第201回
がんばれ俺

『プロゴルファー猿』について書こうと思ったのですが『がんばれ元気』があまりにも素晴らしかったので今回は『元気』で!

ということで『がんばれ元気』DVD-BOXを買いました!(ま○だらけ大好きっ!!) 自分、カミングアウトしますが小・中学校の間はアニメってほとんど観ていません。前にも書いたと思いますがガキの頃の俺はパソコン(当時の呼称はマイコン)とゴルフ(クラブ作り……第2・3回参照)に夢中でアニメ観るヒマがなかったからです。観てたのは藤子不二雄アニメくらいで、しかもそれはアニメに対する興味ではなくただ藤子不二雄だったってだけ。その他「観た事ある」程度のものはいくつかあるんですが、それらは決して「毎週TVの前に釘づけ」とか「全話欠かさず観た」レベルではありませんでした。だからファースト・ガンダムすらいまだに全話観た事がないってわけ。たぶん1980年代で藤子モノ・出崎アニメ以外で全話欠かさず観たTVシリーズは『未来少年コナン』(再放送)と『ミスター味っ子』くらいです。従って東京に出てアニメ学校に入った時点でのアニメ知識は、中3の時に出会った出崎アニメを皮切りに高校3年間で研究・勉強した分しかなく、アニメが子供の頃から大好きで業界を目指してた友人たちが「ロボット」だ「魔女っ子」だと各々の原体験アニメ話を繰り広げるのが羨ましかったほどでした。
 ま、そんなわけで1980〜81年放映の『がんばれ元気』を本放映で観てるハズもない板垣ですが、原作は超愛読してて今でも大好きです。もちろん原作の方もリアルタイム(週刊少年サンデー)で読んではいませんでしたが、小学5〜6年生の頃、市の図書館に全巻揃ってて、これは夢中で読み耽りました。

もう本当にドラマ過ぎます、『がんばれ元気』は!

 あっちこっちで泣けます。個人的には同じ小山ゆう先生の「あずみ」より好き。何しろ芦川先生がエロい……いやいや、主人公・元気だけでなく、まわりの人物ドラマも感動的に描いてあっていいんです! 特に芦川先生がエロくって……。全巻通して読むと、小学生の元気が芦川先生と出会った時からラストまでが2人のラブストーリーとしても非常にしっかり組み立てられてるのが分かります。
 で、アニメです。こちらの方は俺、高校に入ってから超早朝(AM5時半〜)の再放送で2〜3本観ただけでした。しかもそれはかなり最終回に近い話数で、オープニングから「チーフディレクター・りんたろう」の名前もなくなり(今回DVDで確認したところ第23話以降CDのテロップがなくなります)、キャラクター設計も小松原一男さんではなく香西隆男さんになってました。前述のように、高校生の自分はすっかりアニメファンになってたので『がんばれ元気』といえばCD・りんたろう、キャラデ・小松原一男と記憶してたものでお2人のクレジットがOPに載ってなかったのは「オヤ?」と思ったものです。でもその後いろいろ個人的に調べたんですが、たぶんお2人とも『さよなら銀河鉄道999』の方に移行されてたのではないでしょうか?(憶測:『元気』の放映が1981年4月までで『さよなら』が1981年8月公開だから) それに東映動画(現・東映アニメーション)のCDやSD(シリーズディレクター)は、他のスタジオのように密な監督的役割ではなく、あくまで「シリーズの方向性を定める各話演出のリーダー的存在」で自身の担当話数以外のコンテチェックも基本最初の1クール分くらいがメインだ——とアニメ誌などで知ってもいましたから。
 よって今回DVDで初めてシリーズ前半のりんたろう演出話数を観た事になります。いや〜、

凄くいい!!

 一応りんたろう演出話数を挙げると

第1話「ぼくと父ちゃん二人旅」
第6話「母ちゃん色の芦川先生」
第14話「秋空高く二人三脚」
第18話「山谷勝三おれは三枚目」
第21話「火山尊の手帳」

の計5本になります。りんさんの話数はどれも他の話数との技の差が歴然! 実際そんなにド派手で凝ったアングルではないカットの積み重ねなんですが、本当に丁寧にレイアウトチェックをされてるのが画面を観れば一目で分かります。当時は今みたいにアニメーターから演出家になった方ってまだ少なかった(特に東映では)と思われるため、あそこまでレイアウトを決め込める監督って珍しかったのではないでしょうか(憶測)? しかも2000年に刊行された「アニメスタイル」や後の「PLUS MADHOUSE 04 りんたろう」(ともに編集・スタジオ雄)に掲載されたりんさんのコンテを見てください。あんな緻密なコンテを描かれる方も当時いなかったと思います(憶測)。実は今回、俺が『がんばれ元気』のBOXを買ったのも「アニメスタイル」のりんたろう特集に掲載されたコンテを見て

これの本編を観てみたい!

と思ったからです。それで今回初めて観た本編の出来の素晴らしさと言ったら、想像以上でした! 印象的だったのはFix(カメラが動かない)のカットを非常に大切にされてるとこです。つまりカットの始めから終わりまでキャラの芝居・動きがちゃんと演出の方でプランニングされてるんです。他の方の演出話数は「あ、これアニメーターの描いた原画を素通りさせたな〜」とか「もっとちゃんとチェックしようよ〜」ってシーンが多々ありますが(ってゆーかほとんどノーチェック)、りんさんの話数はちゃんと演出チェックされてます(断言! だって観りゃあ分かるもん)。Fixを大切にしてるかと思えば、第1巻のシャーク堀口(元気の父)対ヤクザの件に代表されるりんさん特有の短い止めカットの畳み掛けは圧巻。フィルム全体の緩急が気持ちいい! まさに希代の演出テクニシャンって感じ。そのりんさん独自のクールさが逆に原作の持ち味——やや湿気のある人情ドラマといい意味で化学反応してると思います。物語的には原作にないアレンジが第1話からふんだんにちりばめられてて、ビックリしました。原作の冒頭だと、元気は託児所みたいなところに預けられてて「通り魔のごとくその辺の通行人にケンカを売る変なガキ」って感じでした。それに対してアニメでは父親と2人旅の話からスタートしています。この改変はよかったと思います。アニメでは原作よりもずっと早くに父親・シャーク堀口は死んでしまうため、最初の話数を「父と子の物語」に限定したかったんでしょう(憶測)。あと、何より驚いた改変は

1話で幼年・元気と少女時代の芦川先生が遭っていた!

ところです。これにはやられました! しかもその元気を見下ろす芦川先生が『999[劇場]』を終えた後の小松原作監の手でメチャクチャ可愛く描かれてます! メーテルを彷彿させる色気が乗っかって。おそらく1話での芦川先生の登場は脚本の雪村俊一さんによるものではないかと思います。
 このようにアニメ版『がんばれ元気』は当時望み得る最高のスタッフによって作られた名作アニメなはずですが、残念なのは打ち切りで(元気の師・三島の死まででムリヤリ)終わってる点です。是非原作のあの感動の最終回までアニメで観たかったですね、マジで。

あ、あと、りんさんの演出話数をもっともっと観たかったです!

 じゃ、またコンテにかかりますので今回はここまでで。

(11.01.20)