アニメーション思い出がたり[五味洋子]

その34 全国総会

 1971年10月16〜17日、静岡でアニメーション全国総会が開かれることになりました。
 全国総会とは、全国各地のサークルの会員有志が年に1度、主に秋に、一同に会して行う合宿で、最初は、大阪のKAC(関西アニメーションサークル)、名古屋のTAC(東海アニメーションサークル)、静岡のしあにむ、東京アニメーション同好会(アニ同)の4つのサークル間で開かれていました。
 内容は、それぞれのサークルの1年間の活動報告や情報交換、自主作品を含むアニメーション作品の上映が主です。総会の始まりは1970年ですが、当時は特定のファンクラブではないアニメーションサークル自体がこの4つぐらいしかなかったので、数少ない同好の士が年に1回顔を合わせ、寝食を共にして語り合いつつ、日頃見る機会の少ないフィルムを持ち寄って皆で見ようという主旨で始まったものと思われます。
 上映は大体夕食後の大広間で、いつ果てるともなく延々とフィルムを流し続けるのが恒例になっています。会場は大抵タタミ敷きなので、寝そべるなり壁に寄りかかるなり思い思いの体勢で臨みますが、次第に耐久レースの様相を呈して死屍累々(?)、夜が更けるにつれ、アニメーションの本題とは関係なく面白ければ何でもありの闇鍋状態になって行きます。私は大抵途中で退却していたのでよくは知りませんが、そのまま朝を迎えることもあったようです。
 初期の総会は前記の4サークルに神戸のHAG(阪神アニメーショングループ)が加わった中で持ち回りで主催していたのですが、回を重ねるに連れ、参加サークルも、各地の主催サークルも変わりながらも、40年近く経った現在もなお継続して開催されており、親子2代や会員2世の参加もあると聞きます。

 さて、第1回の総会の開催は1970年、場所は名古屋だったそうです。『FILM1/24』27&28合併号(1979年6月発行)の杉本五郎さんの連載「フィルムはなぜ? 第16回 アニドウ草創の頃」によると、東京からの参加は6〜7名、杉本さん本人も参加はされてないとのこと。私も入会前なので当然参加はしていません。
 第2回の静岡大会では、上記の記載によるとアニ同からの参加は43名。会長の相磯さん、副会長の日下部さん、会計の鈴木さん、それに企画係として湯川さん、並木さん、私(富沢)の3人の名が上がっています。なお、この杉本さんの連載は後に単行本『映画をあつめて』(平凡社刊)としてまとまっていますが、この「アニドウ草創の頃」はアニドウの会員向けの内容とのことで収録されていません。
 改めて43名と読むと人数の多さに驚いてしまいます。もしや『1/24』名物(苦笑)の誤植かと思うほどです。参加者はいつもコボタンで会っているメンバーに加え、当日初めて顔を合わせた人も多かったろうと思います。東京からは自家用車の相乗り組と、新幹線組に分かれて出発しました。静岡からは伴野孝司、望月信夫の両氏、名古屋は円法憲生さん、大阪は中目健一、真理子ご夫妻等の方々を代表とする各地のメンバーが集結。TAC出身で現在は鉄道写真家として活躍する南正時さん、アニ同の顧問であり、全国サークルの頼みの綱であるフィルム・コレクターの杉本五郎さん、『アニメーション入門』でお馴染み、愛知県在住の森卓也さん等、錚々たるメンバーも参加されています。前記の連載記事によると、亀井武彦、中島興、古川タク、福島治次さん等、作家の方々も招かれていたそうです。

 全国総会のことはなぜか、ひとつながりの記憶のようになっていて、資料にでも頼らないと個々の会のことが思い出しにくいのですが、そんな中で印象に残っているのが、初めて参加したこの第2回総会と、神戸の摩耶観光ホテルを会場に開かれた第8回総会です。神戸の総会では見下ろす夜景の美しさと、全国総会の歴史に珍しくスキヤキの大盤振る舞いの夕食で記憶に残っています。やはり人間、食べ物の記憶は強いですね。
 第2回の総会では特別プログラムとして、チェコのイジー・トルンカの長編人形アニメ『バヤヤ』が初上映されたことが最も印象的な出来事でした。私たちの世代はここで初めてトルンカと『バヤヤ』に出会ったのです。これらについて書くと止まらなくなるので、それはまた回を改めてということにしましょう。

 総会で出会ったサークルメンバーの多くの方々とは40年近い時を経た今も親交が続いています。総会は一種の同窓会のような役割も果たしているとも言えるでしょう。

その35へ続く

(08.07.11)