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COLUMN
板垣伸のいきあたりバッタリ! 第80回
板垣的コンテの描き方(前編)

 今、とある作品のコンテで大忙しの毎日です。もちろん来年放映の自分の作品のコンテで、本当に悪戦苦闘。まあそれが楽しいから描いてる反面、苦しい時も結構あるんです。そんで今は苦しい時? 多少現実逃避も兼ねてこの原稿を書き始めてみるとしましょう。
 「板垣がなぜコンテきるのが好きか?」や「アニメにおけるコンテと演出の関係」などはだいぶ前に採り上げたので、今回は――

 「板垣的・コンテの描き方」です。
 断っておきますが、誰にとってもなんの役にも立ちません!

 だって、俺の場合、テレコムのおかげで原画の描き方や理論は頭と体に叩き込まれてるんですが、コンテ(や演出)に関しては映画界を揺るがして「コンテ集」や「レイアウト集(演出理論付)」が出たりする劇場アニメの監督に演助でついたりして演出教育を受けたりした事などまったくないからです。
 多分、見よう見マネから始まり、いろんな監督とお仕事をして「教えてもらった」のではなく「盗みとった」のが自分の演出なんでしょう。そんな演出家(?)・板垣のコンテは次のように描かれています(注・制作の方々は読むのを止めるか、半分冗談だと思ってスルーしてください)。

板垣的・コンテの描き方

その1 シナリオを読む。なるべく楽な姿勢で……。


 この時点でだいたい以下の2パターンに分かれます。

 シナリオがそのまま使えない場合……なぜ使えないのか? 多くは語りません。とにかく使えないのです。この場合、「どーしたら面白くなるのか?」「なぜ俺はこのホン(脚本)が気に入らないのか?」「やっぱり俺には才能がないのか?」などを



 ゴロゴロしたり散歩などをして考えます。ここで重要なのはそのホンを何度も何度も繰り返し「読みすぎない事」。一読して「面白い!」と思えないホンが、そのままやって面白いフィルムになるハズは100%ないし、何度も読んでコネクリ回すより、なるべくシンプルなまま、飯食ってる時や風呂に入ってる時、トイレ……いつも頭の片隅に置いた生活をした方が俺的にやりやすいんです。あとは「喋る」。自分の監督作品のコンテ時は主にライター(脚本家)かプロデューサーと。他監督作の時は主に友達と。ここでも重要なのは、ストーリー以外の無駄話・雑談も必要だという事。特に相手が友達の場合は、ホンに関する悩みを打ち明けてもチンプンカンプンだし、雑談して大笑いして、「じゃ、そーゆー事で〜」で終わるのが当たり前。でもその“雑談で大笑い”も自分にとっては使えないホンでコンテをきる際、大きなヒントになる時もあるんです。これは自分が常々、

 映画・文学・マンガ・アニメに限らず、スポーツや音楽……はたまた、お喋り・雑談に至るまでの全エンタテインメントが超究極的(?)に突き詰めると、ひとつの「面白さ」っていう柱につながっているんじゃないか?

 ――って何かよく分からない確信があるからで。つまり、大雑把に言うと映画の面白さが「本当に分かってる」んなら、その人は野球だろうがジャズだろうが本当に面白がれるって事。それはたった今友達と大笑いした面白話と、今自分がシナリオに求めてる面白さは、同じ柱に結ばれてるんですよ。そう――

 “面白い原画”と“面白いシナリオ”も!

 例えば原画で、ある部分の動きを際立たせたいと思ったら、その他の部分を抑えるのと同じく、シナリオでも見せたいドラマの部分以外を抑える、と。
 例えば、よい原画は3秒なら3秒で何をやりたいカットかが明確であるように、シナリオでも「この話、要するに一言で言うとどんな話か?」が明確なのがよいハズ。

 つまり自分があまり知らない事(俺の場合シナリオの事)をイジろうとするなら、自分の比較的得意分野(俺の場合原画)に置き換えて考える

 っていう至極単純な誰でもやるような方法論で「考える」と「喋る」の数日間を過ごすわけです。「コンテにできる!」と思えるまでコンテ用紙に向かいません。ただホントに酷い時はホンをネリ直して「字コンテ(ト書きと台詞のみ)」にする時はままあります。そして、当然もう1パターンは――
 シナリオがそのまま使える場合です。そんな時はとりあえずDVD見ます。



 ……だから、冗談も混じってますって!



(08.08.14)

 
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