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COLUMN
アニメ様の七転八倒[小黒祐一郎]

第27回 魅惑の鈴木清司音源

 70年代後半の東京ムービーの作品、あるいは同時期の日本テレビのドラマなどに、いつも同じ音が使われているのが気になっている人はいないですか。アニメでいえば『元祖天才バカボン』『新ルパン』『あしたのジョー2』『ベルサイユのばら』など。もちろん『マモー編』や『カリ城』も鈴木さんの選曲です。BGMと呼ぶには短いけれど、ブリッジにしては長すぎるくらいのものが多いはず。「チャカチャン」とか「ジャジャン」といったブリッジも、いつもお馴染みのものが使われていた。
 あれは選曲家(あるいは音楽監督)の鈴木清司さんの仕事なんですよ。鈴木さんは、自分のライブラリーにある音源を色んな作品で使っていた。今、チャンネルNECOで「気まぐれ天使」というTVドラマを放映しています。主演は石立鉄男。1976年から1977年に放映されたものだから、『元祖天才バカボン』と時期的の番組ですね。これが愉しいんですよ。いや、ドラマ自体も面白いんですが、『元祖天才バカボン』や『新ルパン』でお馴染みの曲がジャンジャンかかるんです。しかも、時々、音楽の超絶編集があって、これも凄い。
 鈴木さんは「気まぐれ天使」だけでなく、その前の「パパと呼ばないで」や「雑居時代」など、同じ日本テレビの石立鉄男主演のドラマでも選曲を担当。それらの作品での仕事ぶりが認められ、映画「人間の証明」以降の「音楽監督」という役職の仕事につながっていったんだそうです(厳密には「人間の証明」では音楽監督補佐)。

 鈴木さんの選曲は、まず、メリハリのつけ方が素晴らしい。曲の選びも気が利いていて、洒落っ気がある。それから、完全アナログ時代なのに、信じられないくらい細かく音をつけてるんですよ。アニメだと細かくつけているのが『元祖天才バカボン』で、選曲で遊んだり洒落っ気のある仕事をしているのが『新ルパン』ですかね。『あしたのジョー2』も映像と音がマッチしていて相当によいです。
 自分のライブラリー音源だけでなく、他の作品や既成のアルバムからの流用曲も多いんですね。そのあたりも、鈴木さんの選曲の面白いところ。有名なところでは、TV『あしたのジョー2』のカーロスのテーマが、イメージアルバム「金田一耕助の冒険」からの流用だったり。確か『ルパン三世 PARTIII』では『ベルサイユのばら』の曲をギャグで使った事があって、あれは可笑しかった。
 最近の鈴木さんは仕事ぶりが変化していて、ライブラリーの曲は使っていないようです。昔のように細かくつけないのも、ちょっと残念。

 『ルパン三世』関連のCDがあんなに沢山出ても、鈴木さん自身のライブラリーの曲は収録されないんですよね。『ルパン三世』用に作られた曲ではないわけですから。Amazon.co.jpで「気まぐれ天使」のサントラが出ているのを見つけて、ひょっとして『新ルパン』に流用されている曲があるかも、と思って買ってみましたが、収録されていなかった。ずっと鈴木清司音源集がCD化されないかと思っているんですよ。『サザエさん』BGM集と同じくらい欲しい。
 話は変わりますが「気まぐれ天使」のオープニングは、芝山努さんのアニメーションです。ほとんど動いていませんが、芝山さんらしいレイアウトセンスが楽しめます。歌もいいんですよ。僕が子供の頃に「気まぐれ天使」を楽しみにしていたのは、そのオープニングのためでもあります。

 

■第28回へ続く

(06.03.17)

 
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