アニメ様365日[小黒祐一郎]

第375回 『オレンジ☆ロード』まとめのようなもの

 随分長くなったけれど、TVシリーズ『きまぐれ オレンジ☆ロード』の話題は今回で終わりにする。この一連の原稿は、だいたい気持ちよく書けたのだけれど、昨日の原稿(第374回 続々・伝説の「追いかけて冬海岸」)は言葉が足りなかった。自分の印象を、正確に文章にはできたけれど、読む人に伝わりづらい原稿だった。
 ちょっと引いた立ち位置で解説し直す。TVシリーズ『オレンジ☆ロード』は、恭介、まどか、ひかるの三角関係を描いた作品だったが、その決着をつけずに終わってしまう。決着がついたとしても、恭介とまどかがカップルになり、ひかるが振られて終わったはずだ。恭介はひかるをずっと拒絶しないでいたし、まどかもひかるに本当の事を言わないできた。それが振られておしまいになるのは、甘いタッチのラブコメとしては、あんまりなのではないか。それは『オレンジ☆ロード』というタイトルが抱えている問題であり、この後で作られる劇場版『きまぐれ オレンジ☆ロード あの日にかえりたい』は、その問題をえぐる内容となった。
 そういった問題があったからこそ、まどか絡みではないけれど、43話「傷心のひかる! 追いかけて冬海岸」で、恭介が、ひかるに対する不実を後悔し、想いを彼女に伝える展開をやったのには意味があった。ひかるが少し救われたはずだ。少なくとも、入れ込んで『オレンジ☆ロード』を観ていた人間にとっては意味があったのではないかと思う。
 ここまでの原稿で触れていなかった事を記しておこう。TVシリーズ『オレンジ☆ロード』は、オープニング、エンディングも凝ったものだった。全48話で3種類のオープニング、エンディングが作られた。最初のオープニングは、カット数が245もあった。本編のカットも使用しているし、編集でひとつのカットを分割して数カットにしてもいる。細かく映像を刻んでおり、目まぐるしくカットが切り替わる。作画を平野俊弘(現・俊貴)、垣野内成美が担当しており、ディスコのカットなどは『メガゾーン23』を思わせるものだった。最初のバージョンがやたらとカット数が多かったのに対して、第3バージョンのオープニングは1カットしかなかった。走っていた猫のジンゴロが、まどかのセーターの模様になり、そのまどか達が乗っている遊園地のコーヒーカッブが回転しているうちに本当のコーヒーカップになり、それをひかるが手に取り、カメラを引くとAbcb全景になり、その前を自動車が通り過ぎ……としりとりアニメで、イメージを繋げていく。仕上がりしては、もうちょい動かしてくれと思わないでもないのだが、アイデアが面白かった。第1バージョンと第3バージョンの演出は望月智充が担当した。
 第2バージョンのオープニングは、森川滋が演出を担当。全編モノクロで、画にノイズが載っている。どうやらセルをコピーして使っているようだ。縮小コピーしたものをコマ撮りして、カメラワークとしているところもあるし、どう撮ったのか分からないが画がグニャッと歪むところもある。メインのモチーフは、バンドで演奏をしている恭介達であり、技法的にも、内容的にも「傷心のひかる! 追いかけて冬海岸」と重複している。ミュージッククリップ的な作りで、お洒落な仕上がりだった。
 エンディングで話題になったのは、飯面雅子が砂絵アニメで制作した第2バージョンだった。上映会などでしか観る機会がなかった砂絵アニメが、TVシリーズで使われた事がまず驚きだった。そして、寂しい女性の心中を描いた歌詞と、映像がマッチしていた。
 本編のビジュアルについても触れよう。高田明美のキャラクターデザインは、彼女の持ち味が出ていたが、それほど原作から離れてしまっているとも思わなかった。このあたりは、それぞれの受け手の感覚の問題でもあるのだろう。最高殊勲選手は、総作画監督を務めた後藤真砂子だ。『うる星やつら』『めぞん一刻』を例を挙げるまでもなく、この頃は、華がある女性キャラクターを売りにした作品は、話数単位で作画にバラツキがあるのが当たり前だった。しかし、『オレンジ☆ロード』はキャラクターの乱れがほとんどない。その安定した仕上がりは、当時としては驚くほどのものだった。
 洒落たオープニング、エンディング、崩れのないキャラクター、地に足が着いたリアルタッチの演出、際どいところに突っ込んでいく作劇。そして、全体として青春ものとしてまとめる。どこからどこまでが、作り手の狙いであるかは分からないが、TVシリーズ『オレンジ☆ロード』は、それまでのティーン向けのアニメよりも「1ランク上」の作品を目指していた印象だ。1ランク上という事は、センスよく作るという事でもあり、それと関連して、ややストイックな仕上がりになった。もっと浮かれた感じにした方が、若いファンは嬉しかっただろうとは思う。本放映当時、僕はすでに20代半ばだったので、そういった渋い作りが気に入っていた。

第376回へつづく

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(10.05.28)