アニメ様365日[小黒祐一郎]

第368回 『オレンジ☆ロード』の三角関係

 『きまぐれ オレンジ☆ロード』は恭介、まどか、ひかるの三角関係を主軸とした物語である。少なくとも、始まった時にはそうだと思っていた。ではあるが、恭介にとっての本命がまどかである事についてはゆらぎがないし、まどかも恭介の事が好きであるようだ。問題はひかるの存在だ。まどかはひかるを妹のように可愛がっており、自分と恭介が恋人になったら、彼女が悲しむのが分かっている。また、恭介は優柔不断がキャッチフレーズになるくらいの男なので、自分になついているひかるを拒絶できない。また、ひかるを嫌いだというわけでもない。本命ではないが、可愛いとは思っている。
 何かきっかけがあれば、あっという間に終了する三角関係だった。恭介は、『タッチ』の達也のように彼女を甲子園に連れて行く必要もなければ、『めぞん一刻』の五代のように彼女に釣り合うような男になるために大学を卒業し、就職する必要もない。ラブコメの主人公がスポーツなどでステップアップしなくてはいけないわけではないが、『オレンジ☆ロード』では、3人の関係がほぼ固定されたままであり、しかも、主人公のステップアップのような物語を支えるものがない。そのため途中からは、物語的に足踏みを続けているような状況が続く事になった。
 アニメのシリーズ後半は、三角関係よりもコメディに力点を移した印象だ。アニメオリジナルで、1話かけて特撮映画や任侠映画のパロディをやった事もあった。シリーズ後半の方がバラエティに富んでおり、それはそれで面白かったのだが、作品としての進む方向を半ば見失ってしまっているように感じていた。最終回において、恭介とまどかの関係に進展はあるのだが、三角関係の解消には至っておらず、主軸であったはずの三角関係については、未消化なまま終わってしまった。
 TVシリーズ『オレンジ☆ロード』は青春アニメとして充実した作品だった。作劇や演出、あるいは画作りについて成熟した作品でもあった。ではあるが、傑作になりえなかったのは、三角関係ものを貫き、完結させる事ができなかったからだろうと思っている。
 ただ、まどかと恭介の関係については、実は、シリーズ半ばでほぼ決着がついていた印象だ。少なくとも、まどか側のドラマは7割くらいは終わっていたのではないか。19話「二人の体験! 禁じられた恋の島」の事だ。それについては次回で。

第369回へつづく

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(10.05.19)