色彩設計おぼえがき[辻田邦夫]

第128回 昔々……73 1994年その7 『DRAGON BALL Z』の憂鬱

先日、なんと老眼鏡を買ってしまいました! 池袋西武の無印良品にちょっとお買いものに行ったところ、軽くてお手頃でちょっとファッショナブル? なヤツが売られてて、ついつい手に取ってしまったのです。
そう、実は僕、老眼傾向にあるんです。いや、僕に限らず、40代のアニメ屋仲間、結構な勢いで老眼になっちゃってます。いやぁ、いきなり来ますよぉ、老眼って!
僕も気がついたのはもう3年くらい前のある日。どうも上手く眼のピント移動が瞬時にできなくなってて、近くにピントが合いにくくなってました。で、最初、それが老眼だって気がつかなかった。何かの拍子に同年代の仕事仲間と「最近眼がさぁ…」って話になって、そしたら「ああ、それ老眼」。が~~ん!
で、まぁ、そんなわけで、とうとう買っちゃったワケですが、もうね、悔しいけどこれが良いんですよ。ビックリするくらいよく見える。その瞬間、自分の中でひとつの時代が静かに終わりを迎えた感じです(泣)。

さてさて。
1994年のお話の続き。
マニラ出張から帰ると、次のお仕事が僕を待ち構えておりました。今年2本目の劇場用。『DRAGON BALL Z 超戦士撃破!! 勝つのはオレだ』でありました。監督は上田芳裕氏。作画監督は前作に引き続き山室さん、美術監督も徳重さんで前作と同じです。
僕にとって4本目の『DRAGON BALL Z』でありました。こんなこと書くと怒られちゃいそうだけど、実は微妙に『DRAGON BALL Z』に飽きてきておりました。
そりゃ、なんと言っても劇場作品のお仕事ですから、監督の下、少しでも楽しいモノを観てもらえるように、少しでもいいものを残せるようにと、一生懸命、作品に携わってるのは変わらないんですが、正直言って、いかんせんお話がおもしろくない(苦笑)。長くやってる作品にありがちな、毎回ワンパターンな展開、という流れはどうしようもなくって、いろいろ工夫はしてるんだけど、それでも代わり映えのしないお話は逃げようがなくなっていたのですね。
今回のお話は前作の劇場版で登場したブロリーが、新たな登場の仕方で悟天、悟飯たちの前に現れてっていう展開……っだったと……たぶん。……(汗)。……それくらいにしか思い出せないくらい、もはや記憶の中で薄れてしまってるのであります。
良くも悪くも、いわゆる「東映まんがまつり」の1本。考えれば、劇場作品のお仕事いただいてるワケですから贅沢なけしからん話なんですが、僕的にはどこか気持ちが乗りきれない、そんなジレンマ抱きつつのお仕事だったのでした。
それでも、スタッフルームは、監督の上田さん、作監の山室さんを中心に、やたら楽しかった記憶があります。なんか、いつも笑い声の絶えないスタッフルームだった記憶が。スケジュール自体もそんなにムチャクチャ遅れるってこともなくって、そこそこ大変、くらいなフンイキで作り上げちゃった感じでありました。僕も含めてみんな、このくらいのボリュームの『DRAGON BALL Z』作るのに慣れちゃった感じだったのでした。
ゴールデンウィークの前後から僕が参加して、完成は6月の末でありました。

で、夏。ちょっとゆったりと休ませていただいたあと、8月末からは2作品が僕にまわってきておりました。まずは劇場作品1本。『美少女戦士 セーラームーンS』。そして謎のビデオ作品が1本。タイトルを『摩滅の舟士(まめつのせんし)』といいました。
『美少女戦士 セーラームーンS』は、その年に『セーラームーンR』のあとを受けて始まったTVシリーズの番外編。原作者の武内直子氏が書き下ろしたストーリーの映像化という劇場版。
そして『摩滅の舟士』は、実はどこぞの宗教団体から発注されたビデオ作品とのこと。これはちょっと意外におもしろそうな匂いがしておりました。

第129回へつづく

(10.07.09)