板垣伸のいきあたりバッタリ!

第270回
今月も原画(2)
〜BD&DVDを消化しよう!



 自宅で原画描いてる時のテンションです、コレが! 呆れないでください。結構このまんまなんで。何かコンテ切ってる(描いてる)時より比較的陽気なんです。コンテだと考える事が多すぎて、仕事中に聴く音楽や観る映画類も「思考の妨げにならないくらい激しくリピートしたソフト」に限られてしまうんですが、原画の場合、考えるより「体が覚えている技で描く」時間の方が多いので、リアルタイムで放映中のバラエティ番組や2時間サスペンスを観ながら描いたりします。

だから原画描いてる時は「買ったまま観てなかった中古DVDや中古BD」を片づける絶好のチャンス! で観たのは以下です。


「美女と液体人間」(1958年、監督/本多猪四郎、特技監督/円谷英二)

特撮ファンの方からすると「何を今さら?」ってタイトルでしょうが、不勉強な自分は初めて観ました。これ怪獣特撮映画かと思って観ると、普通に大人が観られるスリラーなんですね。カメラを固定した部屋のセットごと傾けて「迫る液体」を表現してたり、あの手この手で「らしく」見せる特撮が楽しいです。なんでも表現可能な現在とは違って「上手に騙される事を楽しめた」時代にこそ本当の特撮映画を味わえたんだろうな〜と感慨。だって今だとタネ明かしはすべて「CG」ってお客さん全員が知ってるから。白川由美がまさに「美女」です!

「電送人間」(1960年、監督/福田純、特技監督/円谷英二)

同上。白川由美はやっぱり「美女」です!

「ねらわれた学園」(1981年、監督/大林宣彦)

薬師丸ひろ子主演の大林映画。自分、これ、たぶん「小学生の頃、TV放映されたのを観た事あつかも? くらいのアイドル映画」だと思ってたんですが、20年以上を経て改めて観てみると、こりゃ「トンデモ映画」でした! どー見てもチープな超能力表現や、不自然な台詞まわし……異様な迫力の優等生役・手塚眞など、すべてが大林監督の深い深い「映画愛」に裏打ちされているという事が監督のオーディオコメンタリーを聴くと分かります。隅々まで完璧である事が必ずしも即「映画の魅力」に繋がるわけではない! と、いつも言ってます、俺が。本編を3回、オーディオコメンタリー入りを10回以上観ました。え? 2012年アニメ化!? 応援します!

『涼宮ハルヒの消失』(2010年、総監督/石原立也、監督/武本康弘)

すみません。ファンの方々からすると「まだ観てなかったの?」でしょうが、限定版BD買ったのは結構前で、観たのは最近。だって、周りで観た人たちの評判があまりによくて、逆に観る気が遠のいてしまったんです。俺、「面白い、面白い」言われると「どーせ面白いって皆が言ってるなら、自分が観なくてもいいや〜」って思ってしまう癖があって、観るのがイヤになります。だって皆が「右向け右」状態になってる時、その映画について語っても「だよね〜ハートマーク」しか返ってこないから。でも、ま、そんなほとぼり(?)も若干冷めたかな〜ってトコでやっと観ました。

コレ、凄ぉい!!

2時間超えで初めてです、ダレなかったアニメ映画! 163分? 信じられません。うん! 面白かった!! これは原作がいいのは間違いないんでしょうが、アニメーターである自分は何より京都アニメーションの技術レベルの高さに賞賛を贈りたいです。とにかくキャラの芝居一挙手一投足が緻密に描かれてて、各カットのレイアウトも含め

それぞれの「画の賞味期限」が極めて長い!

からこそ成し得た長尺映画だと思います。やっぱり「いい画は長く観てたい」という単純な話。でも、それができてる作品がどれだけあるか? つまりこれだけ賞味期限が長い画を作れる現場だからこそ、凝ったカット割りも複雑な演出も成立させられるわけですね。脱帽。



 と楽しんでられるのもここまで! 「楽しく原画」もそろそろ終わり。次の作品にとりかからねれば!

(12.06.14)