色彩設計おぼえがき[辻田邦夫]

第172回 コレがきっかけで業界に入りました!という話

なんかもう、すみません(汗)。毎週の連載のハズが月イチ連載に成り果ててます。申し訳ない。しかも流れをぶった切っての今回もちょっと単発コラムであります。
連載原稿落としまくるほどに僕を追い込んでいる張本人『輪るピングドラム』でありますが、いよいよ2クール目、後半戦に突入しました。制作はもうあと残すところふた月ばかり。実はこれ、某話の撮影追い込みの立ち会いの最中に書いてるのですが、これ書いてるのが10月17日ですから、ほんと残りあと数週間ってことになります!うわっ!(汗)
それでもこの数ヶ月、ちょっと希有な体験しています。ひっきりなしにやってくる雑誌用版権スチールの仕事に、特集記事の取材の話。かつて自分が関わった作品でこれほどまでにこんなに雑誌に取り上げられたりスチール、ピンナップがバンバン載ったりってことなかったですもの。作品が注目を浴びる、ってのはこういうことなのね! と、あらためて驚かされましたです。
ともあれ、今月末にはいよいよBlu-rayとDVDも発売が始まりますね。そちらのジャケットの作業も進めつつ、本編の放送も怒濤の展開、現場の作業も熱いです。あとふた月、こちらにはまだまだご迷惑おかけすると思いますが、もうしばらくご容赦ください。そして、頑張りますよ!

さてさて。
そんな忙しいけれどでも超絶楽しい『輪るピングドラム』の日々のなかで、ある話数の追い込みの最中、ふと訪れたラッシュの待ち時間でとある制作さんと雑談しておりました。なんと『少女革命ウテナ』の話。実は彼女、大学時代に『少女革命ウテナ』の放送観てはまってしまって、それがきっかけでアニメーションの仕事を志しちゃったらしいのでした。
そういえば、僕の後輩の色彩設計さんも短大時代に『ウテナ』見ちゃってはまっちゃってこの業界に入ってきたって話聞いたし、『四畳半神話大系』でご一緒したとある演出さんも『ウテナ』見ちゃってそれがきっかけでこの業界目指して来た、と先日吐露されておりましたっけ。いやあ『少女革命ウテナ』なんて罪作りな作品だったんだろ!(笑)

なんだかんだこうして長い間仕事をしてくると、時折……というか最近では結構頻繁にそんな話を(笑)。若いスタッフたちと雑談していると、結構そういう話になるモンです。「辻田さん、『◯◯◯』参加されてたんですね! 僕、観てました! あれがきっかけで、この業界目指そうって思ったんです!」みたいな展開。
僕はずっと東映アニメーションで全国放映の多い作品の仕事をしてきたので、かなり全国区的に僕の携わった番組、作品をたくさんの方が観てくれてたワケですよ。しかも子供〜ティーン向けの作品が多かったので、ひょっとしたら子供の頃にまさに「出会っちゃった!」「アニメやりたい!」とか思っちゃった、心に誓っちゃった人もいらっしゃるかも知れませんねえ。
子供の頃のそうした自分的クリティカルヒットじゃなくっても、大きくなってからふと出会ってしまった、例えば先ほどの彼女の『ウテナ』みたいな場合もある。あ、むしろ、ある程度大人になってきてからのそういう出会いは、やはりリアルに影響与えちゃうのかもしれません。

で、まあ、ふと自分自身を振り返るとですね、ああ、僕はやっぱり『宇宙戦艦ヤマト』がイチバンの根っこなのかなあ、と思いますね。
僕らが作ってきてるTVアニメーションは基本娯楽であります。別に芸術作品でもなければ、崇高な教育的番組でもない。でも、それでも、一所懸命に作ったそんな作品に何らかの影響を受けて、自らの進むべき道を定めてここまで来ました、なんて聞くと、ああ、頑張ってやってきてよかったなあ、と思うのであります。
なんかね、感慨ですね、そういうの。 
いま頑張って作ってる、この『輪るピングドラム』も、もしかしたら誰かの将来に影響与えることになるんでしょうかね? 何年か後に「あの『輪るピングドラム』見てはまってこの業界に……」なんて人が出てくるのかもしれません(笑)。

第173回へつづく

(11.10.18)