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COLUMN
シナリオえーだば創作術――だれでもできる脚本家[首藤剛志]

第4回

 合格通知に、家族一同喜んだ。
 腑に落ちなかったのは僕だけだった。
 合格する筈がなかったと想ったのである。なにしろいい加減なその場限りの行き当たりばったりの面接の答えをしたのだから合格する筈がなかった。それでも、とりあえず腑に落ちないながらも、入学式に行ってみた。入学式に行って、びっくり、我が目を疑った。試験にやって来た見覚えのある顔が全部いたのである。
 要するに、試験を受けた全員が入学していたのである。
 だったらあの受験はなんだったのだろう。
 後で聞いたら、学園闘争で暴れるゲバ学生が授業で暴れると困るから、その危険のありそうな人物だけをはぶいて穏健そうな人だけを入れたという。
 ゲバ学生だって、シナリオを書きたい人もいただろうに、いや、ゲバ学生だからこそ、書きたいこと書かねばならないこともあったろうに、それを無残に、排除してしまったのだ。
 後に、あさま山荘の事件などが起こったことから(覚えている人がいるだろうか?)彼らが、言いたいことが山ほどあっただろうと想うと歴史の1ページが闇に葬り去られたような気がするのは僕だけだろうか。
 現に、連合赤軍をテーマにした映画を作ろうとした長谷川という監督は、構想以来30年近くあっても映画を作れないでいる。
 どんな映画ができるのか……それとも夢に終わってしまうのか。ときどき、ふっと、思い出して気にしている。
 余談だが、何が理由か知らないが、シナリオ研究所で、数年後、一時ゲバ騒ぎが起こり、本当にシナリオ研究所が閉鎖されたそうである。
 ゲバ騒ぎは、理由の有無にかかわらず、どこでも燃え上がっていた感のする時代だったのだ。
 こんなことを書くと、ゲバ学生の残党に殴られるかもしれないから、もう、硬い話はやめにしよう。
 ノンポリの癖にほんとうに硬い話をしてしまった。
 反省してます。

 次回へ続く


●昨日の私(近況報告)

 ここ数日、小田原のサイゼリアというイタリア料理店に通っている。イタリア料理というとなんだか高級な感じがするが、スパゲッティーが330円、コーヒーがドリンクバーで飲み放題で120円、一番高いステーキが700円(もっとも僕は高いから食べないけど……)、つまり、めちゃ安いのである。安いから、高校生の客がめちゃくちゃ多い。
 断っておくが、おじさんである僕は、高校生の短いスカートと太い足を、ニヤニヤ見ているわけではない。
 聞くでもなく耳に飛び込んでくる高校生の会話を聞いている。
 ――のである。その会話を、そのままシナリオに使うわけではないが、参考にはなる。近ごろ気づいたのは、高校生の語彙が、100語ぐらいしかないこと。中学生の英語で覚える単語が100語ぐらいだから、あなたも高校生と会話ができることになる。もっとも、その100語には、様々なニュアンスがあって、それも覚えるとなると、けっこう大変ではあるが。高校生と付き合いたい人は頑張ってください。
 それにしても、この店にも、男子高校生が少ない。
 女子高生ばかりだ。男子高校生はどこにいるのか?
 女子高生を見学するのは、悪い気はしないが、男子高校生が少ないのは、ちょっと気になる。
 

■第5回へ続く

(05.06.22)

 
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