色彩設計おぼえがき[辻田邦夫]

第159回 昔々……97 1995年その17 色見本の嵐と、コピックは神! の11月、12月

みなさん! 確定申告はお済みですか? 今年の確定申告は3月14日までであります! 去年「ああ、来年は税理士さんに頼んじゃお!」って思ってた僕なのでありますが、結局今年も自力で計算&書類作成でありました。「ああ、来年こそは……」とか。あ、いや、でもきっと、来年も自分でやってるんだろうなあ……(遠い目)。
……というか、実はこの原稿を書いてる時点では、まだ終わってないんですよ、僕の今年の確定申告(爆)。予定ではこの原稿が載る頃にはちゃんと終わってるハズ、ハズ、ハズ?(汗)
さあ、果たして!?

さてさて。
季節は秋から晩秋へと進みます。『ご近所物語』の制作はなんとかほぼ順調に進んでおりました。だいたい毎週1本のペースで美術&色指定の打ち合わせが設定され、そしてほぼ同じペースでキャラクターの色味チェックも進みます。
キャラクターの設定作業の手順は、メイン系のキャラクター設定の場合、馬越さんが描いた基本のデザインのキャラクター設定をもとに着せ替え用の下敷きを作りまして、コスチュームデザイン担当の川村さんがその下敷き設定の上に「着せ替え人形」のように着せ替えコスチュームを描いてくれます。
メインで登場するキャラクターはミカコ、ツトム、ジロー、勇介、リサ、ピーちゃん、そしてバディ子という7人。後半さらにキャラは増えていくことになるのですが、これらの着せ替えが毎回あるわけです。1人1着として毎話数だいたい7体の服が登場。まあ、ある程度回を重ねていけば服装も溜まっていくので、そうなればある程度使い回しもきくんだけど、このシリーズ、ある程度季節も追っかけていくわけで、そうなると夏服だったり冬服だったりと……。1年間通してのお話でありましたから、それぞれのキャラにつき、かなりの服装ができました。
メインのキャラクターに対して、各話で登場するゲストのキャラクターや小道具の設定については、原則として各話の作画監督さんが描き起こします。先のメインの設定と合わせて、毎話ごとにかなりの点数の色設定を作っていったのでありました。

それらのキャラクター設定を色見本にしていくわけなのですが、色見本は全部セル画。セル絵の具で彩色です。Macを使い始めたといっても、現在のデジタル彩色のように画面上で設定画に色を塗って色見本作って、とかそういうレベルにはまだほど遠かったのでありました。そしてそれらの色見本を全部自分でセル絵の具で塗ってセルに仕上げていくのは時間的にもなかなか大変なわけで、なので社内の仕上げさんに塗ってもらうわけです。でもまずはその前に、自分自身、ちゃんと色のイメージを持たなくてはなりません。
以前の作品では、設定画のコピーに色鉛筆を何色も使って丹念に塗り分けて、自分なりにイメージ作ってみてたのですが、所詮はまあ、無理矢理の脳内変換。頭の中で考える時点で、すでにかなり具体的にセル絵の具の番号で色のイメージができあがっているのですが、当然ですが、セル絵の具と色鉛筆はまったくの別物です。いくら自分で絵の具の番号で思い込んでも、あくまでもセルで色見本作る際の塗り分け指示見本にしかなりません。しかもそれ自体に結構な時間がかかるし、もうちょっと塗り上がりに近いイメージが作れないかなあ? と。それはずっと長く懸案事項でありました。

そんな時、画材屋でとあるカラーマーカーペンを見かけました。「コピック」っていうシリーズです。試し書き(というか試し塗り)してみたところ、これがね、とってもいいのです。アルコール・マーカーなので手早く均一に塗り上げることができるし、何より発色がよい。ということで、当時発売されていたほぼ全色を光の速さで購入(笑)。ドド〜ン! と仕事部屋とスタジオに揃えちゃいました。あ、そういえばこのコピック、矢沢先生の仕事場にもあったのですよね。
カラーコピー用の紙を使って白黒コピーしたキャラクターの線画の上に、頭の中で考えた配色をこのコピックを使って置いていきます。ちなみに、なぜカラーコピー用紙を使ったのかというと、普通のコピー紙に比べてカラーコピー紙の方がインクの乗りも塗り上がりの発色も断然よかったからです。頭の中で考えているセル絵の具の、その番号の色に近い発色のコピックで塗っていくわけですから、塗り上がったコピー設定は、かなりセルのイメージに近い雰囲気に仕上がっています。そして、それにあらためて絵の具の番号で色の指定していって、仕上げさんに色見本セルを彩色してもらっていったわけです。

このコピック、使っているうちにだんだん「この色とこの色の間くらいが◯◯番の絵の具の色なんだよね」と、製品になっているもの以外の色味も欲しくなってきちゃいます。それで、今度は補充用のインクを自分でブレンドして調色して、新しい自分のオリジナルの色のコピックまで作って使っておりました(笑)。だんだんマニア化していきます(笑)。
それくらい、このコピック使ってキャラ色を考えるという手法は、僕にとって画期的なことでありました。Macも新兵器であったのだけれど、もうこっちは即戦力! とにかく、セルの塗り上がりにかなり近い発色で考えた色のイメージを再現できるわけなので、キャラクターの色見本のみならず、例えば複雑な絵柄のスチール画などの色指定にも、これを使って自分で塗り分けて色を置いていけば、自分自身のイメージの確認にもなるし、セルの試し塗りをお願いする際にもできあがりのイメージも細かい塗り分けも、塗ってくださる方に伝わりやすいのでした。

そんな風に『ご近所物語』のキャラクター設定の色作業を捌いていく日々であったのですが、そのウラで実は並行して別の作品のお仕事が稼働中だったのであります。そんな1995年秋でありました。

第160回へつづく

(11.03.08)