アニメ様365日[小黒祐一郎]

第418回 『トワイライトQ』もう少しだけ

 『トワイライトQ』シリーズは、第2巻「迷宮物件 FILE538」で終わってしまった。非常に短命なタイトルだったわけだ。ただ、第3巻以降が出なかったのは、僕としては、意外ではなかった。第1巻「時の結び目」を観た時から、長続きしないような気はしていた。「トワイライトゾーン」+「ウルトラQ」の企画であったのに、怪獣モノを1本もやらずに終わってしまったのが残念だった。
 この作品のDVDの解説書には、押井守監督と鵜之澤伸プロデューサーの対談が掲載されており、それによれば、全2巻で終わってしまったのは、必ずしもパッケージの売り上げが不調だったためではないそうだ。売り上げもよくはなかったが、むしろ、メーカー社内で企画に対して賛同が得られなかったのが、理由として大きいのだそうだ。いまひとつピンと来ない話ではあるが、皆に賛成してもらえる企画ではなかったという事だろう。
 前回前々回でも触れたように、第1巻も、第2巻も、作品の出来としては決して悪くはない。ではあるが、両方とも地味な話だった。アニメファンにとってキャッチーな内容であったかというと首を傾げる。資料を引っぱり出して、値段をチェックしてみたところ、『トワイライトQ』の定価は第1巻も第2巻も、ビデオが8450円、LDが8320円。当時としても、安価なソフトではない。

 ちょっと違う話になるが、1980年代後半に、海外のオムニバスのドラマシリーズが盛り上がるという状況があった。そうなった原因のひとつが、「トワイライトゾーン/超次元の体験」の存在だった。これは1950〜1960年代に制作された「トワイライトゾーン」を元にした劇場作品で、アメリカでは1983年に公開されている。1980年代中盤以降には「新トワイライトゾーン」「新ヒッチコック劇場」「世にも不思議なアメージング・ストーリー」等の新作オムニバスドラマシリーズが制作された。それらは日本でもTV放映され、ビデオソフト化もされている。旧作のオムニバスドラマシリーズがビデオソフト化される事もあったし、深夜枠やUHF局で放映される機会も増えたと記憶している(自分の事で言えば、その頃、「ヒッチコック劇場」のオリジナルシリーズや「悪魔の異形」といった番組を録画した)。派手なブームではなかったけれど、そういったオムニバスのドラマシリーズの盛り上がりがあり、『トワイライトQ』はその流れの中にある企画だった。

 オムニバスのドラマシリーズの魅力は、個々のエピソードの面白さとは別に、毎週、まるで違ったドラマが楽しめるところにあった。その楽しさは、OVAである『トワイライトQ』にはなかった。何しろ、1巻の発売から2巻の発売まで、4ヶ月もかかっている。「毎週いろんな話」からはずいぶんと遠かった。
 1本のビデオソフトとして考えると、1巻に30分のエピソードを1話だけ収録しているスタイルであったのに物足りなさを感じた。確か「新トワイライトゾーン」のビデオソフトは、1巻に4話ほどのエピソードが収録されていたはずだ。4話もあれば1話くらいは面白い話があったし、面白い話がなかったとしても4話も観ればボリューム的に満足できた。

 なんだか、ネチネチと恨み言を書いているみたいな原稿になってしまった。いかんいかん。だけど、もう少し続ける。とにかくパッケージとして考えると、各巻30分の作品を1話だけ収録するフォーマットは物足りなかった。1巻が2話構成で、そのうちの1本がアクションものであったりしたら——第1巻が「時の結び目」といのまたむつみキャラのアクションものの2本立てだったとしたら、ずいぶんと満足度が上がったはずだ。また、各巻1話のフォーマットであっても、毎月1巻ずつリリースされていたら印象が違っていただろう。

 自分の中では『トワイライトQ』は『ロボットカーニバル』と対になっている企画でもあった。『ロボットカーニバル』はアニメーター中心のオムニバス作品であり、どちらかと言えば、映像が売りだった。それに対して『トワイライトQ』は脚本家と演出家が中心となった企画であり、映像だけでなく、ストーリーも売りになるシリーズだ。
 『ロボットカーニバル』と同じく、クリエイター主義のタイトルである事に間違いはなく、その意味でも僕は期待していた。そして、今思えば、『トワイライトQ』が短命なシリーズで終わったのは、OVAの企画がクリエイター主義で成立しなくなってきた事を示している。

第419回へつづく

トワイライトQ [DVD]

カラー/59分/ドルビーデジタル(ステレオ)/片面1層/スタンダード(「時の結び目」)、16:9(スクイーズ)、ビスタサイズ(「迷宮物件」)
価格/6090円(税込)
発売・販売元/バンダイビジュアル
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(10.07.29)