アニメ様365日[小黒祐一郎]

第304回 『タッチ2』と『タッチ3』

 劇場版『タッチ』3部作は、長編アニメーションといっても、尺は短めだった。第1作『タッチ 背番号のないエース』が93分、第2作『タッチ2 さよならの贈り物』が80分、第3作『タッチ3 君が通り過ぎたあとに —DON'T PASS ME BY—』が83分。これは前回も触れたように、実写映画との2本立て興行だったためだろう。
 キャラクターデザインと美術は、基本的にTVシリーズを踏襲したもので、キャストも同様のメンバーだ。演出スタイルも、基本的にはTVシリーズに近いものだった。BGオンリーやじわPANのカットもあったが、物語をテンポよく進めなくてはいけないためか、TVシリーズの特徴だった「たっぷりとした“間”」を使った演出は弱くなっていた。僕としては、それが少し物足りなかった。長大な原作をコンパクトにまとめるために、設定も整理されている。たとえば、新田の妹である由加は登場しないし、野球部マネージャーだった西尾佐知子に相当するキャラクターが、部長として登場している。
 物語構成としては、達也達の中学時代はカット。『背番号のないエース』では高等部に進級したところから始まり夏までを、『タッチ2』では高校1年の秋から高校2年の夏までを、『タッチ3』が高校3年の春から夏までを、甲子園大会予選を中心に描いている。それぞれの作品がパート分けされており、『背番号のないエース』は「四月」「五月」「六月」と、『タッチ2』は「秋 AUTUMN」「冬 WINTER」「春 SPRING」と、『タッチ3』は「EPISODE 1」「EPISODE 2」「EPISODE 3」とパート頭にテロップが出る。そういったスタイリッシュな感覚は、いかにも杉井監督らしい。
 『タッチ2』では、南が新体操を始め、新田や西村といったライバルが達也の前に現れる。他の2本よりも若々しさ、華やかさが感じられる映画だった。達也が新田に負けたところで終わるのだが、盛り上がるし、ラストシーンも気持ちがよかった。
 実は劇場版『タッチ』は、3本とも、達也と新田の対決で終わっている。『背番号のないエース』のラストでは素人の達也が新田を打ち取り、『タッチ2』のラストでは新田が達也を叩きのめす(これはオリジナルの展開だ。原作では、高校1年時は当然として、高校2年の甲子園大会予選でも、新田とは対戦していない)。そして、『タッチ3』でも原作どおりに、2人の対決を描いている。
 『タッチ2』において、達也の球をホームランにする瞬間に、新田が「上杉達也、これはお前への贈り物だ」と言っている。そこまで、達也は死んだ和也のコピーのような投球をしていた。新田は、そんな達也の球を打ち砕く事で、和也のコピーでは勝てない事を分からせた。それで「和也として甲子園に行かなくてはいけない」という想いから達也を解き放ったわけだ。タイトルの「さよならの贈り物」とは、その事を指しているのだろう。
 ただ、第261回「『タッチ』最終回とラス前」でも触れたように、「和也のコピーでいいのか」という達也の葛藤は、原作でもTVシリーズでも、終盤で描かれるテーマだった。『タッチ2』でそれをやりきってしまったために、続く『タッチ3』のドラマが薄味になってしまったようだ。『タッチ3』は柏葉監督を中心にした構成で、原作に忠実ではあるが、前2作よりも、ダイジェスト的な作りだった印象だ。当時はそこまでは考えなかったが、『タッチ3』における新田との対決が、『タッチ2』の内容を、ストーリー的にも、演出的にも受けたものになっていないのが残念だ。
 『タッチ2』はテーマ主体のちょっと難しいストーリー構成と、メジャーな映画にまとめようという狙いが同居しているところが面白い。今回観返して、初見時よりも楽しめた。劇場版『タッチ』3部作で、一番出来がいいのが『タッチ2』だろうと思う。

第305回へつづく

タッチ 背番号のないエース [DVD]

カラー/本編93分/16:9 LBビスタ
価格/4725円(税込)
発売・販売元/東宝
[Amazon]

タッチ2 さよならの贈り物 [DVD]

カラー/本編79分/16:9 LBビスタ
価格/4725円(税込)
発売・販売元/東宝
[Amazon]

タッチ3 君が通り過ぎたあとに [DVD]

カラー/本編83分/16:9 LBビスタ
価格/4725円(税込)
発売・販売元/東宝
[Amazon]

(10.02.10)