色彩設計おぼえがき[辻田邦夫]

第120回 昔々……(68) 続・1994年

4月になりまして、数々のアニメ新番組が続々スタートしてますが、そんな中に僕が参加してる番組が3ラインあります。

まずは3月30日から始まりましたNHK教育テレビ『マリー&ガリー Ver.2.0』。
昨年春から大好評放送中でした『マリー&ガリー』の第2シーズンになります。
第1期ではメインのキャラクターのカラーデザインのみの参加しかできませんでしたが、今期はガッツリ関われまして、ほとんどの話数の色指定も担当。かなり気合い入って作りました。そう、実は今期放送分はほぼ制作終わってます。その辺、5分アニメの強みです(笑)。
放送は毎週火曜夜6時55分から放送の「すイエんサー」内で。さらに再放送が毎週土曜日朝10時から。これらはいずれもNHK教育テレビ。なんと総合テレビでも毎週木曜夕方4時5分から! いやあ、全国放送ですよ!
続いては『極上!! めちゃモテ委員長 Second Collection」。これも昨年春から大好評放送中でした「極上!! めちゃモテ委員長」の第2シーズンです。第1シーズンに引き続き色彩設計ほかいろいろで参加してます。4月3日から始まったこの第2シーズン、今期から全編3DCG作品になりまして、背景美術もスタイルを一新! 新たなライバルキャラたちも登場で、さらにおしゃれ度UPであります!
毎週土曜日朝9時からテレビ東京系で絶賛放送中です。
そして4月22日深夜からフジテレビ「ノイタミナ」で放送が始まります『四畳半神話大系』であります! 知る人ぞ知る(なのかな?)湯浅政明監督作品。色彩設計と第1話では色指定も担当させてもらいました。僕もこれまでずいぶんいろんなアニメに参加してきましたが、いやあ、これは初めてのタイプ。毎話オールラッシュのたびに、画面のチェックも忘れてすっかり見入っちゃってます(笑)。
そんな3つのシリーズ、みなさんよろしくお願いします!

さてさて。
劇場版『DRAGON BALL Z 危険なふたり! 超戦士はねむれない』。監督の山内さんとは『Crying フリーマン5 戦場の鬼子母神』以来2年ぶり。山内さんとは初めての『DRAGON BALL』でありました。
僕自身、2年ぶりの劇場版『DRAGON BALL Z』。悟天にトランクスにビーデル、いつの間にか増えてた登場人物を把握するところからスタートです。ん? さらにブロリー? これってどうやら前の年あたりに劇場版オリジナルキャラとして登場してたらしい。聞けばコレ、山内さんの監督作で登場したキャラでありました。
とりあえず、TVシリーズ班と資料室から色指定を取り寄せて、今回の劇場用に色見本を作っていきます。前回書いたように、劇場版『DRAGON BALL Z』としての色を展開していこうと目論んでいた僕ですから、悟空やベジータ、ピッコロたちは以前僕が担当した時の劇場版色指定を下敷きにして作り上げ、僕的に今回から登場の悟天やトランクスといったレギュラーのキャラクターたちも、「劇場用基本色指定」としてこれから先のことを考えながら整理・修正していきました。
悟天は基本的に悟空とおんなじなので、ほぼ悟空の色指定と一緒。トランクスは、TV版の色指定では髪のノーマルと影の差がほとんどなかったので、ノーマル色を若干明るくして、影色で髪の毛の色味を感じられるように調整しました。あとは全体に影色の濃さ(明るさ)をしめて、メリハリを付けていきました。
でもって、こいつらがまたスーパーサイヤ人とかになるんですよね(苦笑)。
スーパーサイヤ人ってのは、体内で高められたエネルギーが身体の内側から外へと湧き出しあふれ出してくる、ということらしい。それで僕は、よくデパートとかの女性下着売り場にあるような、内側に電球が入ってて身体全体が内側から光ってる人型の人形、みたいな感じを連想しまして、キャラクター全体の色味を明るくして、影色も深く落とさず、むしろ差がなくってもいいくらいの感覚でこれも明るく設定しなおしました。その上で、ちょっとずつ作画されてた2号影を、ちょっとだけ暗めに設定して、キャラの筋肉とかの立体感がつくように狙っていきました。
そしてブロリー。これ、前回登場の時の色指定さん、坂本陽子さんという先輩のお仕事。彼女、『まじかる★タルるートくん』などの色を担当されていた方なので、パステル系の色づかいが特徴的なのでありました。で、それを、今作用に、というか、僕寄りな色に作りかえていったわけですが、やはりコレも1回世に出ちゃってるキャラなワケですから、まったく180度反対な色、というワケにはいきません。オリジナルを睨みつつ、より力強いボリューム感を探りながら、新しいブロリーを作ってみたのでありました。

山内監督の作品は、まず「光の芝居」だったりします。僕と監督との間では、あの劇場版・『聖闘士星矢 真紅の少年伝説』がひとつの基準になっていて、今回の『危険なふたり! 超戦士はねむれない』もそれは変わりません。なので、光を発したら必ず相手がそれを受け、という形でキャラクターも、キャラクターを取り巻く空間も、その光の影響を受けて色も陰影も変わっていきます。
今回もブロリーが操る「ワザ」の光芝居が満載で、さらにはそれを越える「かめはめ波」だったり。とにかく2種類、3種類と素材を用意して、それをオーバーラップさせたり、ダブらせたり、スーパーや透過光で光らせたりと、ありとあらゆることを駆使します。
どんな素材を準備しておけばこういう映像ができ上がるのか? と、山内監督と仕事をするたびに、撮影技術に詳しくなっていく僕がいました。そのうちに随分撮影指示を僕のところで追加させてもらってしまい、段々撮影さんの手間がたいへんなことになっていく、ということも、割と普通になっていきます。
セルでフィルムのアナログ全開な時代であります。しかも、たいへんな撮影はそれだけ時間もかかるわけで、何度も撮り直しなんてできないのですね。綿密に素材を用意して撮ってもらっても、なかなか思うような画面にならなかったり、ということが多かったのでした。そのたびリテイクをお願いしたり、あるいは少々ニュアンスが違っても「OK」出さなくてはならなかったり。
デジタルな今でなら、自分のパソコンのモニター上でシミュレーションもできるので、だいたいストライクな感じに画面が作っていけるのですが、1994年はまだそんな便利な世の中の到来の気配もなかった時代なのでありました。

第121回へつづく

(10.04.06)