板垣伸のいきあたりバッタリ!

第169回
メイキング・オブ・
『迷い猫オーバーラン!』その5

 コンテの話をもう少し。シナリオの話でも書きましたが『迷い猫』のキャラはみんな優しくていいヤツ——だからこそ、

それぞれタイプの違う優しさをメリハリつけるよう気を遣いました

 自分が担当した第1話での各キャラクターの解釈はこう。

都築巧……とにかく誰にでも優しい男子。1話では原作のイメージに近づけるため、モノローグ的ナレーションを担当させたのですが、ともすると賢くなりすぎる(学業が芳しくないと原作2巻にあり)ので、そうならないよう常に要注意。でも基本明るい。

芹沢文乃……いわゆるツンデレで元気で実は優しい女子。第1話はこの娘が可愛ければそれでいいと言われたので、エピソード自体もシリーズ中盤のお楽しみいっぱいオリジナル話数と被らないように気を遣い(伊藤かな恵さんの「2回死ね!」がよかったです)。

梅ノ森千世……「私も仲間に入れて!」とどうしても言えないツンデレお嬢様。板垣はロリコンではないけど、この娘がいちばん描きやすかったし、好きでもあります(井口裕香さんの芝居が、全部素晴らしくて、アフレコ後暫く耳から離れなかったな)。

菊池家康……「ラノベの中のオタク男子にはなぜ戦国武将の名が?」と思いつつ、コイツも描きやすかったし、好き。実はかなり賢く優しい男子だと思ってたりします。1話の冒頭で文乃に殴られるトコや、ラストで蹴られるトコも文乃に日常の安心感(いわゆる“お約束”)を提供してやってる優しい男なんだ……と思って描いてましたから。それゆえ、やり返さないでしょ?

幸谷大吾郎……静かに天然、そして優しい男子。お茶を入れるのが上手いとかは、原作にあるやや古風なヤツ、から引っぱったつもり。

都築乙女……優しいお姉さん。1話では帰ってくるのみ。でも、物語途中でも何回か回想を挟むなどしつつ、巧たちにとって大切なあたたかい存在だと位置づけたつもり。

霧谷希……1話では拾ってこられるのみ(正直困りました)。万能天才少女なのでスーパーアクションを……と言ってもやり過ぎないよう、寸止め。

*      *      *

シマシマのブタ猫(オス)……1話のみしか使われないんだろうなあ。デザインしたのは板垣です。ストレイキャッツの主(ぬし)的気分で作ってみました。文乃が幼年期に拾ってきて、乙女にケーキ食わされてデブったのかも(え、猫ってケーキ食わない?)。自分が猫である事の幸せを満喫してるようなイメージがあります。実は各キャラクターの出入りを見守ってる感じもあったり、希もストレイキャッツまで導いたり、巧と大吾郎を困ってる男の子のもとへ連れてったりと結構カゲで活躍してたりも。

男の子……名前はなし。デザインは作監の石川(雅一)様。「文乃がツンデレでありつつも本当は優しい性格でかつそれを可愛く映す事のできるエピソード」が1話の絶対条件だったので、この子を出しました。登場人物を増やすのは危険と知りつつ、エピソードとして必要と判断。追いつめられた男の子が嘘をついてしまい、謝れないがために引き下がれなくなってしまう(男の子ってありますよね?)。その子の手を引き必死で信じて(大猫を)探しまわる文乃は優しく可愛くそして健気に描けると思い……。

 ま、ブタ猫と男の子に関しては1話のみなので並べようがないですが、メインキャラの性格づけや踏まえ方は各監督それぞれで若干違いがあるようで面白いです。自分は1話で終わりなので、2話以降はすべて本放送で観て楽しむ側になってて、毎週毎週監督による作風の違いに驚いてます。

各話監督ってこんなに違いが出るんですね!

 逆にシリーズを統括する監督の存在意義がこのシリーズを受けて問われる事になるのかもしれません。だって、少なくともこの『迷い猫』というシリーズは、いわゆる総監督が不在でも作品が作れる事を証明してしまうわけですから。あと、意外に一般の方々が理解しづらい、プロデューサー様たちの仕事内容も多少ハッキリしたかも。なにしろ、俺ら監督はプロデューサーさんからネタを渡されて考え始めるんですからね(『迷い猫』は温泉だロボットだゲームだ……の大まかなネタ出しの部分はプロデューサーさんが決めます)。

で、すみません! 今現在、風邪引いててつらいのでここで閉めさせてください

(10.05.27)