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COLUMN
第148回付録

 ポケットモンスター(9話のプロット)
 ポケモン・必勝マニュアル(仮題)
 (ポケモンは勉強じゃない)


首藤剛志

 サトシたち一行は、旅の途中……山の中、数人の男の子たちにいじめられている少年、ジュンに会う。
 サトシは男気を見せ、ジュンを助けるが……ジュンは泣き出してしまう。
 「よけいなことするなよ。これで、僕は学校でもっといじめられる。僕、こわくて、もう学校にいけないよう」
 ジュンは学校の劣等生……いじめグループの標的……。
 それでも、じっと耐えていたのだ。
 ジュンにとっては、学校にいられなくなる方がつらかった。
 と、そこにカスミがくちばしをいれる。
 「学校、がっこ、ってこんな山の中にがっこがあるの?」
 それがあるのである。
 全寮制、ポケモントレーナーケモンゼミナール(通称ポケゼミ)が……この学校を出ると、実技試験なしでポケモンリーグに出場する資格がもらえるというのだ。
 まるで、実技試験免除の自動車教習所みたいなものである。
 ジュンはその初級クラスの生徒だった。
 初級は、バッジ2クラス……バッジを2つ持っているのと同じ資格がある。
 中級はバッジ4つクラス……そして上級卒業者は各地のジムを渡り歩きバッジを集めなくてもそのままポケモンリーグに出場できるのだ。
 「そんな話はじめて聞いた」のサトシだが……。
 「話には聞いていたが、こんなところにあったのか」とタケシ……。
 「わたしも噂だけは聞いてたわ……」とカスミ。
 このゼミは、各地のジムを渡り歩きバッジを集めなくても……つまり手間ひまかけなくても、短期間で資格を取れるため……ポケモントレーナーを目指す子供を持つ大人たちには、重宝がられていた。
 ただし、全寮制の徹底教育のため、入学金と授業料がやたらに高く、田舎の小さな町から来たサトシが知らなかっただけだったのだ。
 すなわち、この国の超金持ちの子供しか入学できない「噂の名門校」なのだ。
 「バッジなしでポケモンリーグなんて、裏技すぎるぜ。許せない。どこにあるんだ。そんな学校」
 と怒るサトシ。
 ジュンに案内されてポケゼミに来る一同。
 後を追うロケット団……。
 ゼミの校舎を見て呆然……。
 「あそこだけは、いやよ、私は……」とムサシ。
 「私もイヤ……」とコジロウ。
 ニャースがなんと言おうと動かない。
 実は、この2人、ポケゼミ入学試験に「桜、散っちゃった」、つまり試験に落ちた経験があったのである。
 さて、学校は放課後である。
 校庭の片隅に、髭もじゃ学生服のおじさんがいて、参考書(ポケモン攻略本)を必死に暗記している。
 「でも、授業は難しくて……5年も10年も留年している人もいるよ……。だって一度入学して、卒業証書もとれずに退学なんて、みっともなくてうちに帰れないもん……」と、ジュンが説明……。
 ジュン、ゼミに行けばいじめられるし、かといって家族の期待を背負って逃げ出すわけにもいかない……苦しい胸の内である。
 「そのゼミじゃ、先生がいじめを認めているのかよ」
 「認めていないけど、大人の気がつかないようにやるのが、いじめだよ。先生に言いつけたって、先生はいじめっこに注意するだけ……。そのあとで、もっともっといじめられるのはこっちなんだ」ジュン、ますますしゃくりあげて泣く。
 「じゃあ、俺が話つけてやる……いじめっこの親玉は誰なんだ」とサトシ。
 親玉は、来期、中級に進級決定の影の番長ユートー・セイヨという女の子だった。
 「ポケモントレーナーの学校の成績がいいからって……いじめが許されるわけがない。いじめにゃこれだい」
 と、サトシはこぶしを握りしめる。
 「喧嘩に勝ったって、セイヨ君はめげないよ。このゼミはなんてったってポケモントレーナーの実力がものをいうんだ」
 「望むところだ。おれだって2つバッジ持ってるんだ」
 と、バッジを見せるが……ジュンは溜息……。
 「だって、セイヨ君は初級クラスのトップ……実力は3つバッジ以上だもん……ポケゼミは名門だよ、ビリの成績の僕だって……普通の2つバッジ以上の力はあるよ。少なくともハナダジムの水ポケモンぐらいになら勝てるよ」
 カスミがしゃしゃりでて……。
 「ちょっと、聞き捨てなんないわ……あなたが私に勝てるっての……わたし、ハナダシティのポケジムの子よ」
 「負けるもんか」
 ジュンもポケモンを出して……。
 「水もないところで水ポケモンが勝てるわけがない」とジュンが笑う。
 ところが、ジュン対カスミは一瞬のうちに、あっけなくカスミの勝ち……。
 「な……バカな……!」呆然となるジュンに……背後から……。
 「だからあなたはダメなのよ」
 セーラー服のクールな美少女(セイヨ)が、いじめっ子たちを連れて立っている。
 「水ポケモンといっても、相手はジムの娘、持っている水ポケモンだって、戦いに慣れてそれだけ成長しているわ……。勉強が足りない……そんなあなたを見るのもイヤ」
 「君がいじめっ子の親玉? ……女の子のくせに」と、サトシ。
 「天下に名高き名門予備校ポケゼミ初級クラスの一番星……銀河のはてのそのまたはてに光輝くアンドロメダかとも呼ぶ人もいる」とセイヨ。
 遠くから望遠鏡で観察中のロケット団……「わたしたちより、おおきな事いってるわ」とあきれる。
 さらに辛い言葉でジュンをいびるセイヨに、カスミの怒りが爆発する。
 「弱い男の子は守ってやるのが、本当の女の子……世界美少女のこのカスミ、女の子として、女の子のあなたが許せない」
 セイヨ対カスミの戦いが始まる。
 セイヨ、学生鞄の中から計算機を出す。カスミの持つ水ポケモンの強さを計算しているのだ。
 「ここではあなたは勝てないわ。よかったらプールのそばで戦いましょうか?」
 カスミ、ますます頭に血が昇り、「余計なお世話よ!」
 戦いが始まる……。
 が、セイヨの出すポケモンに負け、セイヨに言われなくてもプールに追いつめられてしまう。そして、プールの中でさえ、セイヨのポケモンに負けてしまう。
 「わたし、実戦は初めてだけど……やっぱり、計算通り大したことないわね。……ジュン君、見た? このゼミで成績がいいということは、こういうことなのよ。あなたは失格ね」セイヨが胸を張る。
 サトシが、立ちふさがる。
 「もとはといえば、俺がジュン君を助けたのが始まりだ」
 サトシ対セイヨのポケモン対決!
 サトシの持っているポケモンは3頭……セイヨは、教材用とはいえ、6頭持っている。セイヨは、余裕しゃくしゃくで、3つのモンスターボールを選ぶ。
 セイヨは、1ヶ月でマスターすべき初級ポケモン攻略参考書を、1週間……それも5日で暗記したという。後の2日は、中級上級を通り越して、ポケモンリーグ攻略参考書を読んでいたという。
 戦いの中、セイヨはサトシのポケモンの能力を、次々と言い当てる。
 そして、サトシの知らないポケモン対決のルールを次々とまくしたてる。
 「知ってる? あら、知らないの……それで、バッジが2つなの。お笑いね。とっても変だわ。うふふ」
 いびりやいじめの目標がジュンからサトシに変わったかのように、ふりかかる言葉の攻撃……。
 タケシが「自分もしらなかった……(または忘れてた)」とあきれるほど、詳しい。
 だが、参考書や学校の授業では絶対教えてくれない方法……ピカチュウの得意手にない活躍でサトシは勝つ。
 (実戦派が理論派に勝つような、明快な方法……たとえば、かみつく、引っかく、股蹴りなどの原始的喧嘩方法)
 ロケット団、サトシの勝利に唖然……。
 「そうよ……あの手があるのよ。得意技なんて、使わなくても勝ちゃいいのよ」
 「ってことは、おにゃーたちは大人、子供に負けるわけにゃーい。あのピカチュウを腕ずくでもとってくるんにゃ」
 ロケット団、ニャースにけしかけられ、一同の前に現れるが、
 「悪い奴は、手段を選ばない……ルールが通用しないってルールもあるわ」
 セイヨが、ふふふとほほえんで……いじめっこたち全員が、ポケモンを出す。
 ロケット団はポケモンたちにぼろぼろにされ逃げるしかない。
 「ひどいわ……こんなにポケモン出すなんて」
 「やっぱり、ルールはまもりましょー!」
 サトシは、セイヨから、もう2度とジュンをいじめないという約束をとりつける。
 しかし、ジュンは、この学校から出ていくという。
 「学校だけじゃ教えてくれない。いろんな事がある。僕、自分の街に帰って、1頭目のポケモンから、サトシ君のように、やってみる……セイヨ君、君とポケモンリーグで会えたら……」
 「いいね。本気だよ。私もがんばる」とセイヨ。
 2人は握手……。いいムード。
 「いいなあ。でも、俺とカスミってどうしてああならないんだろう……」とサトシ。
 「え……なるわけないじゃない! 自転車……忘れたの!」
 「あは……」
 で、もって、サトシ、カスミ、タケシ、ピカチュウたちポケモンの旅は続くのです……。

  以上……。

 (関係者各位様……今回は、セイヨとサトシたちのポケモン対決の場で……ポケモンのルール等、アニメ版に最低必要な事項を全て、洗って提示する意味もあります。説明解説好きなセイヨによって、今まで語られた事、語り損ねた事、疑問点、問題点……いろいろありましたらこの機会によろしくお願いします……)

  9話プロット終わり。

 
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