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COLUMN
板垣伸のいきあたりバッタリ! 第139回
楽しいカッティング(前編)

 10月5日(月)は今I.Gで作ってるとあるOVAのカッティングがありました。場所は去年『ミチコとハッチン』で来て以来のジェイ・フィルム。何となく懐かしい……。俺が演出業の中でコンテの次に

 楽しく面白く――そして“深い……!”と思う仕事……。
 ――それがカッティング(編集)です。

 ……いや、もしかするとコンテより面白いかもしれません。最近はとみにそう思います。
 業界人でない方や、編集室に入った事のない業界の方のために説明すると、実写の映画の場合はあちこちのカメラで撮った別アングル……例えば被写体のアップを望遠で撮ったAカメラとその切り返しをBカメラ、全体をロングで捉えたCカメラとかのフィルムを交互に差して“カット割りを作る”作業を編集で行えます。つまりオーバーに言うと、実写は撮った画の3分の2を切り捨てて1本のフィルムを作ってるわけです。
 ところが、アニメの場合アニメーターの人たち、背景の人たちが汗水たらして“手描きで画にする”んだから、そんな贅沢は許されません。そのため、

 画にする設計図――“コンテ”が本来の編集業の一部分を担ってる!

 と言えます。

 ――とここまではアニメの演出本(?)などでとっくに説明され済みなのでこれ以上は掘り下げません。なぜかと言うと、上記の内容がカッティング時にすべての画が完成してる(業界用語で「色がついている」)事前提での「アニメの場合はこう!」止まりだからです。
 ……つまり、ここからは現在のアニメであたりまえの状況――「原撮(原画を撮影)」「レイアウト撮」「コンテ撮」のフィルムをカッティングする場合のお話をしたいと思います。

 ――そりゃあ、もちろんフィルムを“コマ単位”で切ってゆくのが編集ですから、画が完成しているに越した事はありません。でも

 数秒ごとにカタカタと写り替わってゆくラフな線画スライドショーを編集する

 のもまた乙なものなんです。――と言うか、制作の方々には申し訳ありませんが、俺は正直言うと、

 原撮・ラフ原撮……もっと本音を言うとコンテ撮でのカッティングの方が好きなんですよ!

 ……てか、動画に色までついて撮影まで完成したものをバサバサ切ってくなんて、もったいないでしょ? だって「ここの“間”もっと伸ばしたいな」とか「ここの動画数枚抜きたいな」と思えばもちろん再撮(撮影やり直し)になるし、動画代も無駄になるんですから……。色のついた動画1枚完成させるのに数百円かかるんです、アニメは。俺らアニメーターが無造作にタイムシートに打つ“点”(中割りの指定)1個は数百円なの! それを完成させた後に切るなんて……! (――と言っても、線撮りでもお金はかかってるわけなんで、どっちが得かは微妙なトコですが、少なくとも動画1枚描くのは平均30分〜1時間はかかりますよね)
 つまり、ラフ原・コンテ撮で編集して「このカットは何秒何コマ!」と“箱”を決めてから作画に入れば無駄は省けるとうわけです。ただ逆に“動かせない箱”が先にできてしまうという恐ろしさもあります。でも、その緊張感と同時に明確な演出プランを持って挑めるならば、かえってコンテ撮の方が都合がよいはず……!

 さて、そんなんで、線撮りでのカッティングが好きな板垣が編集室に入って最初にする事は――

「えーと……芝居の動き始めはカット頭から動かしてます。んで、最初の原画は2コマ打ちにしてあって、ラストの原画は1コマ。台詞はカット尻言い切って“開き口”でカットになるようシート打ってあります。云々……」

 ――と、編集さんに自分のタイムシートの打ち方のクセをすべて説明する事から始まります。

 そしていよいよ楽しいカッティングの模様は――



(09.10.08)

 
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