色彩設計おぼえがき[辻田邦夫]

第66回 昔々……(43) スタジオを疾走する午前5時! 劇場版『DRAGON BALL Z 激突!!100億パワーの戦士たち』

バナナがありません。

なんでも、某バラエティ番組でダイエットにいい、とかやったらば、その影響で猫も杓子も「バナナ、バナナ」だそうで、日本国中バナナが品薄とのこと。ったくもう、余計なことを!

僕は常日頃からバナナを常食にしておりまして、ダイエットとかに関係なく食べておりました。ちょうどいいんですよ、忙しいときの食事に。消化もいいし。

それがですね、このくそ忙しい時期にどこにも売ってない。非常に迷惑しております。

ハッキリ言います。ちょっとやそっとバナナ食べたくらいで痩せません! いつも食べてる僕が言ってるんだから間違いないです。「ダイエットにバナナ」とかいう前に、そういう人は日頃の根本的に食生活見直しなさい!

ああ〜、バナナぁ(号泣)。

さてさて。

劇場版『DRAGON BALL Z 激突!100億パワーの戦士たち』。編集、アフレコもなんとか終わり、音づけ作業の期日を睨みつつ、色指定&彩色上がりの検査、という日々でありました。

編集・アフレコからダビングまでの約2週半くらいの期間、日中彩色上がりのカットのセル検査をして、夜は原画に色指定、というサイクルが続きます。この当時、原画に色指定して発注すると、だいたい1週間で動画+仕上げ作業してセルになって上がってきました。

たしか、マニラのスタジオはもう少しかかってたんじゃないかな? しかも、まだこの頃は、フィリピンが政情不安だったりしてて、しかも火山の噴火とかもあったりして、ちょっとスケジュールに余裕のない仕事は微妙だったりしてた記憶が……。

で、まあ、そんなこともあって、最後の追い込みはやはり韓国のプロダクションにお願いするのがメインになっていくのです。で、太陽色彩カットがどんどん増えていきました。

最後のカットの色指定は午前5時でありました。

その日は東映動画の大泉スタジオ発で韓国への手持ち便が出る、ということでした。その出発が午前5時。そのぎりぎりまでかかって、作監の前田さんが原画に修正を載せてくれました。その日の残りは数カット。1カット修正が終わるごとに制作進行さんが僕のところ(ちょっと離れた部屋なのです)に持ってきてくれて、色指定入れると今度は仕上進行さんが梱包へという流れ作業。

ところが、最後まで残っちゃうカットですから、それなりにいろいろ大変で、作画の内容も修正作業も重いモノでありました。たしかその日の便は、韓国へ帰られる某プロダクションの部長さんだかで、ご本人はもう準備万端で出発時刻を待っておられるのですが、出発時刻が迫ってきても、まだ運んでもらう荷物がまとまりません。早く出発したいというご本人をなんとか取りなして、カバンを開けた状態で待ってもらっておりました。

最後の最後のカット、進行さんが大急ぎで僕のところに持ってきたのがちょうど5時。今ならデジタル彩色ですから、色指定が大ざっぱだったり「自由彩色」で出しても塗り上がってからなんとかできますが、絵の具の彩色ですから、キッチリ色指定入れて出さなければなりません。ざーっとひととおり原画チェックして色指定入れて、そのカット持って僕もスタジオ内を走って、待たせてる荷物にぶち込んで……。

いやはやそんな午前5時過ぎでありました。なんかちょっとクセになりそうな不思議な充足感です(苦笑)。すっかり眠気も覚めてしまった、2月のまだ暗い寒い朝でありました。

これにて色指定作業は終了。さあ、これからは大量のセル上がりとの挌闘戦が始まるのであります。

■第67回へ続く

(08.10.07)