アニメ様365日[小黒祐一郎]

第426回 『BUBBLE GUM CRISIS』シリーズ

 『BUBBLE GUM CRISIS』は全8巻のOVAシリーズだ。1987年2月に1巻がリリースされ、1991年1月の8巻で完結。人気タイトルであり、その後、続編『BUBBLEGUM CRASH!』、リメイク作『バブルガムクライシス TOKYO2040』、同じ世界を舞台にした『ANOTHER STORY OF BUBBLEGUM CRISIS AD.POLICE』等、多くの関連作品が作られている。企画・原作はアートミックの鈴木敏充、キャラクターデザインは、同じくアートミックの園田健一。メカデザインにもアートミックのメンバーが名前を連ねている。1巻から4巻の監督は秋山勝仁。制作はアートミックとAICだ。
 内容としては、近未来を舞台にしたSFアクションである。主人公達は、闇の仕置人ナイトセイバーズ。そのメンバーはシリア(声/榊原良子)、プリス(大森絹子)、リンナ(富沢美智恵)、ネネ(平松晶子)の4人だ。彼女達は、戦闘時にはハードスーツと呼ばれる強化服を着用。そのハードスーツのシルエットは女性的なものだった。そして、舞台が未来都市だからという事だけでなく、作劇や雰囲気に関して、都会的なところがあった。初期の作品においては、挿入歌を効果的に使い、アクションシーンをミュージッククリップ風に構成。お洒落な作りだった。メカアクションの作画は、シリーズ通じて力が入っている。

 自分にとっては、安心して楽しめるシリーズだった。熱心に追いかけていたわけではなかったけれど、仕事帰りにレンタルショップで借りて、寝る前に気楽に観るビデオとしては最適だった。もうひとつ個人的な話をすると、『BUBBLE GUM CRISIS』はアニメビジョンで何度か取り上げている。そこは僕が担当したコーナーではなかったけれど、実写のミュージッククリップを再編集するのを、何時間もオペレーターの隣で見ていた。何度も何度も同じ曲を聴いた。いまだに大森絹子の「今夜はハリケーン」が耳から離れない。

 さらにもうひとつ自分の話をすると、『BUBBLE GUM CRISIS』シリーズは、スタッフや声優の作品リストを作るときに、ちょっと手間どる作品だ。たとえば第1巻で、画面で表示されるタイトルは『MEGA TOKYO 2032 THE STORY OF KNIGHT SABERS BUBBLE GUM CRISIS』。やたらと長い。しかも、第6巻だけ『MEGA TOKYO 2032(2033) THE STORY OF KNIGHT SABERS』の冠がつかない。
 アニメスタイルのタイトル表記は、リスト制作委員会のやり方に準じているので、作品リストなどを作る際には、このタイトルで表記する事になる。ある仕事で、本作に出演している女性声優に取材をして、彼女の作品リストを作った。リストをチェックしてもらったところ、「わたし、メガ東京なんとかなんて作品には出ていません」と言われてしまった。ああ、すいません、それは『バブルガムクライシス』の事なんです、と説明しなくてはいけなかった。

 せっかくなので、各巻のタイトルとメインスタッフを以下に掲載する。

(1)『MEGA TOKYO 2032 THE STORY OF KNIGHT SABERS BUBBLE GUM CRISIS』
1987年2月25日リリース
監督/秋山勝仁 脚本/松崎健一、柿沼秀樹、荒牧伸志、秋山勝仁 演出/八谷賢一 作画監督/田中正弘、仲盛文
(2)『MEGA TOKYO 2032 THE STORY OF KNIGHT SABERS BUBBLE GUM CRISIS BORN TO KILL』
1987年9月5日リリース
監督/秋山勝仁 脚本/秋山勝仁 演出/八谷賢一 作画監督/田中正弘、仲盛文
(3)『MEGA TOKYO 2032 THE STORY OF KNIGHT SABERS BUBBLE GUM CRISIS BLOW UP』
1987年9月5日リリース
監督/秋山勝仁 脚本/秋山勝仁 演出/八谷賢一 作画監督/田中正弘、仲盛文
(4)『MEGA TOKYO 2033 BUBBLEGUM CRISIS REVENGE ROAD』
1988年7月24日リリース
監督/林宏樹 脚本/有井絵夢 演出/林宏樹 作画監督/田中正弘、奥田淳
(5)『MEGA TOKYO 2033 BUBBLEGUM CRISIS MOONLIGHT RAMBLER』
1988年12月5日リリース
監督/林宏樹 脚本/有井絵夢 演出/林宏樹 作画監督/田中正弘、奥田淳
(6)『RED EYE'S BUBBLEGUM CRISIS 6』
1989年8月30日リリース
監督/大張正己 脚本/鈴木敏充 ストーリーボード/大張正己 作画監督/合田浩章、松原秀典、大張正己
(7)『MEGA TOKYO 2033 BUBBLEGUM CRISIS DOUBLE VISION』
1990年3月14日リリース
監督/高山文彦(注) 脚本/鈴木敏充 演出/青木武 ストーリーボード/高山文彦 総作画監督/うるし原智志 作画監督/よしもときんじ、梶島正樹
(注)OPのみにDirected by FUMIHIKO TAKAYAMAとクレジット、EDには表記なし
(8)『MEGA TOKYO 2033 BUBBLEGUM CRISIS SCOOP CHASE LISA』
1991年1月30日リリース
監督/合田浩章 ストーリー原案/合田浩章、松原秀典 脚本/吉田英俊 ストーリーボード/合田浩章 作画監督/松原秀典、岸田隆宏

 リストを観てもらえば分かるように、シリーズ中盤から監督、演出、作画監督が入れ替わっている。6、7、8巻のあたりは見事なくらいに、各巻の画風が違う。そして、それぞれが見応えのある仕上がりになっている。特に際立っているのが8巻だ。合田浩章と松原秀典がストーリー原案から担当しており、合田浩章の監督デビュー作でもある。
 8巻はナイトセイバーズで最年少のネネと、ゲストキャラのリサ(久川綾)の2人をメインにしたエピソードだ。リサはカメラマン志望で、ちょっと調子のいい女の子だ。8巻は彼女達をやたらと可愛らしく描いており、華やかであり、ポップ。洗練された作画も素晴らしい。『BUBBLE GUM CRISIS』シリーズらしいかどうかは別にして、今観ても惚れ惚れするほどよくできている。
 合田浩章は、この後でOVA『ああっ女神さまっ』シリーズで監督を務める事になるのだが、それにも『BUBBLE GUM CRISIS』8巻は関わっている。原作者の藤島康介のところに持ち込まれた『ああっ女神さまっ』アニメ化の企画書に、合田浩章と松原秀典の名前があった。藤島康介は『BUBBLE GUM CRISIS』8巻が気に入っており、それで『ああっ女神さまっ』のアニメ化にOKを出したのだそうだ。さすがは藤島先生、お目が高い。

第427回へつづく

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(10.08.10)