ふかかいクロネコのラクガキ帳[本郷みつる]

第10回
アニメーションの演出とは何をする仕事か?
TVの各話演出の場合

 ときどき聞かれます。
 「アニメーションの演出って何をする仕事ですか?」
 誰でも知っているようで、実は細かい部分は知られていないと常々思うので、書き記してみます。

 TVシリーズの演出の場合、シナリオをもらってあらかじめ一読して、シリーズの監督と「絵コンテ打ち合わせ」をします。その時に口頭で監督のやりたいイメージや自分がシナリオをもらって感じた疑問点などを確認しておきます。
 そして絵コンテをやります。通常30分アニメの場合は実際の本編は20分ちょっとで、カット数は300〜350カットほどになります。1ページ5コマある絵コンテ用紙を100ページ程度使う場合が多いと思います。これを早い人で3日、遅くても1ヶ月弱のスケジュールで仕上げます。ここで踏ん張らないと面白いアニメになる事はないのですが、考えすぎて袋小路に入り込むとあっという間にスケジュールがなくなり、大変な事になってしまいます。
 ちなみに僕が仕事を始めた頃は、各話演出とは、絵コンテ・演出を1人で兼ねる事がほとんどだったのですが、最近は絵コンテと演出をそれぞれ別の人間がやる事が多くなってきました。ベテランの絵コンテを早く切れる人が絵コンテ専従で、比較的若い者が演出処理を専門でやるのです。最近では「演出」の仕事をやっていても「絵コンテ」はやった事がない人もいたりして、自分もちょっと驚きました。

 さて上がった絵コンテは監督のチェックを受けて、演出の仕事が始まります。最初は作画との打ち合わせ、通称「作打ち」です。絵コンテにあるカット数分をアニメーター(原画マン)と打ち合わせます。具体的には、その時のキャラクターの服装や心情を説明して、どんなふうにアニメーターに描いてほしいかを説明するわけです。以前は30分の場合4人〜8人程度のアニメーターとの打ち合わせでしたが、最近は10人〜20人ぐらいが当たり前になっています。作品にかかる手間が以前より増えているのは間違いありませんね。
 それが全て終わると、作画監督と打ち合わせをして、作打ちは終了します。
 次は打ち合わせを元にアニメーターが描いてきたレイアウトをチェックします。演出がOKを出したものは、作画監督に回され、そこでOKが出たカットはアニメーターに戻され、原画作業に入ってもらい、上がった原画は再び演出がチェックし、OKの場合は作画監督が作監修正をして動画の作業に回されます。
 というのが通常の流れなのですが、最近主流になりつつあるのが「ラフ原」システムで、アニメーターはレイアウト時にすでに動きのラフも入れてタイムシートもつけておきます。これを演出や作監がチェックした後はラフ原を描いたアニメーターではなく、比較的キャリアの浅いアニメーター(2原と呼ばれる)に渡して原画をあげてもらうやり方です。
 続いて演出は出揃ったレイアウト(背景原図)を元に美術監督と「美術打ち」をします。例えば、どこからが夕方で、どのくらい色味なのかを相談します。この時に「色打ち」というキャラクターの色に関しての打ち合わせを一緒にする場合もあります。
 そして撮影打ち合わせ、アフターエフェクト打ち合わせなどを済ませ、映像ができ上がるのを待ちます。
 次はいよいよ「編集」で、放送のフォーマットに合わせて、絵コンテのカットの順番どおりに繋がったカットの編集「カッティング」をします。通常20分だったら、30秒ほどオーバーしていれば、ちょっとしたセリフや動きの調整をして気持ちよくカットの流れにします。
 この時点で一度「リテーク出し」をして一連の映像の中の間違いを見つけ、随時直していきます。演出リテーク、作画リテーク、仕上げリテーク、背景リテーク、撮影リテークなど、それぞれの職分からリテークが出ます。
 この時までに完全に絵ができ上がっていればベストなのですが、現実には絵が間に合わない場合がままあります。色が間に合っていなくて、動画だけの「動撮」、原画だけで中割のない「原撮」、ラフ原のままの「ラフ原撮」、さらにそこまでいかない最悪の「絵コンテ撮」などです。特に「絵コンテ撮」は、原画作業が間に合わないので、演出が全カットのタイムシートをつけなければならず、大変な仕事なのですが、だからといって余分なお金がもらえたりもしないので、踏んだり蹴ったりの気分になる事請け合いです。フリーとしては、そういった仕事には近づかないように気を配るしか方法はありません。
 そして「AR」で録音スタジオに声優が集められ、キャラクターに声を吹き込みます。各話演出も立会い、特に絵が間に合っていない場合、録音監督から鋭い質問が出た場合に明快に答えなければなりません。
 続いて「DB」、効果音や音楽を加え、放送されるものと同じものにします。できればこの時までにオールカラーでリテークも差し変わっていればよいのですが、そうでない場合は随時撮影から上がってくるカットのチェックをして、絵が完全になるまで立会うわけです。
 そして「V編」と言われるビデオ編集をして、OP、EDや予告のついた状態にするのに立ち会って各話演出の仕事は終了します(この工程は絵が完璧だったら立ち会う必要はありません)。
 会社によって多少の差はあると思いますが、今現在のTVアニメーションの演出がやっている仕事は以上の作業です。

 アニメーション演出はこの一連の作業を3〜4ヶ月かけてやる事になります。当然この1本をやっている間に次の仕事が入ってきます。最低でも3本の作品を平行してやっていかないと生活としては厳しいのです。
 いつでもドキドキ感が味わえるのがこの仕事ですが、でき上がったアニメをボンヤリ見てあれこれ言っている方が楽しいかもしれませんね(と言って、若くて才能のある人の参入を防ごうとしている! と思うかどうかであなたが演出志望かどうかが分かります(笑))。
 TVや映画のアニメーション監督としての仕事はまた別の作業があるので、その事についてはまた別の機会に。

第11回へつづく

(10.12.07)