板垣伸のいきあたりバッタリ!

第228回
『ベン・トー』PV公開中!

とりあえず、今回の始めはやっぱりコレでしょう!

 楽しくて元気の出るアニメにしたいと頑張って監督しております。今作で一番大変なのは「スーパー」という設定で、普段何気なく利用してる方が多いと思いますが、今度機会がありましたら改めて見てみてください。驚愕的な情報量ですから。今なら多分時効だろうから明かしますが、『迷い猫オーバーラン!』第1話の後半の舞台——大きな猫(希)が現れるシーン、実は商店街ではなくてスーパーという設定でプロット書いてたんですが、プロデューサー様の「スーパーは(作画・美術)が大変だから商店街にしてください!」との要望により脚本時、商店街に書き変えたんです。それはやはり正解で、商店街ならばちょっとあおれば(カメラを上に向ければ)空にできるし、歩いて場所を移動すれば前に通過した店は忘れる事ができます。ところがスーパーだと舞台がかなり限定されて……ぶっちゃけ「狭い」ため、少しあおったくらいでは商品棚は消えないし、さっきそこにあった缶詰コーナーが次のカットでカレーコーナーになってちゃダメなわけです。さらに背景美術的にもカメラアングルが変わるたびに棚の商品の立体・奥行き・パースもその都度調整しなきゃ一気に変な画に仕上がってしまうわけで、これはもう手を出す方がバカだと自分も思い、『迷い猫』では商店街にしたんです(もっとも原作では後の話で商店街ネタが出てきたので、それと繋げたというのもありますが)。でも人生やっぱり因果応報(?)。スーパーを避けた『迷い猫』1話が放送されたと同時期に、今度こそ「ガチでスーパーを描かなきゃならない」作品——『ベン・トー』に出会ったわけです! それゆえ運命的なものを感じてたりもするし、こういう仕事を大事にしなければバチがあたるというもんでしょう。……ま、何しろそう言うわけで、

ガチでスーパーなんです!

技術的な部分のタネ明かしは後ほどするとして、まずはこの

スーパーでの半額弁当争奪戦!

というユニークなバトルシチュエーションでどんなアクションが描けるか? 一番最初に原作を読んだ際、梶田(浩司)Pと話し合った事のうちのひとつです。俺の方からは「今回はややリアリティ・ベースでやってみたい」と言ったんですが、その理由は「あくまで主人公たちの目的が弁当だから」という事でした。もちろん「アニメならではの跳躍力」や「多少オーバーな腕力」などはあたり前にやりますが、例えば流背(流線描き背景)をガンガン引っぱって、手のひらからナントカ砲など放ってスーパーを破壊などしたら「半額弁当争奪戦」の枠を越えてしまうんです。だからといって地味なバトルにはしたくありませんから……難しいんですよ! でも、それだけ高いハードルだからこそ飛び越えたら面白くなろうってもの。頑張ります!
 あと、主人公・佐藤洋(さとう・よう)についても、梶田Pと何度も議論しました。実際、画にすると一歩間違えば単なる70年〜80年代の熱血ヒーローになりかねない要素が多々あって、各話の演出さんたちにも「佐藤は単なる熱血バカじゃない」としきりに説得するところから制作が始まりました。この作品、観る人が男の人ならば「共感できる主人公」として、また観る人が女の人ならば「憎めない男子」として佐藤を追っかけてもらいたいので、コンテを委員会に提出して「これはやりすぎ!」と指摘された箇所は直しに直して作業を進めてます。まあ、直すのはこの作品に限った事ではなく、委員会が「決定稿」の判を押すまでいろんな方向から意見が飛んでくるのが普通で、監督はいつもそこで苦労するものなんですよ。そのへんの苦労ってあまり表に出ませんが。

とりあえず、PVをご覧ください!

 また、短くてすみません。コンテに戻ります!

(11.08.04)