ふかかいクロネコのラクガキ帳[本郷みつる]

第3回 遅れる理由

 アニメを作っているとなぜか全体の作業が当初の予定より遅れていきます。その理由はと言えば、脚本があがらない、絵コンテがあがらない原画があがらない、作画監督があがらない、以上。だったりして、動画があがらない、仕上げがあがらない、美術があがらない。撮影があがらない、という理由で遅れたとの話はあまり聞いたことがありません。

 つまり、脚本、絵コンテ、演出、原画、作画監督の作業スケジュールさえきちんと管理できれば遅れはそれほど出ないはずで……。それは皆分かっているのになぜ遅れるかというと、脚本の場合はシナリオ会議で何度も直しが出て、最初の第1稿から、2稿、3稿、と稿を重ねるごとに約1週間が過ぎて4稿以上になると1ヶ月が経過して危険な状態でしょう。絵コンテはTVの場合、2〜4週間でアップするのが普通ですが、何か問題が派生するとそこから1週以上簡単に延びてしまう事も、ままあります。
 以上の工程は基本、1人の作業なので比較的管理しやすいのですが、この後に控える原画、作画監督の部分がアニメのスケジュールのコントロールでもっとも難しいところで、原画は現在、通常でも最低4人程度。多い場合は10人〜30人以上なんて事も普通になってきています。本来アニメーターは絵が上手い人がなる職業なのですが、悲しい事に全員がその案件を満たしてる場合はそう多くはないのが実情で、その後、演出が原画をチェックする時、問題がない原画なら右から左へ、1カット1分もかからないのですが、何か問題がある場合はそのカットは長く演出の手元に留まってしまいます。特に残念な原画はチェックする演出と原画マンの間で「リテーク」という悲しいやりとりがあった後、最終的には結局「作監さま、よろしく〜」と作画監督に申し送りされます。原画が全員上手かったら、作画監督ほど楽な仕事はないのですが、現実には絵的な責任を全て負って、限られた期間で必ずアップさせなければならず、当初はあったはずのスケジュールがほとんどなくなり、放送ぎりぎりになんとか完成するわけなのです(ここがアメージングだったりして……)。

 作る側から見ると『鉄腕アトム』以降から現在までの絵的なクオリティの進化はすさまじいのに比して、毎週放送と言う基本ルールは一切変わらないのですから、全体作業が非常に大変になっているのは当然の事なのです。

 つくづく思うのは、絵が上手くて、速くて、性格のよいアニメーターの絶対数は少ない! と性格の悪い演出の僕は思うのです(自分が以前、下手で、遅くて、性格の悪い動画マンだったのはナイショです)。そしてよい作品のためには、プロデューサー、制作デスク、制作の頑張りも非常に重要なのは言うまでもないのです。

第4回へつづく

(10.08.31)