色彩設計おぼえがき[辻田邦夫]

第150回 昔々……89 1995年その9 原作者にお会いした4月

みなさま、あけましておめでとうございます!
昨年最終の原稿を落としまして(あ〜う〜)、年越しでスライド登板になりました!
ああ、記念の第150回目だったのに……
こんな僕でありますが、今年もよろしくお願いいたします。

原稿と同じく年越しになっちゃったのが年賀状。ここ数年、年末がギュギュッと忙しくて、結局年が明けてから「あと出しジャンケン」みたいに正月2日か3日に書いて出すのが恒例化しちゃってます。ああ、ごめんなさい。ごめんなさい(汗)。
それにしても年賀状。出す枚数、いただく枚数が年々減少傾向です。なんかね、メールでご挨拶したり、あるいはメール添付で年賀状画像送ったり、というケースが増えてます。そして今回結構多かったのが、出そうにも相手の住所がわからない! というケース。
携帯電話の番号とメールのアドレスは知ってても、住所となるとこれが結構知らなかったりしてる人が多いんですよ。確かに最近じゃ、携帯とメアドでほぼ連絡関係は済んじゃうモノなあ、と。まあ、それが現代の我々の生活スタイルなんですね。
年賀状準備して出すのが面倒なくせに、年賀状の文化が少しずつ後退していくのはちょっと寂しく感じてたりしてます。

さてさて。
関さん、梅澤さんとのお話から数日後の4月27日、僕らは集英社の割と広い会議室におりました。とても大きな会議室を、天井まである可動式の仕切りで半分に区切って使ってるような、そんな会議室です。さすが大手出版社! な感じ。そんな会議室に僕らは通されて、おとなしく席に着いて先生の到着を待っておりました。原作者の矢沢あい先生とのいわゆる「顔合わせ」というヤツです。
制作スタッフ、東映動画側からは、関プロデューサーをはじめ、シリーズディレクターの梅澤さん、シリーズ構成・脚本の松井亜弥さん、キャラクターデザインの馬越嘉彦さん、コスチュームデザインの川村敏江さん、美術のゆきゆきえさん、行信三さん、制作担当の風間さん、そして僕。TV局からは大阪朝日放送の担当プロデューサーの小竹さん。メインスポンサーの株式会社バンダイからタイアップで出す玩具を作る担当部署の方々。広告代理店の旭通信社の担当の方。そしてそして、原作者の矢沢あい先生と「りぼん」の編集部の担当の方。そんな面々が一同に顔を合わせての会議です。
制作スタッフの面々もあらためてこの席でお互いちゃんとご挨拶。美術のゆきさん、行さんとはよくスタジオでは顔を合わせていたのですが、たぶんこれが実際に一緒にお仕事をする初めての機会でありました。キャラクターデザインの馬越さんとは、たぶん初めてお会いしたのだと思います。「すごく上手いアニメーターさん」というウワサはなんとなく聞いていて、ひょっとするとこれまでに何度もすれ違ったりとかしてたのかもしれないけど、ちゃんと紹介をされたのはこの日が初めてでありました。そしてこの時にはまだ、僕ら、このあと何年もこの日曜朝の放送枠を続けていくチームになっていくことになるとは、まったく思いもしなかったのであります。
そして、初めてお会いした矢沢あい先生であります。当然女性の方だとは分かってたんですが、もっと年上でベテラン! って感じの方かと思ってましたが、実際の矢沢さん、僕らよりもうちょっと若い、明るい感じの、ヘンな言い方ですが、普通の方っぽいなあ、というのが第一印象でした。「ああ、この方が描いてるんだ」新鮮な感動がありました!
あ! そうそう、実はリアルにマンガ家さんにお会いするのって僕には今回がほぼ初めてのことなのでした! 過去にもマンガ原作の作品のアニメ化には何度も参加させてもらってきた僕なのですが、原作者のマンガ家さんとは打ち上げの席とかでチラッとお見かけする程度。色を作る際にも、渡された原作のカラー資料を参考にして作業していくくらいです。こうして番組スタート前にお会いして打ち合わせをするというようなことは今までなかったのでした。
なんかもう、すべてにおいて緊張です。やたら喉が渇いて、出されたお茶を飲みまくっておりました。

さて、会議です。まずはひととおり名刺交換(!)と自己紹介。関プロデューサーの司会進行で会議は始まりました。
関さん、小竹さんから、まず番組についての概要の説明がありました。放送枠のこと、だいたいのターゲットの年齢層やその層に訴えかけていく番組のポイントのことなどなど、企画書に沿った形での説明、解説です。ついでバンダイさんから、番組タイアップということで、劇中に登場するアイテムのいくつかを玩具として商品化していく説明。具体的にいくつかの商品化予定の候補が挙げられた資料が配られました。
いやあ、こういう会議って初めての体験でありました。「こうしてアニメーションの番組は作られる」というまさにその現場! という感じ。「ああ、番組作るのって、シッカリとビジネスなのだ!」という実感が。「こういう大きな仕組みの中で僕らはアニメーションの映像を作っている」と。とかく実作業に没頭していると、往々にして、仕事でありながら趣味みたいに楽しんじゃってる自分がいたりしちゃいがちなんだけども、「これは仕事なのだ、ビジネスの一部分なのだ」と。当然ながら頭の中では分かっていたことなのですが、こうしてこういう会議、こういう場に身を置いて初めて、痛切にそれを感じました。

さて、矢沢先生からのお話です。先生からは、『ご近所物語』を描かれてる上で、ご自身が気をつけられてるポイントのお話とかをしていただきました。ファッションのお話や作画の技術上のお話も。ファッションについては、僕ら現場側からも先生に質問を投げました。登場人物たち、それぞれに着せる服は何を参考にしていけばよいのか? これがかなり僕らの中では重要なテーマでありました。そしてもうひとつ気になってたのが、デジタルっぽい作画処理について。実はこの『ご近所物語』やその前に描かれていた『天使なんかじゃない』でも、随所にコンピューター、Macintoshを使って画像加工されたページがあるのです。それについてもいろいろ質問。
ファッションについては、矢沢先生の方からキャラクター別にファッションの参考資料を作っていただくことになりました。それを後日、送ってくださることに。Macintoshについては「あ〜、あれ、わたしあんまりわかんないんですよ(笑)」と。どうやら別の方と一緒に作業してて、その方がそっちは担当なのだとか。そして、美術のゆきさんから「あの、マンガ家さんの仕事場の描写が出てくるんですが……」との質問。漫画家さんの仕事場ってどんなフンイキなのか、どんな画材とかを使ってあるいは置いてあるのか、実際にどんな感じで描いてるのか。これはなかなか想像つかないところではあったのです。

「じゃあ、一度見に来られます?」と矢沢先生。「実際に見に来てもらった方がいいですよね?」
そうなのです。なんと、矢沢先生のご自宅に取材に伺うことが急遽決まったのでありました!

第151回へつづく

(11.01.07)