板垣伸のいきあたりバッタリ!

第209回
実写「あしたのジョー」(2)

(前回からの続き)つまり、

ジョーがドヤ街にやってきて段平と出逢って少年院へ行き力石徹と会い最後に力石が死ねば、早い話「あしたのジョー」だって事です!!

けしてデタラメに言ってるわけではなく「名作」と呼ばれる原作は、キャラクターだけでなく、シチュエーションもエピソードもそれぞれすべて個性的なもの。そういう意味で実写「ジョー」を観て思ったのが「原作の力を再認識した」だったわけです(前回より)。実際——あ、ここから先、ネタバレと原作信者さんたちが怒り狂う個所ありなので、先を知りたくない方、原作絶対至上主義な方は読むのを止めてくださった方がよろしいかと思います。……で、実際、実写「ジョー」は

  • ジョーは大した○○を働いてないのに驚くほど簡単に少年院に入ってしまう上、すぐ出所する
  • 西は○○取り立て屋として登場した上、「プロテストに合格した」と言ってるのに○○シーンはなし
  • 段平が日本ボクシング○○に殴り込むエピソードはゴッソリカット
  • 葉子は○○街出身で、その過去を打ち消そうとして○○街を潰そうとする
  • 力石が少年院に入った理由は、その葉子の事を書こうとした○○をブン殴ったから
  • 力石は○○間際、葉子に対し「ジョーに俺のグローブを……」と言ってる

などの改変をしつつも「『あしたのジョー』を観てる」気にさせてくれたのは、やはり「ちょっとやそっとの変更では揺るがない原作力」の賜物です! そして

大スクリーンに映し出された夕陽は美しかった!

です。あと色々ご意見はあるかと思われる役者さんたちは、以下な感じ(あくまで私見で敬称略です)。

  • 山下智久(矢吹丈):特に気にならなかったけど、なんか芝居がキム○○みたい
  • 香川照之(丹下段平):よくできた○○プレ。でも、気合い入っててとてもよかった。好きな役者さんです
  • 香里奈(白木葉子):予想してたよりはるかによかったし、美人
  • 伊勢谷友介(力石徹):マジ、最高っ!!
  • 勝矢(マンモス西):芝居云々はよいけど、この映画の構成なら物語的に西自体が○○な気が……

 特に力石。ほんと、この映画の制作が発表された時点で「どーせ力石まででしょ〜」と当たり前に頭をよぎったんですが、その力石こそが実写化の最大の難点だと勝手に思ってたんです、自分。まず第一にちばてつや先生の描かれる力石徹ってちば世界のみで「カッコいい」と表現できるキャラで、ぶっちゃけ世間でいう「色男」とはだいぶ違います。ただでさえマンガ原作を実写化する際必ず生じるのが「画で書かれたキャラを俳優に置き換えた時の違和感」であるというのに、それが「力石」ともなれば、事は映画の明暗を分けかねない事態だと言わざるを得ません。そして第二には「力石の減量がどこまでリアルに映像化できるのか?」でした。ところがまず少年院のシーンで力石が登場した瞬間、

あ、力石が実在するとこんななんだ〜!

と原作ファンの俺が文句なく納得できました。カッコイイ! いや、ホント鼻が高くてまっすぐで目も大きくてしっか角張った顎に巻いた髪。どれをとってもちば先生の描かれた力石徹のまんまであるし、しっかり「色男」って面でもクリアしてました。さらに

減量シーンもちゃんと鬼気迫ってました!

実写で本当にやるとマジ狂気過ぎてビックリです。計量シーンでガウンを取った時の「人間ってここまでペッラペラになるのか!」的ショックと言ったら。最近の日本の役者さんでここまで肉体改造した人っていなかったのではないかと思います。

伊勢谷友介さんって凄過ぎ!

 ていうわけで、実写「あしたのジョー」は脚本がどーの演出がどーの言う前に伊勢谷さんの力石を観に行くべき映画でした。

(11.03.17)