板垣伸のいきあたりバッタリ!

第249回
『ベン・トー』の話(8)

さて、『ベン・トー』も最終回まで放映されたトコで、ここからはネタバレを恐れず書けるわけです(と言っても触れられないネタはあるにはあるんでご了承ください)

 #05、#06——これは前々回(第247回)で説明しかけましたが、とにかく原作の物量との戦いで、シナリオ時大変苦労した2本でした。早い話、#04〜#06の3話分で原作第2巻目を消化する構成です。全12話(1クール)のシリーズである事から逆算すると、原作1冊を3話分で消化するくらいのテンポで進行しないとダレちゃいますから。そして原作ではモナークの相手が金城(ウィザード)なんですが、アニメ版では槍水になってます。これは今回のシリーズを始める際の委員会からの要望「槍水を立ててほしい」に応えたかたちで、シリーズラストで佐藤VSオルトロスを採るなら、シリーズ中盤のこちらは槍水VSモナークを、というわけです。あと、なんといっても#06の

路上で突っ伏して弁当を完食する金城!

が大好き! 原作を読んでシビれたシーンのひとつで「これぞ『ベン・トー』の世界だ!」と興奮したのを憶えてます。ところがホン読みでシナリオの稿が重なるうちに、このシーンが削られた時があったんで、すかさず

 と激を飛ばしました。さらにグロス(外注)回にもかかわらず、レイアウトと原画をこちらで回収して、強引にチェック・修正を入れたシーンでもあります。もとの原画があまりにも無様だった(失礼!)からでした。オープニングの立ち食い同様、「この作品ならではのカッコよさ」で描いてもらわないと困るわけで……。ま、シナリオが難航したぶん、#05・#06はまとめて自分がコンテ切りました。シナリオで詰め切れなかったトコを補完しつつコンテにした方が早かったからです。シナリオの岸本(みゆき)さんには大変な苦労をおかけしました。本当にあの物量を上手くまとめてくださってありがたかったです! シナリオだけでなくこの2本は各話演出さんにも凄くお世話になりました。何しろ#07のシナリオより後に決定稿になった#05・#06、必然的に2〜3週はスケジュールが短いところからスタートせざるをえないわけで、自分のコンテもいつも以上にラフな画だったため、レイアウトチェックとかかなりキツかっただろうと思います。#05の演出は江副仁美さんとソエジマヤスフミさん、#06は城所聖明さんと山本天志さん、大変お疲れさまでした!

あ、そうだ!

 #06はグロス回なのですが、演出のお二方とは結構おしゃべりできたのも面白かったです(書き忘れるとこだった(汗))。山本さんは『ななついろ★ドロップス』や『いつか天魔の黒ウサギ』など、普段は監督をなさってる方なだけに、演出処理のみとは言えカッティング(編集)時にいろいろ助けてくださいました。ひととおり切り終わって3分尺オーバーだった時「このセリフ、切れるんじゃないでしょうか?」とか「このカット、欠番にできません?」などと積極的にアドバイスしてくださってるうち、俺自身が切ったつなぎも

 と逆に山本さんに確認していただいたりと、とても楽しく演出できたのも嬉しかったです。もう一方の演出、城所君は元マッドハウスの制作で、昔自分が『ちょびっツ』の原画をやった際、すでに知りあってました。その後『十兵衛ちゃん2』で再会。そして再々会の今回は監督と演出の関係で! 何か縁ですね。そうそう、#06のさらなる追記。ノンクレジットですが、この#06も30カットほど自分の方でアクション演出してます。ポーズとかエフェクトとか(見たカット数が少なかったのでテロップにはのせませんでした)。各作監様も本当にお疲れさまでした!  で、やっと#07。ここから3本(#07、#08、#09)はオリジナルになります。それぞれには明確に意図があります。まず#07は単純な話、ホン読みを始める時(シリーズ全体の構成打ちの時)

 との要望ありだったので、もうハッキリ「サービス回」と定めました。やっぱり所詮は演出ってサービス業ですから、こう言われると逃げるわけにはいきません。ただ、こう決まった時点で自分からは

・屋内温泉プール(一応季節的に春なので……)で半額弁当争奪戦!
・各キャラの「二つ名」の由来をネタにする事!
・沢桔姉妹(オルトロス)をフライングで登場(水着で)!

 等々の必須ネタを提示したところで、あとはヤスカワショウゴさんにバトンタッチ。そこからはヤスカワさんが凄かった! まず、しょっぱなから

「むっちゃハワイやんパーク」!

 ってネーミングでこの話はほぼ決まりましたね、たぶん。とにかく最初の第1稿ですでに面白かったんです。自分から出したアイデアは

イルカのマスコットキャラの着ぐるみ半額神(これ自体はヤスカワさんのシナリオにありました)が半額シールを貼ろうとするが上手くシールが取れず、結局自らの手を覆っていた「ヒレ」を引きちぎってようやく貼り始める——のを見て周りの狼たちドン引き

てところと

そのちぎった「ヒレ」を佐藤の股間にハメて使う(小道具ネタをちゃんと回収する)

くらい。あとのお話はほぼすべてヤスカワさんが作ったものです。

 で、#07の続きは次回。

(12.01.12)