掛けまくって、名義変更と引き落とし口座変更の手続き書類を郵送してもらう手配。

それと、生命保険(簡易保険)関係では、銀行と同様に戸籍謄本関係諸々と、疾病保険もあったので入院してた病院へ行って「入院証明書」を発行してもらわねばなりません。

ちなみに実家は埼玉県狭山市。僕は東京都中野区。で、父も僕も本籍は中野区だったりします。なので、各種手続きは基本狭山市、それに必要な書類は基本中野区、そんな感じで行ったり来たりだったのです。

……やれやれ(苦笑)。

こんなこと、アニメじゃ描かれたことないですよね? 映画では「お葬式」ってのがあったけど、こんな手続き関係のことまではなかったなあ……。

ところで、晩年父は狭山市の住民であったのですが、そもそもは東京・中野に本籍がありました。で、「生まれてから死んで除籍になるまで全部」の戸籍謄本を取りに中野区役所に行ったのです。「生まれてから死んで除籍になるまで全部」というのは、結婚したり、子供が生まれたりして戸籍が更新されるたびごとすべての写しが必要、という意味。で、出してもらった謄本には、母との結婚や母の死、僕の誕生など、さまざまな父の歴史が刻まれていました。

ところが、コトはここ中野区役所では終わらなかった。実は、父は第二次大戦後に中野区に本籍を移しているのですが、そもそもの最初、父の生まれは「東京市牛込区」だったのです。「東京市牛込区」いまの東京都新宿区です。よって、今度は新宿区役所へ。

新宿区役所で待つこと一時間あまり。出してもらった謄本には、父の出生の届けがハッキリと記されておりました。さらには、この牛込区への本籍の移動が父の出生の2年後で、本当の意味での戸籍上での父の初めての登場は、父の父、僕の祖父の戸籍があった富山県富山市まで遡ることになるというのです。

いやぁ、ちょっと感動。戸籍謄本追っかけることで、80年の父の一生をあらためてシッカリと感じたのでした。

で、まだ諸々の手続きはいくつか未完の状態で、ずるずる継続中です(汗)。いつ終わるのでしょうかねえ……。

■第13回へ続く

(07.04.24)